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恋人と幼なじみ③

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 昼休み前に空がA組に来ることはあまりない。ちょっとクラスが離れているのだから。意図的に訪ねてこなければ、出会うことは少ないのだ。空はいつも、クラスの男子とお弁当を食べているようだし。今日は気まぐれかなにかだろう。
 つむぎの横で、一緒にいた李奈がちょっと緊張するのが伝わってきた。片想い相手なのだから当然だろう。つむぎはちょっとほほえましく思った。
「あ、嬉しいけどごめんね、ちょっと、昼休みは……」
 そういえば、空に『昼休みは毎日いばら先輩と一緒に過ごしている』とは話していなかった。
 付き合ったことは話したけれど。だって、二年生全体のうわさになってしまったのだ。空に届かないはずがない。
 ある日一緒に帰ったときに話したのだけど、そのとき空はしばらくだまった。
 そして、「ふぅん」と言った。その声はつむぎが聞いたこともないようなものだった。なんというか……ほの暗いような。そんな響きをしているような……。
 でもそれだけだった。そこからつむぎにはなにも聞いてこなかったのだ。だから昼休みにいばら先輩と一緒に過ごしているという話もしなかったのだし。
「そう。なんか用なの?」
 空は明らかにがっかりした様子を見せた。ので、つむぎも「いばら先輩と会うの」と言うのはためらわれた。なんだか、今言うのはふさわしくないような気がして。
「うん、ごめんね。あ、せっかくだから、久しぶりに李奈とお昼食べたら? 小学校のときは一緒に給食食べた仲なんだし」
「ちょっ、つむぎ!?」
 つむぎの提案には、李奈のほうがおどろいたようだ。声がひっくり返る。
(ちょっと! い、いきなり言われても)
 次にはひそひそ言われた。頬がほんのり染まっている。
 嬉しく思わないはずがないと思うけれど、心の準備なんてものはなかったに決まっている。
(いいじゃん、せっかくのチャンスなんだよ)
 つむぎはそう返したし、運よく空の気持ちも向いてくれたらしい。
「そうだな、小学校の頃が懐かしくなるし……じゃ、鳥井、一緒に……」
 空が言ったことに、李奈の顔がぱっと輝く。なにか言おうとしたのだろうけど。
 そこに違う声がした。
「遅くなったな、つむぎ」
 もうすっかり耳になじんだ声だった。その声はもちろん、いばら先輩。
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