2 / 30
第2話 先輩の足跡
しおりを挟む
2つの月っぽい球体から放たれる淡い光を頼りに、ゴツゴツした岩だらけの道なき道を歩いて進んでいると、茂のお腹が盛大に鳴った。夢なのにお腹が空くものなのか。いや、もういいかげん、夢じゃないという事実を受け止めるべきか。
「コレ、美味しいぞ」
微笑みながらモナークが、腰に着けた小さな鞄から何か取り出し、放って寄越した。両手で受け取って見ると、トマトに似た形状で、橙色の丸いモノだ。
「食べられるのか?」
「皮ごと食べられるから、齧ってみな。しっかし、本当に何も覚えてないんだねぇ。イルモなんて、子供でも知ってるんだけどな」
イルモとかいう柔らかい食べ物を言われた通り齧ると、口いっぱいに甘みが広がった。同時に鼻をレモンのような酸っぱい香りが通り抜けていく。何かの風味に似ている気がしたが、思い出せなかった。
だが、味覚も嗅覚もあるということは、やはり夢ではない説が濃厚になってきた。そういえば、この山に辿り着いてからずっと、微かに硫黄の臭いが鼻をついていた。そろそろ、現実だということを前提にものを考えるべきかも知れない。
イルモを口に含みながら、茂はモナークに訊く。
「今は、どこに向かってるんだ?」
「この山の向こうに、小さな村があってな。そこの村長は術士だから、アンタが何者か診てもらおうと思ってる。あたしにはもう翼を使う力が残ってないから、このまま歩いていくしかない」
モナークはそう言いながら、スイスイと岩を登ったり下りたりして進んでいく。茂も腰に着けたマントを汗で濡らしながら、必死に手足を使って岩を乗り越えついていく。
ふと、岩に挟まるように、拳大の、丸いコンクリートのようなものが落ちていることに気付いた。
拾い上げて、岩にコンコンと当ててみる。素材としては、やはりコンクリートに似ている。匂いを嗅ぐ。草の香りが強いものの、完全に固まる前のコンクリートから出る匂いに似ている。
「それ、魔物の糞だよ」
茂は糞を宙に放り投げた。
「ぎゃあっ!」
顔面蒼白になりながら、糞を持っていた手を、腰に巻いたマントでしっかりと拭く。モナークが腹を抱えて笑っている。
「面白いことするじゃないか。舐めるまで放っておけばよかった」
茂はがっくりと肩を落として、また岩場を進み始めた。しかし、あれはどう考えてもコンクリートだった気がする。あるいは、かなりの便秘だったのだろうか……。
随分と酷使したため、茂の腕に力が入らなくなってきた。顔を上げると、ひときわ大きな岩の上で、モナークが手招きしている。
もうひと踏ん張り、なんとか岩を登り、差し出されたモナークの手を取って岩の上へ引き上げられると、朝陽に照らされる小さな村が確認出来た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
村には、石を積んだだけの壁に、木製の屋根がついていたり、廃材で作ったのかと思うようなほったて小屋があったりと、なんだか適当に建てられたような家が点在していた。およそ30棟くらいが無計画に建ち並び、まともに整備された道も無い。
日中はどこかへ出掛けているのか、ほとんど村人の姿を見かけない。
籠に野菜のようなものを乗せて運んできた村人の女が、訝しげに茂の姿を睨みながら通り過ぎていった。
「なあ、村長ってのに会う前に、俺は服を着た方が良いんじゃないか?」
「大丈夫、大丈夫。村長も似たような格好だから」
村の中央には広場があり、その広場を抜けると、他のとは違う雰囲気の家があった。
茂は、その白っぽい壁を眺めて呟く。
「これは……漆喰だ。どうしてここだけ……」
入り口から中へ入りかけたモナークが、早く来いと手招きする。
扉の無い入り口から中を覗くと、奥に半裸で腰巻きを着けたオッサンが椅子に座っていた。確かに、マントを腰に巻いた茂と似たような格好だ。これが村長か。
モナークは、茂の肩に手を置いて、彼を村長に紹介する。
「聖エルフの里の近くで倒れていた人族だ。ポレイトと言う名らしい」
ポレイトはお前が勝手に決めたんだろと思いながら、茂は頭を下げる。村長は、虚な眼で茂をしばらく見つめていたかと思うと、急にカッと目を見開く。怖い。
