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異世界だって朝は来る
①
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「美味しいです」
一時間ほどあと。
私は何故か、お膳というものを出されて、朝ご飯など食べさせてもらっていた。
彼が起きて、どきどきしつつも、どこかほっとしたのだろう。すぐにぐぅっとお腹が鳴った。
思えば、大学の屋上から落っこちたのは夕ご飯を食べる前だった気がする。朝になれば普通にお腹も減る。
お腹を鳴らして顔を赤くした私を、「呑気なもんだ」と苦笑してきたものの、彼はぱっぱっと支度をして、「ほい」と朝ご飯まで振る舞ってくれたのだった。
とはいえ、白いご飯とお味噌汁、お漬物くらいだったけれど。今の私にとっては極上のご飯であったに違いない。
「そりゃ良かった」
わしわしと白ご飯を掻き込みながら、彼は満足げに笑みを浮かべてくれた。その笑みは私とどきどきさせるやら、ほっとさせるやら。
「そうだ、嬢ちゃんよ。あんた、名前はなんていうんだ」
ご飯をお代わりして戻ってきて、座り直した彼に聞かれて、私ははっとした。
そういえば名前すら名乗っていない。無礼だっただろうと反省した。
「あ、え、えっと」
思い出そうとして、ちゃんと頭にあることにほっとした。
「戌井 夜留子といいます」
遅すぎることだが名乗って、小さく頭を下げる。彼は何故か、ちょっと目を丸くした。
いぬい、と口の中で呟いたような動きをしたけれど、出てきたのは多分違う言葉と台詞であった。
一時間ほどあと。
私は何故か、お膳というものを出されて、朝ご飯など食べさせてもらっていた。
彼が起きて、どきどきしつつも、どこかほっとしたのだろう。すぐにぐぅっとお腹が鳴った。
思えば、大学の屋上から落っこちたのは夕ご飯を食べる前だった気がする。朝になれば普通にお腹も減る。
お腹を鳴らして顔を赤くした私を、「呑気なもんだ」と苦笑してきたものの、彼はぱっぱっと支度をして、「ほい」と朝ご飯まで振る舞ってくれたのだった。
とはいえ、白いご飯とお味噌汁、お漬物くらいだったけれど。今の私にとっては極上のご飯であったに違いない。
「そりゃ良かった」
わしわしと白ご飯を掻き込みながら、彼は満足げに笑みを浮かべてくれた。その笑みは私とどきどきさせるやら、ほっとさせるやら。
「そうだ、嬢ちゃんよ。あんた、名前はなんていうんだ」
ご飯をお代わりして戻ってきて、座り直した彼に聞かれて、私ははっとした。
そういえば名前すら名乗っていない。無礼だっただろうと反省した。
「あ、え、えっと」
思い出そうとして、ちゃんと頭にあることにほっとした。
「戌井 夜留子といいます」
遅すぎることだが名乗って、小さく頭を下げる。彼は何故か、ちょっと目を丸くした。
いぬい、と口の中で呟いたような動きをしたけれど、出てきたのは多分違う言葉と台詞であった。
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