ばらがき辰の祓い道

辰の加護と戌の加護

②

「だが、戌の子がどこにいるかなんてわからねぇ。挙句、あんたは別の世界に住んでたわけだ。俺としてはそんなこと、思い当たるもんか。この世界にいるもんだと思って、ここで探してたわけだな」
　辰之助の説明は淡々としていた。私は静かに聞いていた。
「だが、先に嗅ぎ付けたのが暗疎だった。あっちの世界に諜報でも送ってたんだろうな。それであんたを見つけ出して」
　そこまで言われて、私はぞくっとした。嫌な予感が伝わってきたのだ。

「俺が見つけるより先に、あんたを亡き者にしようとした、ってとこだ」

　つまり、私は本当にあの先輩……諜報だったのだろう、あのひとは。目が普通ではなかったし、今思えば。
　そのひとに殺されようとしていたのだ。
　だが、私は何故か死ななかった。
　この世界に放り出される形になった……。
「あんたが死なずに、おまけにこっちの世界に飛ばされた理由ははっきりわからん。ただ、こうだったらいいと思うことはあるが」
「なんですか？」
　私は気軽に聞いてしまったのだが、直後、顔が燃えるかと思った。

「俺があんたを探している気持ちが呼び寄せたんじゃないか、ってね」

　なんと恥ずかしいことをしれっと言うのか。私のほうが恥ずかしくなってしまう。
　しかしこれで私の謎だったことのあれそれは、一応すべて理解できたことになる。
　こんな恥ずかしい思いをさせられるとは思わなかったが。