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再・激闘
⑤
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子一郎は最初、見たように目を閉じてぐったりしている。
その体はまだどろどろとしたものにうっすら包まれていたけれど、辰之助は構わずに子一郎の体を抱く。
そしてその額に手を当てた。
ぱぁ、と光が生まれて、子一郎の額を光らせた。
その光は子一郎の額から体に吸い込まれていく。
それと同時に、まるで逃げていくように黒い霧は散り散りになって、子一郎の体から離れて行った。
「……いいだろ」
辰之助はそれを見守っていたけれど、やがて口の端を上げた。
私からは安心した、という表情に見えたそれ。
辰之助は、抱きしめた子一郎の体をうしろに回す。地面の上にそっと寝かせた。
私は呆然と立っていたところから、慌てて駆け寄る。辰之助が私を見て、今度ははっきり笑みを浮かべた。
「もう大丈夫だぜ。夜留子、見ててくんな」
「は、はい!」
そう言われて私のほうもほっとした。
膝をついて、子一郎の体を抱く。頭を膝の上に乗せた。
子一郎の顔は穏やかであった。眠っているだけ、のように見える。
きっと道場破りのあの男のように、眠れば元通りの状態で目が覚めるのだろう。
その体はまだどろどろとしたものにうっすら包まれていたけれど、辰之助は構わずに子一郎の体を抱く。
そしてその額に手を当てた。
ぱぁ、と光が生まれて、子一郎の額を光らせた。
その光は子一郎の額から体に吸い込まれていく。
それと同時に、まるで逃げていくように黒い霧は散り散りになって、子一郎の体から離れて行った。
「……いいだろ」
辰之助はそれを見守っていたけれど、やがて口の端を上げた。
私からは安心した、という表情に見えたそれ。
辰之助は、抱きしめた子一郎の体をうしろに回す。地面の上にそっと寝かせた。
私は呆然と立っていたところから、慌てて駆け寄る。辰之助が私を見て、今度ははっきり笑みを浮かべた。
「もう大丈夫だぜ。夜留子、見ててくんな」
「は、はい!」
そう言われて私のほうもほっとした。
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