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九州 編(2023年9月)

第12話 博多にて、もつ鍋を喰らう

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 9月も中旬を過ぎて、陽の昇り始める時間が遅くなってきた。
 まだ目覚めていないかのような仄暗ほのぐらいホームタウンの道を歩き、電車に乗る。体調はあまり良くない。起床が早すぎたからだろうか。

 そして朝早く、博多行きの新幹線に乗った。

 相変わらず旅に出る時は天気が悪い。雨の函館のようにずぶ濡れにならないことを祈るばかりだ。

 今回は九州をぐるっとまわって帰る予定で、前回の反省を生かし、ある程度下調べをした。けれど、いわゆる観光スポットが密集しているわけではないから、たくさん観て回ることは出来ないと覚悟している。
 多分、1日1県。名物のグルメを堪能したり、代表的な観光名所を観たりして、ササッと周遊することになるだろう。訪れることが出来ない場所は、いずれ、また……、機会があれば。

  新幹線は相変わらずの猛スピードで景色を走り抜けていく。平日の朝で自由席もかなりいている。窓際の席に着いて風景を眺めていたものの、トンネルの多さに閉口して小説でも書いて過ごすことにした。

 博多が近付いてきたあたりで、今日の宿を予約していないことに気付く。トンネルを通るたびに電波状況が悪くなり、ホテルの検索に手間取る。
 初日は安めのホテルに宿泊し、週末となる翌日以降の高いホテル代に備えることにした。週末は下手すると4、5千円くらい高くなるんですよね。

 ホテルを予約した頃にはもう、新幹線は北九州をひた走っていた。
 あっという間、外の街並みを眺めているうちに博多へと着いてしまった。

 九州に来たことはあるけど博多の街は初めてで、どんなもんだと思いとりあえず駅をぐるっと一周してみた。うーん、都会。ホテルとオフィス、百貨店などがあって、多分少し歩けば飲食店がたくさんあるのだろう。

 ごきゅるると景気の良い音を鳴らしたのは、僕のお腹。

 博多に着いたら絶対、もつ鍋を食べようと思っていた。北海道で食べたウニのように、きっとここのもつ鍋は本物の味がするのだろう。

 チェーン店でもいいやと、ウロウロしているうちに見つけた店へ入る。そしてメニューを確認、馬肉のユッケと明太子も堪能たんのうできるセットを注文した。

 もつ鍋はキャベツとニラ、豆腐にごぼう、あと多分にんにくが入っている。グツグツと茹でられ、キャベツが味噌スープを吸収していく。スープの中には牛の小腸が入っていて、これもスープの旨みを取り込んで、もつとして調理されていく。

 鍋が煮込まれるのを、ユッケと明太子などを食べながら待つ。5分くらい経過して、野菜がひたひたになったら小皿に取り分けて、フーフーして喰らう。

 ありがとうございます、美味うまいです。

 鍋に手を出した途端、もつワールドに取り込まれてしまった僕の手はとどまることを知らない。色んな具材のエキスが染み込んだスープも絶品だ。汗をかきながら手を動かし続け、胃の中に幸せを取り込んでいく。

 〆のちゃんぽん麺を、すっかり具材の無くなった鍋へ投入してスープをひと煮立ちさせる。もうお腹はいっぱいだけど、夕食を削ってでもこの麺とスープを我が体に取り込みたかった。
 最後の麺を食べ終えた時、僕のお腹はパンパンで、動くのも億劫おっくうなほどであった。

 しかしながら、今日は福岡市動植物園へ行く予定があるのだ。

 僕は膨れたお腹をさすりながら地下鉄へ向かった。
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