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異世界だって朝は来る
②
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「字(あざな)があんのか。姫様かね」
「え……?」
驚かれたけれど、私はすぐにその意味がわからなかった。
どうしてお姫様、などと。
その理由は、彼が名乗ってくれた名前で理解できた。
「俺は辰之助(たつのすけ)。あんたと違って、名前しかねぇけどな」
辰之助。
格好良い名前だ、と普通に思ってしまって、そのあと付け加えられたことに、先程の反応の理由を知る。
字(あざな)。
昔の言葉で、名字のことだ。
そういえば、昔はいい家、貴族だとか武家だとか、そういう家の人間しか名字というものを持たなかったらしい。
私は中学や高校の授業でのことを思い出した。
「あ……えっと、私のいたところは、名字……じゃなくて、あざながあるのが、みんな普通で」
説明すると、辰之助は感心したようだった。二杯目のご飯をさっきよりゆっくり食べながら、感慨深げに言った。
「へぇ。変わってんな。あ、でも漢字は使うんだな? どういう字だ。俺は『辰の刻』の辰に、『よし』の之、助は『たすける』だ」
最後の『たすける』は、私の心に響いてきた。
私は本当にこのひとに助けられてしまったのだ。
そうでなければ行き倒れたまま途方に暮れて、あの暴漢に斬り殺されていただろう。
それが一応、家の中にいられて、ご飯まで出してもらっている。恩などありすぎるくらいだろう、既に。
そう思いつつも、私は「こういう字で」と説明する。
それはちゃんと意味が通じてくれた。
どうもここは、私にとっての『昔の日本』のような世界のようだ、と、名前や漢字から私はそう感じた。
朝食を終えて、外に出ることになって、私はそれがほぼ当たりであろうことを、はっきりと理解することになる。
「え……?」
驚かれたけれど、私はすぐにその意味がわからなかった。
どうしてお姫様、などと。
その理由は、彼が名乗ってくれた名前で理解できた。
「俺は辰之助(たつのすけ)。あんたと違って、名前しかねぇけどな」
辰之助。
格好良い名前だ、と普通に思ってしまって、そのあと付け加えられたことに、先程の反応の理由を知る。
字(あざな)。
昔の言葉で、名字のことだ。
そういえば、昔はいい家、貴族だとか武家だとか、そういう家の人間しか名字というものを持たなかったらしい。
私は中学や高校の授業でのことを思い出した。
「あ……えっと、私のいたところは、名字……じゃなくて、あざながあるのが、みんな普通で」
説明すると、辰之助は感心したようだった。二杯目のご飯をさっきよりゆっくり食べながら、感慨深げに言った。
「へぇ。変わってんな。あ、でも漢字は使うんだな? どういう字だ。俺は『辰の刻』の辰に、『よし』の之、助は『たすける』だ」
最後の『たすける』は、私の心に響いてきた。
私は本当にこのひとに助けられてしまったのだ。
そうでなければ行き倒れたまま途方に暮れて、あの暴漢に斬り殺されていただろう。
それが一応、家の中にいられて、ご飯まで出してもらっている。恩などありすぎるくらいだろう、既に。
そう思いつつも、私は「こういう字で」と説明する。
それはちゃんと意味が通じてくれた。
どうもここは、私にとっての『昔の日本』のような世界のようだ、と、名前や漢字から私はそう感じた。
朝食を終えて、外に出ることになって、私はそれがほぼ当たりであろうことを、はっきりと理解することになる。
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