「もしや、ニッポンジンか?!」
「え」
突然出てきた言葉に、茂は驚く。やっぱり夢を見ているような気がしてきた。
「確かに、俺は日本人だけど、ここは一体……」
村長は椅子から立ち上がり、奥の部屋でゴソゴソと何かを探す。そして、A4ノートくらいの大きさの石板を持って戻ってきた。
村長が説明をしながら、石板を手渡してくる。
「何年か前に、少しの間だけこの村にいた者が書いたんだ。わたしたちには複雑すぎて解読出来なかったが。どうだろう、読めるか?」
その石板には、日本語が彫り込まれていた。茂は、ゆっくりと音読する。
『この世界は面白いぞ。技術は中世くらいだけれども、魔物が素材を生み出すんだ。素材にできる植物もたくさんある。もっと色々なものを作ってみたかったが、この世界の水や空気は僕には合わなかったみたいだ。僕はもうすぐ死ぬだろう。これを読んだ人へ頼みたい。オリハルコンを作り出してくれ。この世界で一番硬い最高の素材だ。きっとどこかにあるはず。まずは王都で調べてみてくれ。 片瀬那智』
「片瀬……先輩?」
茂の脳裏に、会社に入ったばかりの頃の記憶が甦ってきた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「片瀬さん、また残業ですか?」
会社に入ったばかりで研修期間の茂は、定時で上がる準備をしていた。窓際の席でいつも忙しそうにしている片瀬が目に入り、初めて自分から声をかけてみた。
「ああ、君は……新人の三叉くんだね。どうだい、この会社は」
「まだ研修に参加してるだけなので、早く会社に貢献出来るように頑張ります!」
片瀬は、にこりとして、俯いた。
「頑張る、かぁ。懐かしい響きだ。今じゃ、やらなきゃならないことに追われて、何も考えずにただ処理をし続けているだけだから……。っとゴメン、ゴメン。新人に聞かせる話じゃなかったね」
「いえ、早く戦力になって、片瀬さんの仕事を少しでも分けてもらえるよう勉強します」
「なかなか、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃ、楽しみにしてるよ」
それが、茂と片瀬の最後の会話となった。
片瀬はその日、会社のデスクで血を吐いて倒れた。翌朝最初に出勤した社員が発見した時には、すでに心臓が止まっていたという。
葬式には同じ部署の茂も参加した。奥さんと息子さんがずっと泣いていたと記憶している。
いつも帰りが午前2時くらいになっていたらしく、会社へ申告せずにかなりの長時間残業を繰り返した末の過労死と判断された。それで以後、残業に関しては、かなり厳しいチェックが入るようになった。
「片瀬さんは、亡くなった後にこの世界に来てたのか……。村長、これを書いた人は、いつ頃ここにいたんですか?」
「3年か4年か、そのくらい前だ。ふらっと現れて。そうだ、そこの壁も不思議な土で塗っていたな。研究をしたいんだとか言っていたが、ちょうど村で病が流行っていて、それに罹ってすぐに逝ってしまったよ」
……あの漆喰の壁は、片瀬先輩が塗ったのか。
にわかに、外が騒がしくなる。
モナークに続いて外へ出ると、人間と同じくらいの大きさの巨大な蜂が一匹、羽音を唸らせて宙を舞っていた。
さっきまで姿の見えなかった村人たちが、逃げ惑っている。森から誰かが引き連れて来てしまったのか。
「モナーク、あれが魔物か?!」
「そうだ。時々、村に迷い込んでくるんだ。普段なら皆、家に隠れるんだろうが……」
モナークは、肩に掛けた長剣をすらりと抜いて、蜂の進行方向を塞ぐ。
巨大な蜂がモナーク目掛け、図太い針を向けて突撃していく。
「こんな弱い魔物は、あっという間に退治してやるよ!」
駆け出したモナークは飛び上がると、突き出された針の上に乗り、さらにもう一度ジャンプした。
身体を捻りながら左手の長剣を振り切ると、魔物の表皮の長い毛を掴んでもう一段飛び、ついには蜂の頭を追い越すほど高く舞い上がった。
初撃に怯んだ蜂を長剣で叩き割るかのように、思いっ切り上から剣を振り下ろす。
