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手作りサンドウィッチ①

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「へぇー、飴屋さんねぇ。いいな、フルーツとかか?」
「はい! いちごとか……缶詰のフルーツとかもいいなって話し合いで……」
 屋上へ向かう間、そんな話をした。ちょうどホームルームで話し合いをしたというつむぎの話から、学園祭ではなにをするのかという話題になったのだ。
「いばら先輩のクラスはなにをするんですか?」
 つむぎは何気なく質問した。いばら先輩はそれになぜか、にやっと笑う。
「カフェだよ」
 しかし返答は普通だった。つむぎはちょっと疑問に思う。カフェでこんな表情をされるのがよくわからない。
「そうなんですか。どんなカフェ……」
「お、もう着くぞ。今日は涼しいから気持ちいいだろうな」
 けれどそこで屋上のドアまで着いてしまった。いばら先輩がドアに手をかける。がちゃりとドアが開いた。
 つむぎはなんだかはぐらかされたような気持ちを感じてしまったけれど、別におかしなことではない。途中で話題がとぎれることなんて。
 まぁ、また今度自分から話題に出してみればいいや、なんて思っておく。いばら先輩の言った通り、涼しい風が吹き抜ける屋上へ入っていった。
「おお、今日はサンドウィッチなんだな」
 屋上の一角に落ちついて、座った。ミニバッグからお弁当を取り出す。
 今日のお弁当箱はいつものものと違って、横長のもの。長方形の形のサンドウィッチをたっぷり詰めてきた。
 箱を見ただけでいばら先輩は「いつもと違う」という顔をしたのだけど、ふたを取って顔を明るくしてくれた。
「はい! たまには洋風もいいかなって」
 そんな顔をしてもらえば頑張って作った甲斐があるというもの。つむぎまで嬉しくなってしまう。
「そうだな、すげぇじゃん、見た目もきれいだ」
 いばら先輩はお手拭きで手を拭いてからひとつつまんだ。断面をじっと見つめる。食パン二枚に挟んでからふたつに切ったので、断面に具が綺麗に見える。
「ん、うまいな! これ、マスタード入ってるだろ」
 先輩が最初に食べたのは、玉子のサンドウィッチ。ゆで卵を潰してマヨネーズで和えて、きゅうりと一緒にパンに挟んだものだ。
 ひとくち食べただけで気付くとは、とつむぎも同じものをつまみながらちょっとおどろいた。
「あ、はい。うちのサンドウィッチはマヨネーズにマスタードを……大丈夫でした?」
 何気なくいつもの作り方で作ってしまったけど、と今さらながら心配になった。マスタードは苦手なひともいるから。この反応ではいばら先輩はそうではなさそうだけど、と思いつつ言ったけれど、いばら先輩はうなずいてくれる。
「ああ! 辛いの好きなんだよ」
 つむぎはほっとした。それならむしろ良かっただろう。
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