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山陰 編(2023年11月)
第78話 島根 松江城と堀川めぐり
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僕は走っていた。
朝食バイキングを済ませ、お腹いっぱいでホテルを出て、山口駅まで40分かけ歩いていた。
あー、結構時間かかったなぁと思ったら、なんと山口駅ではなくその1駅先の上山口駅まで歩いていたのだ。ワッハッハ。
そんなわけで僕は走る。あと20分で特急が出発してしまう。3時間半も乗るのだから、なんとしても指定席券をゲットしたい。
線路に沿って爆走したら、7分で山口駅に着いた。日頃のランニングの成果が出たじゃねぇか。
長い区間を乗るから、その間の一区間でも席に座る人がいればその席は取れない。よって選択肢は限られるものの、進行方向に対して左側の海が見える座席を確保できたワーイ。
今日は山口駅に駅員さんが2人もいた。昨日はなんだったんだろう。午前中だけ配置されているとか? そしてその2人の会話がまたホンワカしていて。やっぱりこの町、まったりしててけっこう好きかも。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特急の窓から眺める山々も、田園もとても美しかった。
途中の益田駅で、寝台特急の瑞風を見た。重厚な深緑の列車に、外からでも分かる豪華な内装。走る高級ホテルってやつだ。気になってネットで調べると、かなり先の予約、しかもツアーでしか乗ることが出来ないみたい。そういう旅もあるんだなぁ。
そしてさらに特急は進み続け、日本海が目の前に現れた。今日も海はざんざんと岩礁を勢い良く削り取ろうとしている。元気いっぱいだ。
波がザッパァーン! ザッパァーン……。
砂浜に打ち寄せる白波の向こうには、よく晴れた空の色を濃く映す沖合い。そういえばどこかで、潮の流れが速いほど海の色は濃く深くなるんだと聞いた。だとしたらあの沖合いは相当流れが速いのだろう。
なんで移動するだけでこんな字数を使っているのか。まだ松江まで2時間もあるんですよぉ。ペットボトルのコーヒーも空になって、もう飲むものがないんですよぉ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて松江。駅に降りると足がカチコチだ。伸びをしながら駅の北側に出る。
まずは昼飯だけど、松江城に向かえば何かあるでしょって考えで歩き始めた。特急の中で島根の名物を検索し忘れたので、もう美味しければそれでヨシとしよう。
宍道湖が流入する幅の広い大橋川沿いに鰻屋があった。国産のうなぎで、湖の近く……。
引き戸を開けて入る。人数の多い団体さんが帰ってから席に着き、うなぎ特上を注文した。夕食というか夜食については無料になると思うので、昼食に飯代を全振り出来るのだ。
特上は1尾丸ごとだった。さらに肝吸いも付いていてうなぎ三昧だ。無論ウマイに決まっている。頭もついていたけど骨がある部分は食べず、って当たり前か。これで島根の名物料理は食べることがなくなったけど、まあいいや。
うなぎエキスで全身回復させて、さあ松江城。
……と思って歩いていると、小さな遊覧船が発着しているのを見た。近付いて何分待ちか訊いてみると、10分待ちとのこと。お堀の周りをいく「堀川めぐり」というそうな。せっかくだから乗ってみよう。
どんどん乗客がやってきて、8人が乗り込み、船は出発。寒い時期になったので「こたつ」が用意されていた。足を入れてポカポカ。
幾つかの橋の下を通る時はウィーンと屋根が下がってくるので頭を下げる。船頭さんによると、これが楽しみという客が多いらしい。ホンマかいな。
さらに船頭さんの名調子は続く。松江城がよく見えるフォトスポットを教えてくれたり、船頭の唄を口ずさんだり。現在船頭は女性も含め平均68歳らしい。73歳で定年だそうな。