バリバリと音を立てて魔物の体が真っ二つに裂けていく。そしてその姿はどろどろと溶けて、ボトボト地上に落ちていった。
「すごいな、とんでもないアトラクションを間近で見てるみたいだ」
ふわっと地上に降りたモナークは、剣を収めながら茂の方へ歩いてきた。
「ただ、ここで倒すと問題がある。あのどろどろしたものは、しばらくすると固まって、すごく重くなるんだよ。捨てるのが大変なんだ」
「固まる?」
茂は、かつて魔物だった液体に歩み寄り、指で少しすくってみる。かなり粘着質な素材で、人差し指と親指で捏ねていると、確かに固まってきた。この変化には心当たりがある。
「これは、接着剤? 匂いは……まるで木工用ボンドだ」
そうか、この世界の魔物は「素材」なのか。それなら……。
モナークに向かい、茂は尋ねる。
「オリハルコンって、手に入れるのは難しいのか?」
「そうねぇ。稀少なモノは、大体ドラゴンから手に入るみたいだから、結構難しいんじゃないかな。あたしは戦ったこと無いけど。どこにいるのかも知らないし。オリハルコンなんて、伝説みたいなもんよ」
「じゃあ、ドラゴンを探す旅に出るって言ったら、ついて来てくれるか?」
茂の問いかけに、モナークはニヤリと微笑み、頷く。
「いいよ! どうせ暇過ぎて、聖エルフの里にちょっかいかけてたくらいだからね!」
暇潰しでちょっかいかけてたんかーい! というのはさておき、この長い夢の目的が決まり、強い戦士も仲間になった。あとは……。
茂は、村長に真面目な表情で頼む。
「服、ください」
「コレ、美味しいぞ」
微笑みながらモナークが、腰に着けた小さな鞄から何か取り出し、放って寄越した。両手で受け取って見ると、トマトに似た形状で、橙色の丸いモノだ。
「食べられるのか?」
「皮ごと食べられるから、齧ってみな。しっかし、本当に何も覚えてないんだねぇ。イルモなんて、子供でも知ってるんだけどな」
イルモとかいう柔らかい食べ物を言われた通り齧ると、口いっぱいに甘みが広がった。同時に鼻をレモンのような酸っぱい香りが通り抜けていく。何かの風味に似ている気がしたが、思い出せなかった。
だが、味覚も嗅覚もあるということは、やはり夢ではない説が濃厚になってきた。そういえば、この山に辿り着いてからずっと、微かに硫黄の臭いが鼻をついていた。そろそろ、現実だということを前提にものを考えるべきかも知れない。
イルモを口に含みながら、茂はモナークに訊く。
「今は、どこに向かってるんだ?」
「この山の向こうに、小さな村があってな。そこの村長は術士だから、アンタが何者か診てもらおうと思ってる。あたしにはもう翼を使う力が残ってないから、このまま歩いていくしかない」
モナークはそう言いながら、スイスイと岩を登ったり下りたりして進んでいく。茂も腰に着けたマントを汗で濡らしながら、必死に手足を使って岩を乗り越えついていく。
ふと、岩に挟まるように、拳大の、丸いコンクリートのようなものが落ちていることに気付いた。
拾い上げて、岩にコンコンと当ててみる。素材としては、やはりコンクリートに似ている。匂いを嗅ぐ。草の香りが強いものの、完全に固まる前のコンクリートから出る匂いに似ている。
「それ、魔物の糞だよ」
茂は糞を宙に放り投げた。
「ぎゃあっ!」
顔面蒼白になりながら、糞を持っていた手を、腰に巻いたマントでしっかりと拭く。モナークが腹を抱えて笑っている。
「面白いことするじゃないか。舐めるまで放っておけばよかった」
茂はがっくりと肩を落として、また岩場を進み始めた。しかし、あれはどう考えてもコンクリートだった気がする。あるいは、かなりの便秘だったのだろうか……。
随分と酷使したため、茂の腕に力が入らなくなってきた。顔を上げると、ひときわ大きな岩の上で、モナークが手招きしている。
もうひと踏ん張り、なんとか岩を登り、差し出されたモナークの手を取って岩の上へ引き上げられると、朝陽に照らされる小さな村が確認出来た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
