ばらがき辰の祓い道

最終決戦

③

　静かに言われたことはその通りだった、のだろうが。
　暗疎は膝をついたところから、視線を上げた。
　淀んだその目を見て、私はぎくりとする。
　その目がぎらりと輝いた、と思ったとき。暗疎がバッと手を振っていた。

「まだだ……！」

　が、私はもう、それをただ見ているつもりはなかった。
　あの手のひらから妖魔が放たれること、散々見てわからないはずもない。
　私は地面に寝かせていた子一郎の横から立ち上がった。
　懐から乱暴にそれを引き抜き、鞘を取り払う。
　からんっ、と鞘が地面に転がる音が、何故か鮮明に聞こえた、直後。

「もう……終わりよ！」

　私は思いきり振りかぶった。

　辰之助に渡されていたそれ……短刀を。

　戌の加護を持つ短刀、カッと強く発光した。
　それをシュッと投げていた。
　これでも高校時代はソフト部だったのだ。コントロールには自信がある。
　暗疎が予想外の方向からの攻撃に、目を丸くするのが見えた。
　淀んだ目、どろどろした瞳がこちらを見るけれどもう遅い。

「ぐぅぅ！」

　私の投げた短刀。
　暗疎の手のひらに深々、突き刺さった。

　そこから強い光が弾ける。

　橙色の光は、辰之助の刃から放たれるものと同じ。

　それはそうだ。
　この短刀。いや、投げた私。
　辰之助の持つ、辰の刻の加護も混ざり合い、込められていたのだから。