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第1章 血宵の戦士
第16話 森の中
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フォリアートは深い森に囲まれ、木造の家が建ち並ぶ小さな街だ。一見ではどこにでもある田舎街だが、周囲にたくさんの精霊がおり、多くの魔道士を輩出しているそうだ。
おれとリリシアは街に到着するとにわかに、火属性の精霊と契約した魔道士を探し始めた。陽が高く昇る刻から、おれは食堂や交易所を訪ねて、魔道士の紹介をしてくれる機関があるか聞いて廻った。
おれの方の成果は無かったが、リリシアが、個人で魔道士との仲介をするという男を連れてきた。
「火の精霊と契約している魔道士はあまりいないがね、心当たりはあるから、少し時間をくれたら何人か紹介できると思うよ」
彼女が北の極地へ行くことを伝えたかどうか分からないが、説得して一人でも乗り気になってくれれば大成功だ。
果たして今日は早々にやることが無くなってしまった。それで街を散策していると、宿の表に貼り出された掲示を見つけた。
<一角獣の角求む 1銀貨 ユーシュテルの魔法雑貨店>
一角獣は森の奥、人が立ち入らないような場所に棲息する魔物だ。その角は折れても幾月か経つと元通りになる。角自体が再生の力を持っているため、薬や魔道具の原料になっている。
リリシアは掲示に興味を示す。
「ねぇ、まだ時間はあるから、一角獣の角を採りに行こうよ」
生え変わりで捨てられた古い角が落ちているかもしれない、ということだろうか。まさか無理矢理、角をへし折って持ち帰ろうとしていないよなと不安になりつつ、彼女に連れられて森の中へと入って行った。
陽の光が森の木々に遮られ、昼間なのに随分と暗い獣道を進む。街から離れ、少し疲れる程度に歩いたので、辺りに精霊か魔物か、人ならざる気配を感じ始めていた。
おれは警戒しながら、彼女の後を追うように歩く。足元が少しぬかるんでいて、足音がピチャピチャと周囲に響く。
「2体、茂みの中に潜んでいるみたいね」
立ち止まりしな、リリシアが声を顰めて言う。
「一角獣か?」
おれの言葉が耳に入らないくらい、集中して気配を探っている様子だ。
しばらくおれ達も茂みの2体も動きを止め、互いの出方を待つ。
そして、相手が先に動いた。
ゆっくりと現れた魔物を見て、おれは自分の足がすくむのを感じた。
それは、半人半馬だった。馬の速さで動き、人と同じくらいの知性を持っている、できれば手合わせしたくない相手だ。
まだ距離はあるものの、おそらくはおれよりもふた回りくらい大きい様に見える。
魔物達はおれ達に気付いているはずだが、脅威ではないと感じたのだろうか、そのまま森のさらに奥の闇へと姿を溶かした。
「流石に、半人半馬のつがいを同時に相手するのは無理ね」
リリシアはどこかの赤い気狂い男とは違い、好戦的ではなかったようだ。
「あんな魔物がいるということは、一角獣もこの辺りに棲んでいそうだな」
知性があればあるほど自ら人に近寄るようなことはしないので、魔物が人の気配を感じられる場所に棲息することは少ない。半人半馬と一角獣はどちらも言葉を発することができないものの、人の言葉を少しだけ理解するらしい。似たような知性を持っているということは、同じような場所に棲息しているとおれは考えた。
彼女は道端を見渡しながら呟く。
「一角獣の角が落ちてないかしら」
どうやら無理矢理に角を奪い取ることはしないようで安心した。それならばと、おれはできるだけ協力して茂みの中を探したり、大きな木に登って何処かの枝に引っ掛かっていないか確認した。
角は見つからなかったが、木の枝に座って辺りを眺めていたところ、少し離れて小さな湖があることに気付いた。一角獣が水を飲むのであれば、普段はその湖の近くにいるのではないか。
おれは木から降りて、湖に向かい歩き出した。
おれとリリシアは街に到着するとにわかに、火属性の精霊と契約した魔道士を探し始めた。陽が高く昇る刻から、おれは食堂や交易所を訪ねて、魔道士の紹介をしてくれる機関があるか聞いて廻った。
おれの方の成果は無かったが、リリシアが、個人で魔道士との仲介をするという男を連れてきた。
「火の精霊と契約している魔道士はあまりいないがね、心当たりはあるから、少し時間をくれたら何人か紹介できると思うよ」
彼女が北の極地へ行くことを伝えたかどうか分からないが、説得して一人でも乗り気になってくれれば大成功だ。
果たして今日は早々にやることが無くなってしまった。それで街を散策していると、宿の表に貼り出された掲示を見つけた。
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一角獣は森の奥、人が立ち入らないような場所に棲息する魔物だ。その角は折れても幾月か経つと元通りになる。角自体が再生の力を持っているため、薬や魔道具の原料になっている。
リリシアは掲示に興味を示す。
「ねぇ、まだ時間はあるから、一角獣の角を採りに行こうよ」
生え変わりで捨てられた古い角が落ちているかもしれない、ということだろうか。まさか無理矢理、角をへし折って持ち帰ろうとしていないよなと不安になりつつ、彼女に連れられて森の中へと入って行った。
陽の光が森の木々に遮られ、昼間なのに随分と暗い獣道を進む。街から離れ、少し疲れる程度に歩いたので、辺りに精霊か魔物か、人ならざる気配を感じ始めていた。
おれは警戒しながら、彼女の後を追うように歩く。足元が少しぬかるんでいて、足音がピチャピチャと周囲に響く。
「2体、茂みの中に潜んでいるみたいね」
立ち止まりしな、リリシアが声を顰めて言う。
「一角獣か?」
おれの言葉が耳に入らないくらい、集中して気配を探っている様子だ。
しばらくおれ達も茂みの2体も動きを止め、互いの出方を待つ。
そして、相手が先に動いた。
ゆっくりと現れた魔物を見て、おれは自分の足がすくむのを感じた。
それは、半人半馬だった。馬の速さで動き、人と同じくらいの知性を持っている、できれば手合わせしたくない相手だ。
まだ距離はあるものの、おそらくはおれよりもふた回りくらい大きい様に見える。
魔物達はおれ達に気付いているはずだが、脅威ではないと感じたのだろうか、そのまま森のさらに奥の闇へと姿を溶かした。
「流石に、半人半馬のつがいを同時に相手するのは無理ね」
リリシアはどこかの赤い気狂い男とは違い、好戦的ではなかったようだ。
「あんな魔物がいるということは、一角獣もこの辺りに棲んでいそうだな」
知性があればあるほど自ら人に近寄るようなことはしないので、魔物が人の気配を感じられる場所に棲息することは少ない。半人半馬と一角獣はどちらも言葉を発することができないものの、人の言葉を少しだけ理解するらしい。似たような知性を持っているということは、同じような場所に棲息しているとおれは考えた。
彼女は道端を見渡しながら呟く。
「一角獣の角が落ちてないかしら」
どうやら無理矢理に角を奪い取ることはしないようで安心した。それならばと、おれはできるだけ協力して茂みの中を探したり、大きな木に登って何処かの枝に引っ掛かっていないか確認した。
角は見つからなかったが、木の枝に座って辺りを眺めていたところ、少し離れて小さな湖があることに気付いた。一角獣が水を飲むのであれば、普段はその湖の近くにいるのではないか。
おれは木から降りて、湖に向かい歩き出した。
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