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好きの気持ちの行くところ⑤
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確かにそうだ。いばら先輩だって、今、つむぎにいい感情を抱いてくれていたとは言っても、それが継続する保証なんてない。
つむぎと別れて、離れて、フリーになったら。
ほかに好きになる女の子もいるかもしれないし、周りの女の子だってきっと、放っておかない。
思って、即座に頭に浮かんだ。
それは嫌だ。
今は自分のとなりにいてくれるひと。
それが、ほかのひとのとなりにいるようになるなんて。
そのときが来なければいい、なんて。
もう思っている場合ではないのかもしれない。
つむぎは下を向いてしまう。
もう、好きかもしれないとか、考え込んでいる場合でもない。きっと。
心を決めないといけないのだ。そして動かなければいけないのだ。
「そう、だね。ちゃんと、しないとだね」
つむぎの言ったこと。それは『義務』ではなく『決意』だと。李奈もわかってくれたらしい。
ひょいっとつむぎの顔をのぞきこんできた。にこっと笑う。
「大丈夫。つむぎならできるよ」
言われたことにはおどろいてしまったけれど。
「だって、つむぎは強いひとだもん」
これはいばら先輩が言ってくれたことと、まるで同じではないか。
そのことは、つむぎに自信をくれた。
評価してくれるひと、確かにいる。しかもそれは自分のことをよく知ってくれているひとたちなのだ。
そう評価してくれるように、動けているのだ。それならきっと、大丈夫。
正しい答えを、出せるだろう。
「……ありがとう」
つむぎは言った。それだけだったけれど、やはり伝わってくれたらしい。
もうだいぶ、家も近づいてきていた。李奈の家のほうが少し先にあるので、つむぎの家の近くで解散になるのだ。
オレンジ色はだいぶトーンを暗くしていて、藍色が混ざり出していた。ちょうどよく、夕ご飯の頃に帰りつけるだろう。
最後に、李奈が言ってきた。
「ね、学園祭一緒に回らない?」
まったく、元通りの親友としてのお誘い。嬉しくなってしまう。この空気が戻ってきたことに。
「いいね! なに見に行こうか」
つむぎは即座にうなずいた。それで、あそこに行きたいとか、見たいとかの話をする。
その中で、李奈が言った。ちょっと恥ずかしそうに。
「サッカー部は焼きそば屋さんやるんだよね。その……盆城くんが当番してるときに、行きたいかな」
つむぎは理解する。
李奈は空のことを諦めるつもりがないのだ。それはつむぎのことは関係ない。
李奈が、片想いをしている一人の女の子として、頑張るということだ。
そして実る可能性だって、ゼロじゃない。頑張っていけば、叶うかもしれないこと。
「うん。行こう!」
それなら自分は応援するに決まっている。
自分のことを強いひとだと李奈は言ってくれた。
けれど李奈こそ強いひとだとつむぎは思う。
落ち込んだって、そこから浮上してまた頑張れるひとだ。そして、そういうところが好きだから、親友でいる。
そのあとすぐに分かれ道に着いてしまって、また明日ねとなったのだけど、つむぎの胸の中はほかほかあたたかかった。
李奈の言葉や強さに触れて、思えるようになった。
自分も頑張ろう。
ちゃんと答えを出せるように。
そしてそれに従って、正しいほうへ動けるように。
つむぎと別れて、離れて、フリーになったら。
ほかに好きになる女の子もいるかもしれないし、周りの女の子だってきっと、放っておかない。
思って、即座に頭に浮かんだ。
それは嫌だ。
今は自分のとなりにいてくれるひと。
それが、ほかのひとのとなりにいるようになるなんて。
そのときが来なければいい、なんて。
もう思っている場合ではないのかもしれない。
つむぎは下を向いてしまう。
もう、好きかもしれないとか、考え込んでいる場合でもない。きっと。
心を決めないといけないのだ。そして動かなければいけないのだ。
「そう、だね。ちゃんと、しないとだね」
つむぎの言ったこと。それは『義務』ではなく『決意』だと。李奈もわかってくれたらしい。
ひょいっとつむぎの顔をのぞきこんできた。にこっと笑う。
「大丈夫。つむぎならできるよ」
言われたことにはおどろいてしまったけれど。
「だって、つむぎは強いひとだもん」
これはいばら先輩が言ってくれたことと、まるで同じではないか。
そのことは、つむぎに自信をくれた。
評価してくれるひと、確かにいる。しかもそれは自分のことをよく知ってくれているひとたちなのだ。
そう評価してくれるように、動けているのだ。それならきっと、大丈夫。
正しい答えを、出せるだろう。
「……ありがとう」
つむぎは言った。それだけだったけれど、やはり伝わってくれたらしい。
もうだいぶ、家も近づいてきていた。李奈の家のほうが少し先にあるので、つむぎの家の近くで解散になるのだ。
オレンジ色はだいぶトーンを暗くしていて、藍色が混ざり出していた。ちょうどよく、夕ご飯の頃に帰りつけるだろう。
最後に、李奈が言ってきた。
「ね、学園祭一緒に回らない?」
まったく、元通りの親友としてのお誘い。嬉しくなってしまう。この空気が戻ってきたことに。
「いいね! なに見に行こうか」
つむぎは即座にうなずいた。それで、あそこに行きたいとか、見たいとかの話をする。
その中で、李奈が言った。ちょっと恥ずかしそうに。
「サッカー部は焼きそば屋さんやるんだよね。その……盆城くんが当番してるときに、行きたいかな」
つむぎは理解する。
李奈は空のことを諦めるつもりがないのだ。それはつむぎのことは関係ない。
李奈が、片想いをしている一人の女の子として、頑張るということだ。
そして実る可能性だって、ゼロじゃない。頑張っていけば、叶うかもしれないこと。
「うん。行こう!」
それなら自分は応援するに決まっている。
自分のことを強いひとだと李奈は言ってくれた。
けれど李奈こそ強いひとだとつむぎは思う。
落ち込んだって、そこから浮上してまた頑張れるひとだ。そして、そういうところが好きだから、親友でいる。
そのあとすぐに分かれ道に着いてしまって、また明日ねとなったのだけど、つむぎの胸の中はほかほかあたたかかった。
李奈の言葉や強さに触れて、思えるようになった。
自分も頑張ろう。
ちゃんと答えを出せるように。
そしてそれに従って、正しいほうへ動けるように。
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