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第11話 くだらない理由
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「ミイナ先輩、ウチの姉の動画が50回も再生されてますよ」
「あれ? もう3つもアップしてたんだ。しかも最新のは昨日の夜だねぇ」
麗は首を傾げて、怪訝な顔をした。
「お姉ちゃん、今日から定期テストのはずなんですけど。これでちゃんと高得点を取っちゃうんだから、腹が立ちますよ」
「それは誇るところだと思うけど。ホントに予習と復習だけで学年3位ならすごいじゃないの。あの佐久羅高だよ?」
「まぁそうですけど……。わたしにも少しは賢さを残して欲しかったです」
「フフ。また言ってる」
ミイナは笑いながら、投稿された動画を再生する。
「おっ。ちゃんとキャラクターが動いてる。口パクもなんだか不自然だけど出来てるね」
一子が声をアテレコしていて、それに合わせて字幕も表示。内容は最初にアップした動画の路線を継続していて、最初にゲームの再生画面、次に開発中の画面を映して解説している。
「ここまでは撮影してた分だね。あっ、そうそう、それで思い出した」
ミイナは打って変わって真剣な表情で麗を見つめた。
「今のシステムだと、あんまり面白くないと思うんだ。もうひとつ尖った何かを付け足したいな」
「尖った……。1分ごとのランダムイベントを残して、もっと奇抜なシステムを考えるってことですか」
「その1分ごとっていうのも考え直したいんだけど。尖ったシステムは、思いついたらでも大丈夫。もし間に合わなかったら次のゲームに流用するからさ」
麗は少しホッとしたような、そして少し困ったような顔をして窓の外を見た。今にも泣き出しそうな曇り空。
「……考えてみます。でも、姉のテストが終わったら、まず仕様書を完成させないと」
「そうだね、仕様書はお願い。ノートに書き込んでもらったイベント案は、出来そうなのから実装してるよ。ほら」
ディスプレイを覗き、麗は驚く。いつの間にかランダムイベントの種類が30を超えていた。
「すごい。雷で画面が真っ白になるのとか、回復アイテムが大量に出てくるのも実装してもらえたんですね」
「イベントが増えるほど難易度の調整が難しくなるから、それを踏まえてステージのデザインもよろしくゥ!」
「あー、やっぱりそうなりますか、そうですよね。頑張ります……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家に帰ると、ミイナのスマホに輝羅からのメッセージが届いていた。
『8月は勉強に集中したいから、遊びに行くなら夏休みに入ってすぐがいいなー』
自分の部屋に入りカバンを床に置いて、椅子に腰掛けひと息つく。日曜日、一子に追い回されて、結局その場で輝羅へ遊びのお誘いメッセージを送ることになった。それから数日経って返事があったのだ。
ミイナは椅子に背を預けて天井を仰ぐ。
「どこに行こうかなぁ……」
皆が楽しめて、日帰り出来るトコロ。文芸部員に聞いたら、きっと全員が違う意見になるんだろう。だったら自分で決めてしまおうとミイナは心に決めていた。
風呂から上がって夕食後、パソコンで検索すると日帰りで遊べそうな観光地がたくさんヒットした。その中でも、高校生の財布で行けそうな場所をピックアップしていく。候補が5つも残って、中学の修学旅行以外で旅と言える行動をしたことがないミイナには厳しい選択だ。ちなみに11月の修学旅行は京都だそうな。
「やっぱり、誰かに相談したいな」
独り言を呟きながら、ミイナはスマホの画面に指を滑らせる。はた、と指を止めたのは、文芸部の幽霊部員その2である篠崎萌絵奈の名前の上。
メッセージを送信するとすぐに既読になってビビる。カフェオレを飲んで待っていると、しばらくして返信があった。
『それなら熱海一択。理由は聞かないでね』
メタ発言の多い人だ、きっと何かしらの理由があるのだろう。しかしながらそれを問い詰める気にはなれなかった。なんとなく察しがつくし、くだらない理由だとまた迷ってしまうから。
「よし、熱海だ。熱海にしよう」
握り拳を作って、右腕を天井へ向けて振り上げた。面倒くさい問題をやっつけたところで、さっさとゲームのプログラミングに取りかかる。ミイナは大きく息を吐いて、「よし」と気合を入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、まだテスト期間の一子は放っておいて、ミイナは麗と史緒里に旅行の話をした。
「ボクは皆に合わせるよ。お盆でなければそれほど用事も無いし」
「姉がまた天邪鬼なことを言うんなら、連れて行かなければいいんですよ。わたしは熱海、初めてなので行きたいです」
「じゃあ、ふたりはオッケーと。元々あたしがイッチーを励ますために言い出したことだから、あの子を連れて行かないと意味無いんだけどね」
あとは輝羅に希望の日にちを聞いて、全員がその日に行けるなら決定だ。一子は輝羅と一緒ならどこでも行くし、予定があっても空けるだろう。
史緒里はパソコンで地図を見ながら、ミイナに尋ねる。
「もっさん、どうして熱海なんだい? 行きたい場所があるとか、食べたいものがあるとか?」
「萌絵奈さんに聞いてみたんだよ。ほら、あの人なら作者の都合とかに詳しいじゃない。即答で熱海って返ってきたから、どうせ作者が最近旅行したとかじゃないかなぁ」
ギクッ。
そんなこんなで、夏休みは日帰りで熱海へ行くことになった文芸部。果たして、どんな困難が待ち受けているのか!