村には、石を積んだだけの壁に、木製の屋根がついていたり、廃材で作ったのかと思うようなほったて小屋があったりと、なんだか適当に建てられたような家が点在していた。およそ30棟くらいが無計画に建ち並び、まともに整備された道も無い。
日中はどこかへ出掛けているのか、ほとんど村人の姿を見かけない。
籠に野菜のようなものを乗せて運んできた村人の女が、訝しげに茂の姿を睨みながら通り過ぎていった。
「なあ、村長ってのに会う前に、俺は服を着た方が良いんじゃないか?」
「大丈夫、大丈夫。村長も似たような格好だから」
村の中央には広場があり、その広場を抜けると、他のとは違う雰囲気の家があった。
茂は、その白っぽい壁を眺めて呟く。
「これは……漆喰だ。どうしてここだけ……」
入り口から中へ入りかけたモナークが、早く来いと手招きする。
扉の無い入り口から中を覗くと、奥に半裸で腰巻きを着けたオッサンが椅子に座っていた。確かに、マントを腰に巻いた茂と似たような格好だ。これが村長か。
モナークは、茂の肩に手を置いて、彼を村長に紹介する。
「聖エルフの里の近くで倒れていた人族だ。ポレイトと言う名らしい」
ポレイトはお前が勝手に決めたんだろと思いながら、茂は頭を下げる。村長は、虚な眼で茂をしばらく見つめていたかと思うと、急にカッと目を見開く。怖い。
「もしや、ニッポンジンか?!」
「え」
突然出てきた言葉に、茂は驚く。やっぱり夢を見ているような気がしてきた。
「確かに、俺は日本人だけど、ここは一体……」
村長は椅子から立ち上がり、奥の部屋でゴソゴソと何かを探す。そして、A4ノートくらいの大きさの石板を持って戻ってきた。
村長が説明をしながら、石板を手渡してくる。
「何年か前に、少しの間だけこの村にいた者が書いたんだ。わたしたちには複雑すぎて解読出来なかったが。どうだろう、読めるか?」
その石板には、日本語が彫り込まれていた。茂は、ゆっくりと音読する。
『この世界は面白いぞ。技術は中世くらいだけれども、魔物が素材を生み出すんだ。素材にできる植物もたくさんある。もっと色々なものを作ってみたかったが、この世界の水や空気は僕には合わなかったみたいだ。僕はもうすぐ死ぬだろう。これを読んだ人へ頼みたい。オリハルコンを作り出してくれ。この世界で一番硬い最高の素材だ。きっとどこかにあるはず。まずは王都で調べてみてくれ。 片瀬那智』
「片瀬……先輩?」
茂の脳裏に、会社に入ったばかりの頃の記憶が甦ってきた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「片瀬さん、また残業ですか?」
会社に入ったばかりで研修期間の茂は、定時で上がる準備をしていた。窓際の席でいつも忙しそうにしている片瀬が目に入り、初めて自分から声をかけてみた。
「ああ、君は……新人の三叉くんだね。どうだい、この会社は」
「まだ研修に参加してるだけなので、早く会社に貢献出来るように頑張ります!」
片瀬は、にこりとして、俯いた。
「頑張る、かぁ。懐かしい響きだ。今じゃ、やらなきゃならないことに追われて、何も考えずにただ処理をし続けているだけだから……。っとゴメン、ゴメン。新人に聞かせる話じゃなかったね」
「いえ、早く戦力になって、片瀬さんの仕事を少しでも分けてもらえるよう勉強します」
「なかなか、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃ、楽しみにしてるよ」
それが、茂と片瀬の最後の会話となった。
片瀬はその日、会社のデスクで血を吐いて倒れた。翌朝最初に出勤した社員が発見した時には、すでに心臓が止まっていたという。
葬式には同じ部署の茂も参加した。奥さんと息子さんがずっと泣いていたと記憶している。
いつも帰りが午前2時くらいになっていたらしく、会社へ申告せずにかなりの長時間残業を繰り返した末の過労死と判断された。それで以後、残業に関しては、かなり厳しいチェックが入るようになった。
「片瀬さんは、亡くなった後にこの世界に来てたのか……。村長、これを書いた人は、いつ頃ここにいたんですか?」