希望すると1周することも可能みたいだが、松江城に行きたいので城の近くで降りた。普段経験出来ない視点から橋の下を見たり、鴨を間近で見たりと楽しく過ごせた。
そんでもって松江城。天守は国宝であり、築城は1611年とのことだ。
堀尾氏によって建造され、その後、京極氏、松平氏と藩主が変わっていった。
チケットを買い、入り口で靴を脱いで中へ入ると、古い木の匂い。うん、これは国宝だ。
歩くとギシギシ軋む。うん、以下略。
実戦用に造られたらしく、銃や弓で敵を狙うための狭間、石落とし、内部に深ぁい井戸があったり塩蔵があったり。籠城も出来る強固な防衛施設であったらしい。
天守から広大な宍道湖が見渡せる。松江の街も全て見渡せる。こりゃ攻めて来る敵はハッキリと分かっただろうな。
彦根城と同じく壁に展示などは無い。その代わり近くに松江歴史館があり、そちらで城の歴史や藩主たちのことを紹介しているようだ。後でいってみよう。
国宝の内部を目に焼き付けて城を出る。チケットは小泉八雲記念館と武家屋敷の共通券にしたから、そちらにも行こう。あれ? 時間あるかな。
ササッと城を回り込んで北へ。幾つかの神社に詣ったが書き切れないので割愛するぅ。
小泉八雲記念館は、いわずもがなの「怪談」で有名な小泉八雲の功績を紹介する場所だ。僕はこの人が日本に来てからのことしか知らなかったので、その生涯を説明した壁の掲示に魅入っていた。写真に映るとき不自然に左を向いていたのは、若い頃に左眼を失明したからだったのか。
この場所はもっと時間をかけて観たかった。だけどあと2つ回らなきゃなので、一通りザッと眺める。松江出身の佐野史郎氏が朗読した怪談を聴けるコーナーもあって、1つだけ聴いたけど、やっぱり小泉八雲の怪談はシンプルで良い。怖いというよりも家族愛とか命について考えさせられる話が多いように思う。
入り口近くで流れている八雲の生涯をダイジェストにて描いた動画も観て、館を出た。
すぐ近くにある武家屋敷にも寄った。古い設計で復元された庭園つきの家で、そのうち明治時代の小説を書きたい僕にとっては良い資料になる。しっかりと景色や屋敷の内装を頭に入れて、退出。
やばいぞあと1時間しかない。松江歴史館は近いけど歩いて5分くらいだ。早足で歩き3分程度で到着。
特別展示をススゥーッと眺めていると、大きな漆器を作る動画が流れており、そこで10分程度の足止めをくらった。いや観なきゃいいんだけど面白かったんですよ。
常設展示、松江城や松江の街の歴史について観覧する。
ああ、ここを最初に観て、それから松江城に行きべきだったんだ。ぐるっと展示室を周るだけで松江城のことがすごく良く分かるようになっている。ここを先に観てたら、もっと松江城の内外を楽しめたのに……。うーむ、もう今更だけど、城を訪れる時は先に資料館的なトコに行くべきなんだなぁ。
天井に古い松江城の写真を映す装置や、城内のジオラマ、建造にあたって当時作られた模型など、松江城の魅力や内部の工夫された構造がしっかりと紹介されていた。くぅ~。
閉館ギリギリまで粘って退館。ここ、スゴクイイ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大橋川に架かる松江大橋を歩く。宍道湖の方向を眺めると、鮮やかな夕焼け。空は橙色と水色のグラデーションで描かれている。描かれているっていう表現が一番しっくりくるほど、まるで絵画のようなその風景をパシャリと撮って、満足してホテルへ。
本日泊まるのは、どこの地域でも素晴らしいサービスを提供してくれるホテルチェーンだ。明日が月曜日とあってお安くなっていたため、ここに決めた。
部屋に入って驚く。ミニコンポがある! Bluetoothも使えるようだ。ミスチル聴こ! あ、風呂にテレビがある! なんか風呂に浮かべる用のアヒルのオモチャがある! 冷蔵庫にゼリーが入ってる!
