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辰の家にて
⑤
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どうしよう、逃げないと。
もう一度、同じことを思ってしまったけれど、やはり逃げられるものか。
体も凍り付いたようになってしまって、そこを彼の手が頬を撫でてきた。
「大丈夫さ、俺ぁ優しいからな。あっちのほうも上手いって褒められるし」
あっちって、どっち。
褒められるって、誰に。
わかるのに、わかりたくないことばかり言われて、私が恐ろしさの頂点に達し、彼が笑みを浮かべて、すっと顔を近付けたとき。
ずきんっ。
腰の下が強く痛んだ。
「いっつ……!?」
どさっ。
私はその場に倒れ込んでいた。
結果的には逃れた形であるが、こんなやり方とは想像されていなかったに決まっている。
彼は取り残されて、手だけ宙に浮いたまま、ぽかんとした。
しかし私はそれどころではない。
ずきずきと足が痛む。
いや、これはずきずきというより、じんじん、だ。
じーんと、足に感覚がなくなっていく。
「……は」
彼は呆然とした様子で、いきなり倒れ込んだ私を見下ろしてきた。
私はただ畳に懐くしかない。
だって……。
「あ……足が……痺れ、ました……」
もう一度、同じことを思ってしまったけれど、やはり逃げられるものか。
体も凍り付いたようになってしまって、そこを彼の手が頬を撫でてきた。
「大丈夫さ、俺ぁ優しいからな。あっちのほうも上手いって褒められるし」
あっちって、どっち。
褒められるって、誰に。
わかるのに、わかりたくないことばかり言われて、私が恐ろしさの頂点に達し、彼が笑みを浮かべて、すっと顔を近付けたとき。
ずきんっ。
腰の下が強く痛んだ。
「いっつ……!?」
どさっ。
私はその場に倒れ込んでいた。
結果的には逃れた形であるが、こんなやり方とは想像されていなかったに決まっている。
彼は取り残されて、手だけ宙に浮いたまま、ぽかんとした。
しかし私はそれどころではない。
ずきずきと足が痛む。
いや、これはずきずきというより、じんじん、だ。
じーんと、足に感覚がなくなっていく。
「……は」
彼は呆然とした様子で、いきなり倒れ込んだ私を見下ろしてきた。
私はただ畳に懐くしかない。
だって……。
「あ……足が……痺れ、ました……」
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