「3年か4年か、そのくらい前だ。ふらっと現れて。そうだ、そこの壁も不思議な土で塗っていたな。研究をしたいんだとか言っていたが、ちょうど村で病が流行っていて、それに罹ってすぐに逝ってしまったよ」
……あの漆喰の壁は、片瀬先輩が塗ったのか。
にわかに、外が騒がしくなる。
モナークに続いて外へ出ると、人間と同じくらいの大きさの巨大な蜂が一匹、羽音を唸らせて宙を舞っていた。
さっきまで姿の見えなかった村人たちが、逃げ惑っている。森から誰かが引き連れて来てしまったのか。
「モナーク、あれが魔物か?!」
「そうだ。時々、村に迷い込んでくるんだ。普段なら皆、家に隠れるんだろうが……」
モナークは、肩に掛けた長剣をすらりと抜いて、蜂の進行方向を塞ぐ。
巨大な蜂がモナーク目掛け、図太い針を向けて突撃していく。
「こんな弱い魔物は、あっという間に退治してやるよ!」
駆け出したモナークは飛び上がると、突き出された針の上に乗り、さらにもう一度ジャンプした。
身体を捻りながら左手の長剣を振り切ると、魔物の表皮の長い毛を掴んでもう一段飛び、ついには蜂の頭を追い越すほど高く舞い上がった。
初撃に怯んだ蜂を長剣で叩き割るかのように、思いっ切り上から剣を振り下ろす。
バリバリと音を立てて魔物の体が真っ二つに裂けていく。そしてその姿はどろどろと溶けて、ボトボト地上に落ちていった。
「すごいな、とんでもないアトラクションを間近で見てるみたいだ」
ふわっと地上に降りたモナークは、剣を収めながら茂の方へ歩いてきた。
「ただ、ここで倒すと問題がある。あのどろどろしたものは、しばらくすると固まって、すごく重くなるんだよ。捨てるのが大変なんだ」
「固まる?」
茂は、かつて魔物だった液体に歩み寄り、指で少しすくってみる。かなり粘着質な素材で、人差し指と親指で捏ねていると、確かに固まってきた。この変化には心当たりがある。
「これは、接着剤? 匂いは……まるで木工用ボンドだ」
そうか、この世界の魔物は「素材」なのか。それなら……。
モナークに向かい、茂は尋ねる。
「オリハルコンって、手に入れるのは難しいのか?」
「そうねぇ。稀少なモノは、大体ドラゴンから手に入るみたいだから、結構難しいんじゃないかな。あたしは戦ったこと無いけど。どこにいるのかも知らないし。オリハルコンなんて、伝説みたいなもんよ」
「じゃあ、ドラゴンを探す旅に出るって言ったら、ついて来てくれるか?」
茂の問いかけに、モナークはニヤリと微笑み、頷く。
「いいよ! どうせ暇過ぎて、聖エルフの里にちょっかいかけてたくらいだからね!」
暇潰しでちょっかいかけてたんかーい! というのはさておき、この長い夢の目的が決まり、強い戦士も仲間になった。あとは……。
茂は、村長に真面目な表情で頼む。
「服、ください」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~
泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。
女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。
そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。
冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。
・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。
・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
自衛官、異世界に墜落する
フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・
現代軍隊×異世界ファンタジー!!!
※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる