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第2章 光と闇
第41話 黒い獣
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巨躯を揺らしながら、神獣は咆哮を上げる。
おれは旅商人と共に、森深くの遺跡に退避する。遺跡の高い階層まで駆け上がると、森の全体を見渡すことができた。
おれ達は間近で神獣と黒い獣の戦いを見届ける。黒い獣は陽光を吸い取るが如く、近くにいても輪郭しか確認できない。その姿は深い森の木々よりも遥かに大きく、狼に竜に似た尾が付いた様な形状に見える。
木を巻き上げて編み込まれた様な体と獅子の頭を持つ白い神獣は、黒い獣よりもさらにひと回り大きい。
咆哮を上げた神獣に、黒い獣が襲いかかる。大きく口を開き、黒い牙が神獣の頭を狙う。
神獣は前脚を高く上げ、黒い獣の頭を薙ぎ払う。横倒しになった黒い獣の輪郭は森の木々を巻き添えにし土煙を上げ、轟音が森中に響き渡る。
体制を立て直した黒い輪郭は、何度も神獣に猛進する。神獣は、まるでこの遺跡を守るように戦い、自ら手を出そうとはしない。
「あれじゃ勝てませんな」
旅商人が言う。遺跡の下には荷馬車を待たせている。
各地の神殿を訪れ、希望の言葉で神獣の力を強くしてきたつもりだったが、そもそも神獣には戦う理由が無いということなのか。
守るだけでは戦いには勝てない。黒い獣に喰い憑かれるたび、神獣は巨躯を捻り振り払う。森が、黒い獣の体で抉り削られていく。
おれは神獣達の戦いがどのような終結を迎えるのか確認したい。噂では、散々暴れ回った挙句、どちらも何処かへと消えてしまうという。
目前で繰り広げられる圧倒的な破壊に、おれは神獣達の戦争で大陸そのものが消えてしまうのでは、そうでなくても、壊滅してしまうのではと思い始めていた。
ついに黒い牙が神獣の体に深い傷を与えた。神獣は森全体を震わせる程の鋭い悲鳴を上げる。
いつか闘技場でジカアイの放った言葉が胸をよぎる。
「最後は決着をつけないといけないですよね」
おれが古の力を全て解放したら、今この場所で黒い獣に抗うことはできるのだろうか。それとも、簡単に押し潰されてしまうのだろうか。
鈍い大きな音で、おれの意識は森の光景に戻った。
まるでおれの迷いを振り払うかのように、黒い獣が吹き飛ばされる。
突然割って入った大きな影を見遣る。岩と大木がめちゃくちゃに組み合わさって造られた山の如く大きな魔物。
トカゲの様な形をした頭の上には、シイラが猛り顔で立つ。
「こんなやつ、アタイ達の敵じゃねぇ!」
おれは旅商人と共に、森深くの遺跡に退避する。遺跡の高い階層まで駆け上がると、森の全体を見渡すことができた。
おれ達は間近で神獣と黒い獣の戦いを見届ける。黒い獣は陽光を吸い取るが如く、近くにいても輪郭しか確認できない。その姿は深い森の木々よりも遥かに大きく、狼に竜に似た尾が付いた様な形状に見える。
木を巻き上げて編み込まれた様な体と獅子の頭を持つ白い神獣は、黒い獣よりもさらにひと回り大きい。
咆哮を上げた神獣に、黒い獣が襲いかかる。大きく口を開き、黒い牙が神獣の頭を狙う。
神獣は前脚を高く上げ、黒い獣の頭を薙ぎ払う。横倒しになった黒い獣の輪郭は森の木々を巻き添えにし土煙を上げ、轟音が森中に響き渡る。
体制を立て直した黒い輪郭は、何度も神獣に猛進する。神獣は、まるでこの遺跡を守るように戦い、自ら手を出そうとはしない。
「あれじゃ勝てませんな」
旅商人が言う。遺跡の下には荷馬車を待たせている。
各地の神殿を訪れ、希望の言葉で神獣の力を強くしてきたつもりだったが、そもそも神獣には戦う理由が無いということなのか。
守るだけでは戦いには勝てない。黒い獣に喰い憑かれるたび、神獣は巨躯を捻り振り払う。森が、黒い獣の体で抉り削られていく。
おれは神獣達の戦いがどのような終結を迎えるのか確認したい。噂では、散々暴れ回った挙句、どちらも何処かへと消えてしまうという。
目前で繰り広げられる圧倒的な破壊に、おれは神獣達の戦争で大陸そのものが消えてしまうのでは、そうでなくても、壊滅してしまうのではと思い始めていた。
ついに黒い牙が神獣の体に深い傷を与えた。神獣は森全体を震わせる程の鋭い悲鳴を上げる。
いつか闘技場でジカアイの放った言葉が胸をよぎる。
「最後は決着をつけないといけないですよね」
おれが古の力を全て解放したら、今この場所で黒い獣に抗うことはできるのだろうか。それとも、簡単に押し潰されてしまうのだろうか。
鈍い大きな音で、おれの意識は森の光景に戻った。
まるでおれの迷いを振り払うかのように、黒い獣が吹き飛ばされる。
突然割って入った大きな影を見遣る。岩と大木がめちゃくちゃに組み合わさって造られた山の如く大きな魔物。
トカゲの様な形をした頭の上には、シイラが猛り顔で立つ。
「こんなやつ、アタイ達の敵じゃねぇ!」
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