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最終決戦
①
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「さて、と」
辰之助は振り向き、再び暗疎に向き合った。
暗疎は顔を歪めている。
「はっ、ガキでは役に立たなかったか」
「ああん!? てめぇ、利用しといてその言いざま、許すわけにはいかねぇな!」
辰之助こそ顔を歪めた。
歯を剥きそうなほどの怒りが顔に表れ、私は辰之助が、ぐっと日本刀の柄を握り直すのが見えた。
次の瞬間には、ドッ、と前にも聞いた音が立っていた。
辰之助が地面を勢いよく蹴った音。
辰之助は軽々と地面から跳び、暗疎のいる高台、やはり三階建てくらいはあるように見える高さに降り立った。
間髪入れずに刃をかざし、暗疎に突っ込んでいく。
今度こそ、決着がつくのかしら。
私ははらはらしつつ、それを見守るしかない。子一郎の体を抱きながら。
辰之助は暗疎に斬りかかる。
暗疎も対峙し、手のひらから一瞬で妖魔の刃を噴き出させ、握る。
辰之助の刃を受け止めた。
ここまで音が聞こえてくるほど鋭い打ち合いになる。
刃が交えられては離れ、またどちらかが仕掛け、打つ。
相手が受け止める。
払う。
また膠着。
辰之助は何度も打ちいるが、なかなか斬れない様子であった。
それもそのはず。
辰之助のまとう光は強くなっていたが、暗疎の持つ妖魔の剣も硬そうになっているのだ。
それはおそらく、子一郎を連れ去ったことや、道場に火をつけたこと。
それに関連があるのだろう。
妖魔は暗の存在だ、と聞いた。
ひとに負の状態や感情を負わせれば、それが後押しになっても不思議はない。
私は見守りながら、色々なことが頭に浮かんでいた。
今日一日で色々なことがありすぎたけれど、それらの出来事から、じわじわと頭に浮かんでくることがあったのだ。
辰之助には私の戌の加護の力が入った。
それは辰之助の力を増幅させるものなのだという。
その通り、辰之助の力は明らかに上がっている。
疑いようもない。
では……私は?
そこまで考えて、思い当たったのだ。
私は辰之助に力を与えただけではない。
私も辰之助の血を飲み、相互の関係になった。
ということは……私の体にも、辰之助の持つ、『辰の刻の加護』が入ったのでは?
その推測は、私にあるものを握りしめさせた。
それは懐に入れていた、きっと今、重要な役目を持ってくれるものである。
辰之助は振り向き、再び暗疎に向き合った。
暗疎は顔を歪めている。
「はっ、ガキでは役に立たなかったか」
「ああん!? てめぇ、利用しといてその言いざま、許すわけにはいかねぇな!」
辰之助こそ顔を歪めた。
歯を剥きそうなほどの怒りが顔に表れ、私は辰之助が、ぐっと日本刀の柄を握り直すのが見えた。
次の瞬間には、ドッ、と前にも聞いた音が立っていた。
辰之助が地面を勢いよく蹴った音。
辰之助は軽々と地面から跳び、暗疎のいる高台、やはり三階建てくらいはあるように見える高さに降り立った。
間髪入れずに刃をかざし、暗疎に突っ込んでいく。
今度こそ、決着がつくのかしら。
私ははらはらしつつ、それを見守るしかない。子一郎の体を抱きながら。
辰之助は暗疎に斬りかかる。
暗疎も対峙し、手のひらから一瞬で妖魔の刃を噴き出させ、握る。
辰之助の刃を受け止めた。
ここまで音が聞こえてくるほど鋭い打ち合いになる。
刃が交えられては離れ、またどちらかが仕掛け、打つ。
相手が受け止める。
払う。
また膠着。
辰之助は何度も打ちいるが、なかなか斬れない様子であった。
それもそのはず。
辰之助のまとう光は強くなっていたが、暗疎の持つ妖魔の剣も硬そうになっているのだ。
それはおそらく、子一郎を連れ去ったことや、道場に火をつけたこと。
それに関連があるのだろう。
妖魔は暗の存在だ、と聞いた。
ひとに負の状態や感情を負わせれば、それが後押しになっても不思議はない。
私は見守りながら、色々なことが頭に浮かんでいた。
今日一日で色々なことがありすぎたけれど、それらの出来事から、じわじわと頭に浮かんでくることがあったのだ。
辰之助には私の戌の加護の力が入った。
それは辰之助の力を増幅させるものなのだという。
その通り、辰之助の力は明らかに上がっている。
疑いようもない。
では……私は?
そこまで考えて、思い当たったのだ。
私は辰之助に力を与えただけではない。
私も辰之助の血を飲み、相互の関係になった。
ということは……私の体にも、辰之助の持つ、『辰の刻の加護』が入ったのでは?
その推測は、私にあるものを握りしめさせた。
それは懐に入れていた、きっと今、重要な役目を持ってくれるものである。
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