風呂にお湯を溜め、アヒルを浮かべて浸かりながら思う。やはりすごいホテルだ。ベッドはふかふかだしテーブルは広い。何の文句も無い。
コインランドリーは洗濯機が無料、乾燥機は有料。台数が多いから洗濯難民になることはない。外のコインランドリーより圧倒的に安いのでありがたく服の洗濯・乾燥をする。
21時半からは「夜鳴きそば」というハーフサイズのラーメンが無料で提供される。1階のラウンジで1杯ズズッと啜り、部屋へ戻ってビールを飲んだ。
明日は鳥取。この旅で訪れる最後の場所。
朝食バイキングを済ませ、お腹いっぱいでホテルを出て、山口駅まで40分かけ歩いていた。
あー、結構時間かかったなぁと思ったら、なんと山口駅ではなくその1駅先の上山口駅まで歩いていたのだ。ワッハッハ。
そんなわけで僕は走る。あと20分で特急が出発してしまう。3時間半も乗るのだから、なんとしても指定席券をゲットしたい。
線路に沿って爆走したら、7分で山口駅に着いた。日頃のランニングの成果が出たじゃねぇか。
長い区間を乗るから、その間の一区間でも席に座る人がいればその席は取れない。よって選択肢は限られるものの、進行方向に対して左側の海が見える座席を確保できたワーイ。
今日は山口駅に駅員さんが2人もいた。昨日はなんだったんだろう。午前中だけ配置されているとか? そしてその2人の会話がまたホンワカしていて。やっぱりこの町、まったりしててけっこう好きかも。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特急の窓から眺める山々も、田園もとても美しかった。
途中の益田駅で、寝台特急の瑞風を見た。重厚な深緑の列車に、外からでも分かる豪華な内装。走る高級ホテルってやつだ。気になってネットで調べると、かなり先の予約、しかもツアーでしか乗ることが出来ないみたい。そういう旅もあるんだなぁ。
そしてさらに特急は進み続け、日本海が目の前に現れた。今日も海はざんざんと岩礁を勢い良く削り取ろうとしている。元気いっぱいだ。
波がザッパァーン! ザッパァーン……。
砂浜に打ち寄せる白波の向こうには、よく晴れた空の色を濃く映す沖合い。そういえばどこかで、潮の流れが速いほど海の色は濃く深くなるんだと聞いた。だとしたらあの沖合いは相当流れが速いのだろう。
なんで移動するだけでこんな字数を使っているのか。まだ松江まで2時間もあるんですよぉ。ペットボトルのコーヒーも空になって、もう飲むものがないんですよぉ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて松江。駅に降りると足がカチコチだ。伸びをしながら駅の北側に出る。
まずは昼飯だけど、松江城に向かえば何かあるでしょって考えで歩き始めた。特急の中で島根の名物を検索し忘れたので、もう美味しければそれでヨシとしよう。
宍道湖が流入する幅の広い大橋川沿いに鰻屋があった。国産のうなぎで、湖の近く……。
引き戸を開けて入る。人数の多い団体さんが帰ってから席に着き、うなぎ特上を注文した。夕食というか夜食については無料になると思うので、昼食に飯代を全振り出来るのだ。
特上は1尾丸ごとだった。さらに肝吸いも付いていてうなぎ三昧だ。無論ウマイに決まっている。頭もついていたけど骨がある部分は食べず、って当たり前か。これで島根の名物料理は食べることがなくなったけど、まあいいや。
うなぎエキスで全身回復させて、さあ松江城。
……と思って歩いていると、小さな遊覧船が発着しているのを見た。近付いて何分待ちか訊いてみると、10分待ちとのこと。お堀の周りをいく「堀川めぐり」というそうな。せっかくだから乗ってみよう。
どんどん乗客がやってきて、8人が乗り込み、船は出発。寒い時期になったので「こたつ」が用意されていた。足を入れてポカポカ。
幾つかの橋の下を通る時はウィーンと屋根が下がってくるので頭を下げる。船頭さんによると、これが楽しみという客が多いらしい。ホンマかいな。
さらに船頭さんの名調子は続く。松江城がよく見えるフォトスポットを教えてくれたり、船頭の唄を口ずさんだり。現在船頭は女性も含め平均68歳らしい。73歳で定年だそうな。
希望すると1周することも可能みたいだが、松江城に行きたいので城の近くで降りた。普段経験出来ない視点から橋の下を見たり、鴨を間近で見たりと楽しく過ごせた。
