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屋上デートとお弁当⑤
しおりを挟むかわいい……?
見た目がではないだろう。
反応がとか、言い返す言葉がとか、そういうことのはず。
でもそれにしたって。
かぁーっと顔が熱くなってくる。
男子にかわいいと言われることなど、めったにあるものではない。
おまけにそれはただの男子でも知り合いでもなく、……そうだ。
いばら先輩は『彼氏』なのであった。
意識してしまって、余計に恥ずかしくなった。
「ほら、そういう赤くなるところとかも」
「……っもう!」
さらに言われて、つむぎの感じていた恥ずかしさは限界になった。再び顔をそむけてしまう。
今度はのぞきこまれなかった。ただ、くすくす笑う声がする。
「本気なんだがなぁ」
それはそれでたちが悪いような、なんて思ってしまったつむぎだった。
そんなやりとりはともかく、やっと話はお弁当に戻ってきてくれた。
「とりあえず、明日、ためしに作ってみますよ。どんなのが好きですか? 和風とか洋風とか」
きげんを直すことにしたつむぎはそう言った。先輩ももうそれ以上からかってくることはなく、そうだなぁ、と言った。
「じゃあ和風かな」
和風のお弁当。おにぎりや煮物、今日のつむぎのお弁当のように唐揚げなんかもいいかもしれない。
すぐにつむぎの頭の中には、お弁当になりそうなメニューが浮かんできた。
なんだか楽しくなってきた。普段、自分でお弁当を作って持っていかなくてはいけなくなったときは「めんどうだなぁ」と思う気持ちが強かったのに、今のものはまったくちがう。
なにしろひとに食べてもらうために作るのだから。
しかもそれは友達などではなく『彼氏』……。
……ああ、もう。
つむぎはまた、同じことを考えてしまって恥ずかしくなった。
妙に意識してしまう。いばら先輩のことを。彼氏、なのだから当たり前だとはいえ。
「わかりました! なにが食べたいとかありますか?」
「そうだなぁー……あんまり難しいもんだと困るよな?」
「お弁当の定番なのだったらだいたいできると思いますよ」
明日のお弁当のことなんて、何気なくも楽しい話題がそのあと続いていった。
今日は晴天、九月もあと数日で終わる、秋晴れのさわやかな空が広がっていた。
お弁当も食べ終えて、まだ少しおしゃべりして。
最初に話した通り、午後一番の授業が体育だといういばら先輩に合わせて早めに屋上を出たのだけど。
お弁当のこととは別に、つむぎの頭の中にあったことがある。
それは。
いばら先輩は、昼休みに眠ってないということ。
一週間ほど前。
つむぎと過ごしはじめてから、ずっと、毎日。
しっかり起きていて、楽しく話をしてくれているのである。
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