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手作りサンドウィッチ④

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 そう言われては。確かに自分で言ったのだし。
 うう、とつむぎはうめいた。こんなことは恥ずかしい。
 やっぱり『本物の恋人同士』のよう。なんて、思ってしまって。
 けれどそんなことはないのだし、これはただの偽装としての恋人という関係なのであるし。
 だから意識しないように、意識しないように、を自分に言い聞かせて、サンドウィッチをつまんでそっと差し出した。それをいばら先輩がぱくりと食べる。
 自分の指が、いばら先輩のくちびるに近付いたのが見えてしまって、別に触れたわけでもないのになぜか胸が高鳴ってしまった。
「ありがと」
 もぐもぐ口を動かしながらいばら先輩はもごもごと言った。食べる様子すら間近で見られてしまうのだ。まったく、つむぎにとっては心臓が落ちつかないことである。
 かんで、飲み込んでから「うまいな」とちゃんと言ってくれる。
「これはブルーベリージャム?」
「あ、はい! こないだ大きな瓶でもらったもので……手作りみたいなんですよ」
「へー。売ってるのより味が濃い気がしたからさ」
 そんなやりとりをしながら、その『食べさせる』という行為は続いて、つむぎはやはり落ちつけなかったのだけど。
 残りのサンドウィッチも、全部もらわれてなくなった。つむぎは妙にほっとしてしまう。
 嫌なはずがない。自分の作ったものをおいしいと食べてもらえるのだし、なんだかこんな行為は……甘えられている、ようで。
 そう考えてしまってまた顔がちょっと熱くなったのに、いばら先輩は全部食べ終わってしまって「ごちそうさま」と手をお手拭きで拭いている。
 こんなこと、気にしてるのは自分だけなのだろうか、とつむぎは思ってしまったのだけど。
「そういや、毎日弁当作ってもらってるから……なんか礼をしたほうがいいな」
 言われたことにきょとんとした。確かに毎日お弁当を作ってはいるけれど、それは自分で言いだしたことなのだし、そもそも材料費をもらっている。
 つむぎは「別にいいですよ」と言ったのに、いばら先輩は「タダってわけにはいかないから」と封筒に入ったお金をくれたのだ。確かにお弁当を作るのには材料を買わなければで、それがかかるのは確か。だから、ちょっとすまないと思いつつもそれは受け取っていた。
「いえ、材料費もいただいてしますし、そもそも私が自分から作るって……」
 その理由をそのまま言ったのだけど、それにはなぜかふくれられてしまった。
「あのなぁ、弁当にかかるのは材料費だけじゃないだろう。作ってくれんのに礼をするって言ってんの」
 そう言われれば思い当たった。確かに材料だけではお弁当にはならない。手をかけて料理をしなければできあがらないのだ。
 ちょっとあきれられたようにいうので、つむぎはなんだか恥ずかしくなってしまった。自分のしていることを、そんなふうに大切にとらえてくれていたのだと思うと。
「そう、ですか……? 本当に気にしなくていいんですけど……そういうことなら……」
 自分からはじめたことなのだから、甘えるようでちょっと悪いかなぁとは思ったけれど、でも断るのもそれはそれで悪い。つむぎはうなずいた。お弁当箱を元通りクロスに包みながら。
「おとなしく受け取っとけよ。……そうだなぁー……」
 つむぎが受け入れてたことでほっとしたような顔をされた。すぐに先輩は考える様子を見せた。
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