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手作りサンドウィッチ③
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別に『かわいい』と言っていたからといってなんだというのか。いばら先輩の自由だろう。
そりゃあ、今は名目だけでも自分の彼氏なのだからそう思ってしまっても仕方ないかもしれないけれど……。
思って、つむぎはなんだか恥ずかしくなってしまった。
こんな考えは、なんだか本当の恋人同士のように感じてしまって。
そんな、ただ偽装のために付き合っているというのにおかしいだろう。
でもいばら先輩はなにも気にした様子はなくつむぎの手元を指差した。自分のぶんをぺろっとたいらげてしまってから。
「つむぎ、まだ残ってんじゃん」
あまり意識されていない様子なのをやはりちょっと不満のように感じてしまいつつも、つむぎは箱の中を見た。箱の中にはサンドウィッチが残りふたつ。
「ああ……ちょっと多かったかなぁって思って」
それでつむぎの意識はサンドウィッチに戻ってきた。
確かにちょっと多く作りすぎたかもしれなかったのだ。先輩がたくさん食べるからと思って、同じ量を入れてしまったのだ。
そういえば、普段なら横にプチトマトやフルーツを入れていたのだった。今日はサンドウィッチでぎっしりさせてしまったから、それは多かっただろう。
でも帰ってからおやつにでもしようと思っていた。もう秋でだいぶ涼しいのだから、帰ってすぐに食べれば大丈夫だろう。
と、思っていたのだけど、いばら先輩が意外なことを言った。
「じゃ、俺がもらってやるよ」
つむぎはきょとんとした。もらってやる、とはサンドウィッチのことに決まっている。
「あ、はい。じゃあ、どうぞ……」
でもかまわない。残りものにしてしまうより、今、食べるほうがおいしいのだから、おいしいときに食べてくれるひとがいるならば。
よってつむぎはサンドウィッチの箱を差し出したのだけど、そこでいばら先輩は笑った。また、ちょっとからかうときの顔で。
「つむぎのぶんだろ。つむぎが食わせてくれよ」
……食わせる?
数秒、考えてしまった。自分が食べさせるとはどういうことか。
けれどわからないはずがないので、すぐ頭に浮かんだ。かっと顔が熱くなる。なんという要求を。
手から食べさせてくれ、という意味に決まっていた。
「え、あ、あの……」
おろおろ言ったけれど、いばら先輩は許してくれない。そっと身を寄せてきた。それに違う意味でどきりとしてしまう。
「ほら、くれるんだろ」
そりゃあ、今は名目だけでも自分の彼氏なのだからそう思ってしまっても仕方ないかもしれないけれど……。
思って、つむぎはなんだか恥ずかしくなってしまった。
こんな考えは、なんだか本当の恋人同士のように感じてしまって。
そんな、ただ偽装のために付き合っているというのにおかしいだろう。
でもいばら先輩はなにも気にした様子はなくつむぎの手元を指差した。自分のぶんをぺろっとたいらげてしまってから。
「つむぎ、まだ残ってんじゃん」
あまり意識されていない様子なのをやはりちょっと不満のように感じてしまいつつも、つむぎは箱の中を見た。箱の中にはサンドウィッチが残りふたつ。
「ああ……ちょっと多かったかなぁって思って」
それでつむぎの意識はサンドウィッチに戻ってきた。
確かにちょっと多く作りすぎたかもしれなかったのだ。先輩がたくさん食べるからと思って、同じ量を入れてしまったのだ。
そういえば、普段なら横にプチトマトやフルーツを入れていたのだった。今日はサンドウィッチでぎっしりさせてしまったから、それは多かっただろう。
でも帰ってからおやつにでもしようと思っていた。もう秋でだいぶ涼しいのだから、帰ってすぐに食べれば大丈夫だろう。
と、思っていたのだけど、いばら先輩が意外なことを言った。
「じゃ、俺がもらってやるよ」
つむぎはきょとんとした。もらってやる、とはサンドウィッチのことに決まっている。
「あ、はい。じゃあ、どうぞ……」
でもかまわない。残りものにしてしまうより、今、食べるほうがおいしいのだから、おいしいときに食べてくれるひとがいるならば。
よってつむぎはサンドウィッチの箱を差し出したのだけど、そこでいばら先輩は笑った。また、ちょっとからかうときの顔で。
「つむぎのぶんだろ。つむぎが食わせてくれよ」
……食わせる?
数秒、考えてしまった。自分が食べさせるとはどういうことか。
けれどわからないはずがないので、すぐ頭に浮かんだ。かっと顔が熱くなる。なんという要求を。
手から食べさせてくれ、という意味に決まっていた。
「え、あ、あの……」
おろおろ言ったけれど、いばら先輩は許してくれない。そっと身を寄せてきた。それに違う意味でどきりとしてしまう。
「ほら、くれるんだろ」
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