「勢いだけで終わらせたな……」
ミイナは小さな声で呟いて、ディスプレイに向かいプログラミング作業を開始した。
「あれ? もう3つもアップしてたんだ。しかも最新のは昨日の夜だねぇ」
麗は首を傾げて、怪訝な顔をした。
「お姉ちゃん、今日から定期テストのはずなんですけど。これでちゃんと高得点を取っちゃうんだから、腹が立ちますよ」
「それは誇るところだと思うけど。ホントに予習と復習だけで学年3位ならすごいじゃないの。あの佐久羅高だよ?」
「まぁそうですけど……。わたしにも少しは賢さを残して欲しかったです」
「フフ。また言ってる」
ミイナは笑いながら、投稿された動画を再生する。
「おっ。ちゃんとキャラクターが動いてる。口パクもなんだか不自然だけど出来てるね」
一子が声をアテレコしていて、それに合わせて字幕も表示。内容は最初にアップした動画の路線を継続していて、最初にゲームの再生画面、次に開発中の画面を映して解説している。
「ここまでは撮影してた分だね。あっ、そうそう、それで思い出した」
ミイナは打って変わって真剣な表情で麗を見つめた。
「今のシステムだと、あんまり面白くないと思うんだ。もうひとつ尖った何かを付け足したいな」
「尖った……。1分ごとのランダムイベントを残して、もっと奇抜なシステムを考えるってことですか」
「その1分ごとっていうのも考え直したいんだけど。尖ったシステムは、思いついたらでも大丈夫。もし間に合わなかったら次のゲームに流用するからさ」
麗は少しホッとしたような、そして少し困ったような顔をして窓の外を見た。今にも泣き出しそうな曇り空。
「……考えてみます。でも、姉のテストが終わったら、まず仕様書を完成させないと」
「そうだね、仕様書はお願い。ノートに書き込んでもらったイベント案は、出来そうなのから実装してるよ。ほら」
ディスプレイを覗き、麗は驚く。いつの間にかランダムイベントの種類が30を超えていた。
「すごい。雷で画面が真っ白になるのとか、回復アイテムが大量に出てくるのも実装してもらえたんですね」
「イベントが増えるほど難易度の調整が難しくなるから、それを踏まえてステージのデザインもよろしくゥ!」
「あー、やっぱりそうなりますか、そうですよね。頑張ります……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家に帰ると、ミイナのスマホに輝羅からのメッセージが届いていた。
『8月は勉強に集中したいから、遊びに行くなら夏休みに入ってすぐがいいなー』
自分の部屋に入りカバンを床に置いて、椅子に腰掛けひと息つく。日曜日、一子に追い回されて、結局その場で輝羅へ遊びのお誘いメッセージを送ることになった。それから数日経って返事があったのだ。
ミイナは椅子に背を預けて天井を仰ぐ。
「どこに行こうかなぁ……」
皆が楽しめて、日帰り出来るトコロ。文芸部員に聞いたら、きっと全員が違う意見になるんだろう。だったら自分で決めてしまおうとミイナは心に決めていた。
風呂から上がって夕食後、パソコンで検索すると日帰りで遊べそうな観光地がたくさんヒットした。その中でも、高校生の財布で行けそうな場所をピックアップしていく。候補が5つも残って、中学の修学旅行以外で旅と言える行動をしたことがないミイナには厳しい選択だ。ちなみに11月の修学旅行は京都だそうな。
「やっぱり、誰かに相談したいな」
独り言を呟きながら、ミイナはスマホの画面に指を滑らせる。はた、と指を止めたのは、文芸部の幽霊部員その2である篠崎萌絵奈の名前の上。
メッセージを送信するとすぐに既読になってビビる。カフェオレを飲んで待っていると、しばらくして返信があった。
『それなら熱海一択。理由は聞かないでね』
メタ発言の多い人だ、きっと何かしらの理由があるのだろう。しかしながらそれを問い詰める気にはなれなかった。なんとなく察しがつくし、くだらない理由だとまた迷ってしまうから。
「よし、熱海だ。熱海にしよう」
握り拳を作って、右腕を天井へ向けて振り上げた。面倒くさい問題をやっつけたところで、さっさとゲームのプログラミングに取りかかる。ミイナは大きく息を吐いて、「よし」と気合を入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、まだテスト期間の一子は放っておいて、ミイナは麗と史緒里に旅行の話をした。
「ボクは皆に合わせるよ。お盆でなければそれほど用事も無いし」
「姉がまた天邪鬼なことを言うんなら、連れて行かなければいいんですよ。わたしは熱海、初めてなので行きたいです」
「じゃあ、ふたりはオッケーと。元々あたしがイッチーを励ますために言い出したことだから、あの子を連れて行かないと意味無いんだけどね」
あとは輝羅に希望の日にちを聞いて、全員がその日に行けるなら決定だ。一子は輝羅と一緒ならどこでも行くし、予定があっても空けるだろう。
史緒里はパソコンで地図を見ながら、ミイナに尋ねる。
「もっさん、どうして熱海なんだい? 行きたい場所があるとか、食べたいものがあるとか?」
「萌絵奈さんに聞いてみたんだよ。ほら、あの人なら作者の都合とかに詳しいじゃない。即答で熱海って返ってきたから、どうせ作者が最近旅行したとかじゃないかなぁ」
ギクッ。
そんなこんなで、夏休みは日帰りで熱海へ行くことになった文芸部。果たして、どんな困難が待ち受けているのか!
「勢いだけで終わらせたな……」
ミイナは小さな声で呟いて、ディスプレイに向かいプログラミング作業を開始した。
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