そんでもって松江城。天守は国宝であり、築城は1611年とのことだ。
堀尾氏によって建造され、その後、京極氏、松平氏と藩主が変わっていった。
チケットを買い、入り口で靴を脱いで中へ入ると、古い木の匂い。うん、これは国宝だ。
歩くとギシギシ軋む。うん、以下略。
実戦用に造られたらしく、銃や弓で敵を狙うための狭間、石落とし、内部に深ぁい井戸があったり塩蔵があったり。籠城も出来る強固な防衛施設であったらしい。
天守から広大な宍道湖が見渡せる。松江の街も全て見渡せる。こりゃ攻めて来る敵はハッキリと分かっただろうな。
彦根城と同じく壁に展示などは無い。その代わり近くに松江歴史館があり、そちらで城の歴史や藩主たちのことを紹介しているようだ。後でいってみよう。
国宝の内部を目に焼き付けて城を出る。チケットは小泉八雲記念館と武家屋敷の共通券にしたから、そちらにも行こう。あれ? 時間あるかな。
ササッと城を回り込んで北へ。幾つかの神社に詣ったが書き切れないので割愛するぅ。
小泉八雲記念館は、いわずもがなの「怪談」で有名な小泉八雲の功績を紹介する場所だ。僕はこの人が日本に来てからのことしか知らなかったので、その生涯を説明した壁の掲示に魅入っていた。写真に映るとき不自然に左を向いていたのは、若い頃に左眼を失明したからだったのか。
この場所はもっと時間をかけて観たかった。だけどあと2つ回らなきゃなので、一通りザッと眺める。松江出身の佐野史郎氏が朗読した怪談を聴けるコーナーもあって、1つだけ聴いたけど、やっぱり小泉八雲の怪談はシンプルで良い。怖いというよりも家族愛とか命について考えさせられる話が多いように思う。
入り口近くで流れている八雲の生涯をダイジェストにて描いた動画も観て、館を出た。
すぐ近くにある武家屋敷にも寄った。古い設計で復元された庭園つきの家で、そのうち明治時代の小説を書きたい僕にとっては良い資料になる。しっかりと景色や屋敷の内装を頭に入れて、退出。
やばいぞあと1時間しかない。松江歴史館は近いけど歩いて5分くらいだ。早足で歩き3分程度で到着。
特別展示をススゥーッと眺めていると、大きな漆器を作る動画が流れており、そこで10分程度の足止めをくらった。いや観なきゃいいんだけど面白かったんですよ。
常設展示、松江城や松江の街の歴史について観覧する。
ああ、ここを最初に観て、それから松江城に行きべきだったんだ。ぐるっと展示室を周るだけで松江城のことがすごく良く分かるようになっている。ここを先に観てたら、もっと松江城の内外を楽しめたのに……。うーむ、もう今更だけど、城を訪れる時は先に資料館的なトコに行くべきなんだなぁ。
天井に古い松江城の写真を映す装置や、城内のジオラマ、建造にあたって当時作られた模型など、松江城の魅力や内部の工夫された構造がしっかりと紹介されていた。くぅ~。
閉館ギリギリまで粘って退館。ここ、スゴクイイ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大橋川に架かる松江大橋を歩く。宍道湖の方向を眺めると、鮮やかな夕焼け。空は橙色と水色のグラデーションで描かれている。描かれているっていう表現が一番しっくりくるほど、まるで絵画のようなその風景をパシャリと撮って、満足してホテルへ。
本日泊まるのは、どこの地域でも素晴らしいサービスを提供してくれるホテルチェーンだ。明日が月曜日とあってお安くなっていたため、ここに決めた。
部屋に入って驚く。ミニコンポがある! Bluetoothも使えるようだ。ミスチル聴こ! あ、風呂にテレビがある! なんか風呂に浮かべる用のアヒルのオモチャがある! 冷蔵庫にゼリーが入ってる!
風呂にお湯を溜め、アヒルを浮かべて浸かりながら思う。やはりすごいホテルだ。ベッドはふかふかだしテーブルは広い。何の文句も無い。
コインランドリーは洗濯機が無料、乾燥機は有料。台数が多いから洗濯難民になることはない。外のコインランドリーより圧倒的に安いのでありがたく服の洗濯・乾燥をする。
21時半からは「夜鳴きそば」というハーフサイズのラーメンが無料で提供される。1階のラウンジで1杯ズズッと啜り、部屋へ戻ってビールを飲んだ。
明日は鳥取。この旅で訪れる最後の場所。
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