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恋人と幼なじみ④

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 つむぎだけでなく、李奈も空もそちらを振り返った。そこにはいばら先輩が立っていたけれど、なんだか雰囲気がいつもと違う、とつむぎは感じてしまった。
 別に、なにもおかしくない。格好も、しゃべり方も、なにも。
 なのになんとなく、違う?
 よくわからなくなったけれど、空に視線をやったいばら先輩が言った。
「そいつ、誰?」
 李奈のことはいばら先輩ももう知っている。なにしろ親友なのだ。つむぎを迎えに来てくれたときに紹介していた。「親友です」「どうも。よろしく」なんて普通過ぎる紹介。
 だからいばら先輩が『誰』と言ったのは、空のことに決まっていた。
「あ……、えっと、幼なじみなんです。空っていいます」
 つむぎはなにげなく、いつも呼んでいる呼び方で呼んだのだけど、そのとき。
 いばら先輩の目がすっと細くなった。まただ、とつむぎは思った。これも見たことのないもの。
「……どうも」
 そしてなにかおかしかったのは、空もであった。あいさつをしたのに、そっけない声と言葉。
 先輩相手だというのに。失礼というほどではないけれど……。
「……ふーん……どうも。じゃ、つむぎ、行くか」
 いばら先輩の反応。なんだかなにかを探っているようだった、とつむぎは感じてしまった。
 でもすぐいばら先輩がつむぎをうながした。つむぎはあわてて「はい!」と返事をする。
 それだけで空にもわかっただろう。
 つむぎの『昼休みの用事』が。
 別になにも言われなかったけれど。
 なにしろいばら先輩はつむぎの彼氏なのである。なにも言うことはないだろう。
「じゃあ、行ってくるね」
 李奈と空に軽く手を振って、先に歩きだしていたいばら先輩を追ったつむぎ。
 小走りになったので、つむぎが見ることはなかった。
 いばら先輩と、それに並んで歩きだしたつむぎの姿。
 二人を見る空の視線は、まるでにらみつけるようなものだったということは。
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