上 下
43 / 117

手作りサンドウィッチ③

しおりを挟む
 別に『かわいい』と言っていたからといってなんだというのか。いばら先輩の自由だろう。
 そりゃあ、今は名目だけでも自分の彼氏なのだからそう思ってしまっても仕方ないかもしれないけれど……。
 思って、つむぎはなんだか恥ずかしくなってしまった。
 こんな考えは、なんだか本当の恋人同士のように感じてしまって。
 そんな、ただ偽装のために付き合っているというのにおかしいだろう。
 でもいばら先輩はなにも気にした様子はなくつむぎの手元を指差した。自分のぶんをぺろっとたいらげてしまってから。
「つむぎ、まだ残ってんじゃん」
 あまり意識されていない様子なのをやはりちょっと不満のように感じてしまいつつも、つむぎは箱の中を見た。箱の中にはサンドウィッチが残りふたつ。
「ああ……ちょっと多かったかなぁって思って」
 それでつむぎの意識はサンドウィッチに戻ってきた。
 確かにちょっと多く作りすぎたかもしれなかったのだ。先輩がたくさん食べるからと思って、同じ量を入れてしまったのだ。
 そういえば、普段なら横にプチトマトやフルーツを入れていたのだった。今日はサンドウィッチでぎっしりさせてしまったから、それは多かっただろう。
 でも帰ってからおやつにでもしようと思っていた。もう秋でだいぶ涼しいのだから、帰ってすぐに食べれば大丈夫だろう。
 と、思っていたのだけど、いばら先輩が意外なことを言った。
「じゃ、俺がもらってやるよ」
 つむぎはきょとんとした。もらってやる、とはサンドウィッチのことに決まっている。
「あ、はい。じゃあ、どうぞ……」
 でもかまわない。残りものにしてしまうより、今、食べるほうがおいしいのだから、おいしいときに食べてくれるひとがいるならば。
 よってつむぎはサンドウィッチの箱を差し出したのだけど、そこでいばら先輩は笑った。また、ちょっとからかうときの顔で。
「つむぎのぶんだろ。つむぎが食わせてくれよ」

 ……食わせる?

 数秒、考えてしまった。自分が食べさせるとはどういうことか。
 けれどわからないはずがないので、すぐ頭に浮かんだ。かっと顔が熱くなる。なんという要求を。
 手から食べさせてくれ、という意味に決まっていた。
「え、あ、あの……」
 おろおろ言ったけれど、いばら先輩は許してくれない。そっと身を寄せてきた。それに違う意味でどきりとしてしまう。
「ほら、くれるんだろ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

クナリ
恋愛
同人誌でマンガを描いている三織は、二十歳の大学生。 ある日、一人の男子高校生と出会い、危ないところを助けられる。 後日、友人と一緒にある女装コンカフェに行ってみると、そこにはあの男子高校生、壮弥が女装して働いていた。 しかも彼は、三織のマンガのファンだという。 思わぬ出会いをした同人作家と読者だったが、三織を大切にしながら世話を焼いてくれる壮弥に、「女装していても男は男。安全のため、警戒を緩めてはいけません」と忠告されつつも、だんだんと三織は心を惹かれていく。 自己評価の低い三織は、壮弥の迷惑になるからと具体的な行動まではなかなか起こせずにいたが、やがて二人の関係はただの作家と読者のものとは変わっていった。

処理中です...