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第16話 いかにも続きそうな感じ

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 キャビンのフレームが若干曲がり、フロントガラスもドアガラスもバキバキに割れたパッカー車を走らせるヨシハル。隣にはカガミとタスクが座っている。

「……というわけだ」
「いやいやいや、端折はしょり過ぎでしょ。それじゃ何にも分かんないから」
「ふむ……、作者が最終回は短めにしたいと」

 言ってない言ってない。はい、改めてカガミさんどうぞ。

「ハッチもタスクも私の仲間だった。息子のオウジを監視させていたのだ。生命体のタマゴを身体に取り込んだあと、体質によっては突然成長が進み渡来者エトランゼに取り込まれてしまう者もいるのでね。息子たちには生存者を集める仕事を与えた。……それはあまり上手くいかなかったな」
「さっき、ミドリさんが実験前に逃げたって言ってましたね。なんの実験ですか?」
「彼女は自ら被験者テスターになることを望んだ。確か、大切な人に守られた命だからどうしても生き延びたいと言っていたな。生命体を取り込んでからしばらくは特に問題なかった。だがある朝からカプセルを飲んでも成長が止まらなくなった。それで彼女が渡来者エトランゼに取り込まれる前に、実験としてタマゴを身体から取り出したいと伝えた。取り出してすぐに別の生命体を取り込ませることで感染者アンデッドにならず助けられるかも知れなかった。いったんは承諾してくれたのに、怖くなったのかパニックになったのか翌朝カプセルを盗んでどこかへ消えてしまった、というわけだ。ほら長くなった」
「まぁ……嘘ではなさそうだし、僕は一応信じておきますよ。でもリキは信じないでしょうね」
「信じようが信じまいが、このリセットされた世界で生きていくしかないんだ。我々は渡来者エトランゼとともに生きるための道を探す。君たちは君たちで、この世界にいるかどうかも分からん同じワクチンの接種者を探すしかないだろう」
「……どうなんでしょう。この世界で命をつないでいく意味なんてあるんですかね」
「意味なんてものを考えるのが人間の悪い部分だ。生命せいめいは単細胞生物だった頃から、理由など考えずただ生きて分裂や生殖を繰り返してきた。地球は守られたのだから、我々もあとはただ生きて、次の世代に命を繋いでいけばいいのだよ。そこに意味なんてらないはずだ」
「ふーん……。やっぱりキングとリキは納得しないだろうなぁ。カガミさんの言ってる『地球を守った』っていうのがどうもね……。あ、着きましたぜ。なんかあそこで爆笑してるな」

 ヨシハルはパッカー車を停め、バキバキに壊れたドアを蹴り飛ばして車を降りた。電波塔の近くの平屋ひらやてコンビニの屋上でミチオとハッチが大笑いしながら話しており、リキはそのふたりを険しい表情で眺めているという構図だ。

 フラフラと近付いて来るゾンビを、タスクがバールのようなもので押し倒す。さらに追撃でゾンビの頭を粉砕する。

「先生はハッチにカプセルを渡してやってください。え、っと。ヨシハルさんでしたっけ。この辺の感染者アンデッドを倒しておきませんか」
「じゃあ、僕もコレ使ってみようかな」

 ヨシハルはパッカー車側面の道具入れから大五郎だいごろうを取り出す。

「おっ、カッコイイ武器持ってるじゃないですか。あとで貸してくださいよ」
「いいですぜ。さ、どんどんやりましょう!」

 ふたりは大群で押し寄せてくるゾンビに向かって元気良く走り出した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 カガミはハシゴをのぼりコンビニの屋上へ。まだミチオとハッチは笑いながら話し込んでいる。

「ハッチ、楽しそうだな。何の話をしてるんだ」
「聞いてくださいよせんせェ。あたしがカプセルを載せた車で事故った相手、キングだったんでスよ。どォりでどっかで見たことあると思った、キャハハッ」
「オイラは全然記憶にないけどな、ガハハ!」

 何が面白いのかサッパリ分からない。まあいいや。

「ハッチ、カプセルだ。研究所の金庫の中にあったものを全部持ってきたが1か月分しかなかったよ。しばらくちからは使わないように」

 手渡されたカプセルを口に含んで噛み砕くと、ハッチのシャツの裾からはみ出ていた紫色のコブがスゥーッと縮んでいった。

「分かりましたッス。なんかキングがしばらく用心棒してくれるって」

 カガミはリキを見る。その視線に気付いたリキは、ひとつ溜息をいて諦め顔で話す。

「ハッチに色々聞いたよ。カガミさんのことはまだ信用し切れねぇが、もう殴るのはやめた。アンタらはこれから軍事基地に行くんだろ」
「そうだ。研究所のカプセル製造装置が跡形もなく破壊されてしまったからな。軍事基地と言っても所詮しょせんは民間の組織だから小さいモンだが、以前作った製造装置はおそらく残っているだろう」
「港を飛んでたヘリコプターは、その組織が飛ばしてたのか?」

 カガミは首をかしげる。

「ヘリコプター? 組織はシェルターにのがれているだろう。ヘリなんて飛ばす余裕はないはずだ」
「おいおい、最終回に風呂敷広げてどうすんだ」
「そんなこと言われても、知らんモンは知らん。ちなみにあの馬鹿デカイ恐竜みたいなのも知らんぞ」

 リキはガックリと項垂うなだれる。どうやらスッキリ終わることは出来なさそうだ。
 キングことミチオが、リキの肩をポンと叩く。

「いいじゃん、今すぐ全部解決しなくてもさ。どうせ『2』があるよ」

 ……えっ?

「エッ、ないの?」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 リキが平屋建てコンビニの屋上から周囲を見廻みまわして言う。

「とにかく、車を探さないとな。6人が乗れるっていうと、バンタイプかな」

 カガミが意外そうな顔をしてたずねる。

「一緒に行ってくれるのか? 我々は人間の世界を崩壊させたんだぞ」
「ミチオが行くってんならヨシハルもついて行くだろ。俺は寂しがり屋さんでね、ひとりになるのが嫌なんだよ」

 ミチオがヨシハルとタスクの戦いっぷりを眺めて言う。

「あれじゃあ夜までにこのあたりのゾンビを倒し切るのは無理だな。オイラも参戦してくるよ」
「じゃあ、あたしも行くッス。ちからを使わなきゃいいんスよね」

 ふたりはあっという間にハシゴをりてパッカー車から武器を持ち出し、ヨシハルたちに合流した。
 ミチオは左手に角材、右手にタスクから受け取った大五郎を持ちゾンビを粉砕していく。ハッチも鉄パイプで果敢かかんにゾンビの頭を潰す。ふたりともみずうおのような表情を見せる。っからの戦闘好きなのだろう。

「で、カガミさん。アンタはここで高みの見物でもしてるかい?」
「いや、私も行こう。こう見えても剣道四段だぞ」
「いいじゃん。車に黒檀こくたんでできた木刀があったはずだぜ」

 リキとカガミのふたりもりて武器を取り戦いへと向かう。

 こうして、男五匹と女一匹の珍道中は幕をけたのである。

 〈了〉
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