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流血とキス
②
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びくっとしてそちらを見た。
だがすぐにほっとした。
入ってきたのは辰之助だったのだから。
「辰さん! おかえり、な、さ……」
顔を明るくして言いかけた私。
でもその目はすぐに見開くことになる。
辰之助は着物を破けさせ、肩から血まで流した様子だったのだから。
その姿で乱暴に戸を開けたから、あの大きな音がしたのだ。
「た、辰さん!? ど、どうしたんですか、その怪我……」
私はお米を入れたお鍋を放り出して、辰之助の元へ向かった。
辰之助はなんとかという様子で、土間から居室の段差にどさっと腰を下ろす。
「あー……、大したことねぇわ」
そう言ったけれど、声は弱々しかった。
押さえた肩、破けた着物の中からは血が伝っている。
私の心臓が嫌な具合に冷えた。
ひとがこれほどの怪我をしているところなんて、そうそう見たことなんてない。
「そんなはずないじゃないですか! なにか手当をするものはありますか!?」
私は慌ててしまいつつも、手当をすることを思いついた。
血を拭いて……薬を塗って……あ、違う。その前に傷を消毒しないといけない。
こんな大掛かりな治療、私にできるのだろうか、と思うも、するしかないのである。
辰之助は私の慌てように、かえって落ち着いたのか。笑みを浮かべてみせてくれた。
「ああ……、そっちの棚に、薬とかあるけど、あとで」
「いけません! こっちですね!? 開けますよ!」
でもその笑みで安心できるものか。私はきっぱり言い返し、言われた通りの棚に手をかけた。
がらっと開けると、確かに薬箱らしきものがある。それを引っ張り出した。
箱自体も開けると、塗り薬、包帯、当て布……色々入っていた。
私はそれを見て、少しほっとした。これで応急処置くらいはできそうだ。
「うぐぅぅぅ!」
けれどそのとき大きな苦痛の声がして、私の一旦ほっとした心臓が、ひやっと冷えた。
まさか痛むのだろうか?
それとも別の悪いことが……?
ばっと振り返って……もう一度心臓が冷えた。
「な、なにをしてるんですか!」
辰之助は着物を上半身だけ脱ぎ、はだけて、できた傷らしき部分に、大瓶の日本酒をぶっかけていたのだから。
傷口にそんなものを。
私はその理由もわからず、おろおろしてしまった。
日本酒なんて、染みるだろう。
だがすぐにほっとした。
入ってきたのは辰之助だったのだから。
「辰さん! おかえり、な、さ……」
顔を明るくして言いかけた私。
でもその目はすぐに見開くことになる。
辰之助は着物を破けさせ、肩から血まで流した様子だったのだから。
その姿で乱暴に戸を開けたから、あの大きな音がしたのだ。
「た、辰さん!? ど、どうしたんですか、その怪我……」
私はお米を入れたお鍋を放り出して、辰之助の元へ向かった。
辰之助はなんとかという様子で、土間から居室の段差にどさっと腰を下ろす。
「あー……、大したことねぇわ」
そう言ったけれど、声は弱々しかった。
押さえた肩、破けた着物の中からは血が伝っている。
私の心臓が嫌な具合に冷えた。
ひとがこれほどの怪我をしているところなんて、そうそう見たことなんてない。
「そんなはずないじゃないですか! なにか手当をするものはありますか!?」
私は慌ててしまいつつも、手当をすることを思いついた。
血を拭いて……薬を塗って……あ、違う。その前に傷を消毒しないといけない。
こんな大掛かりな治療、私にできるのだろうか、と思うも、するしかないのである。
辰之助は私の慌てように、かえって落ち着いたのか。笑みを浮かべてみせてくれた。
「ああ……、そっちの棚に、薬とかあるけど、あとで」
「いけません! こっちですね!? 開けますよ!」
でもその笑みで安心できるものか。私はきっぱり言い返し、言われた通りの棚に手をかけた。
がらっと開けると、確かに薬箱らしきものがある。それを引っ張り出した。
箱自体も開けると、塗り薬、包帯、当て布……色々入っていた。
私はそれを見て、少しほっとした。これで応急処置くらいはできそうだ。
「うぐぅぅぅ!」
けれどそのとき大きな苦痛の声がして、私の一旦ほっとした心臓が、ひやっと冷えた。
まさか痛むのだろうか?
それとも別の悪いことが……?
ばっと振り返って……もう一度心臓が冷えた。
「な、なにをしてるんですか!」
辰之助は着物を上半身だけ脱ぎ、はだけて、できた傷らしき部分に、大瓶の日本酒をぶっかけていたのだから。
傷口にそんなものを。
私はその理由もわからず、おろおろしてしまった。
日本酒なんて、染みるだろう。
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