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辰の家にて
⑦
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大人しくしとけと言われたものの、布団があるわけでもなく、手元にはスマホもなにもない。落っこちるときになくしてしまったのかもしれない。
いや、この場所でスマホがあっても、繋がらない気しかしないけれど。
手元にあったのは、ジャケットのポケットに入っていた僅かなものたち。
今が夏などでなくて良かった、と思う。夏ならワンピース一枚の姿、なんて可能性もあったのだから。
こんな場所でそれはだいぶ困ってしまう。
ここの季節は、というか季節があるかもわからないけれど、ひとまず、ブラウスにスカート、ジャケットというごく普通の若い女の子の秋スタイルで寒くも暑くもないから、似た気候か季節なのだろう。
それはともかく、入っていたのはハンカチとティッシュ、それから何故かソーイングセット。
なんでソーイングセットが、と考えて思い当たった。
実習で使うエプロンがほつれていたから、応急処置をしようとジャケットに入れっぱなしになっていたのだ。
しかしソーイングセットって、と思う。
こんなことになるならもっと役に立つ……食べ物とか、ライターとか、カッターとか?
いや、それはサバイバルか……。
まぁ、役に立つなにしらを入れておけば良かった。
そう思ったって、もう遅いのだけど。
とりあえず邪魔にはならないだろう、と思って、ごそごそしているうちに、元々夜中だったのだ、日がのぼってきたようだ。障子の外が明るくなっていく。
一体、これからどうなるというのか。
違う意味でどきどきしつつ、私はそこで座っているしかなかったのだけど、そのうち昨夜の彼がごそりと動いた。むくりと起き上がって、こちらを見る。
赤い髪はぼさぼさになっていた。寝ている間に寝がえりでも打ったらしい。
その様子は無防備で、ちょっとどきっとしてしまった。昨夜、襲われかけたというのに呑気なことだが。
だって彼はだいぶ見た目がいい。おまけに男のひとの寝起きなど、私は父くらいしか知らないのであった。
父に色気を感じるはずもなし、そのときとはまったく勝手が違う。どきどきしてしまって視線をついそらしてしまった。
「あー……、夢じゃなかったんか」
彼は綺麗な見た目とは裏腹、ぐしゃっと髪を掻き乱して、ちょっと憂鬱そうに言った。
それがこの奇妙な世界……もう認めるしかない、異世界だ、ここは。
ここでの生活のスタートであった。
いや、この場所でスマホがあっても、繋がらない気しかしないけれど。
手元にあったのは、ジャケットのポケットに入っていた僅かなものたち。
今が夏などでなくて良かった、と思う。夏ならワンピース一枚の姿、なんて可能性もあったのだから。
こんな場所でそれはだいぶ困ってしまう。
ここの季節は、というか季節があるかもわからないけれど、ひとまず、ブラウスにスカート、ジャケットというごく普通の若い女の子の秋スタイルで寒くも暑くもないから、似た気候か季節なのだろう。
それはともかく、入っていたのはハンカチとティッシュ、それから何故かソーイングセット。
なんでソーイングセットが、と考えて思い当たった。
実習で使うエプロンがほつれていたから、応急処置をしようとジャケットに入れっぱなしになっていたのだ。
しかしソーイングセットって、と思う。
こんなことになるならもっと役に立つ……食べ物とか、ライターとか、カッターとか?
いや、それはサバイバルか……。
まぁ、役に立つなにしらを入れておけば良かった。
そう思ったって、もう遅いのだけど。
とりあえず邪魔にはならないだろう、と思って、ごそごそしているうちに、元々夜中だったのだ、日がのぼってきたようだ。障子の外が明るくなっていく。
一体、これからどうなるというのか。
違う意味でどきどきしつつ、私はそこで座っているしかなかったのだけど、そのうち昨夜の彼がごそりと動いた。むくりと起き上がって、こちらを見る。
赤い髪はぼさぼさになっていた。寝ている間に寝がえりでも打ったらしい。
その様子は無防備で、ちょっとどきっとしてしまった。昨夜、襲われかけたというのに呑気なことだが。
だって彼はだいぶ見た目がいい。おまけに男のひとの寝起きなど、私は父くらいしか知らないのであった。
父に色気を感じるはずもなし、そのときとはまったく勝手が違う。どきどきしてしまって視線をついそらしてしまった。
「あー……、夢じゃなかったんか」
彼は綺麗な見た目とは裏腹、ぐしゃっと髪を掻き乱して、ちょっと憂鬱そうに言った。
それがこの奇妙な世界……もう認めるしかない、異世界だ、ここは。
ここでの生活のスタートであった。
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