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プロローグ
しおりを挟む『 いいかい?
この村から見て
陽が沈む方角へ少し歩いたところに、
森があるだろう?
あの森には決して入ってはいけないよ。
あの森は、
入ったら二度と出てくることは出来ない、
人喰いの森だ。 』
ーーーーーーーーーー
ガサ…ザク…ザク…
男「はぁ、はぁ…」
真っ暗な森をひとり彷徨う初老の男がいる。
背の高い木々が鬱蒼と立ち並び、頭上の星空は僅かしか見えない。
森は男の耳を態とらしく撫でるかのように、風もないのにザワリとざわめいた。
男は恐怖を唾と一緒に飲み込み、一心不乱に進んでいく。
しかし動きは法則性がなくやぶれかぶれといった感じだ。
男「はぁ…少し、休もう…はぁー…」
ちょうど良く木の麓に座れそうな大きな石があった。
そこに腰掛け一息つく男。
男(いつまでこうしていれば良いのだろうか。
見当がつかない。)
独りぼんやりとしていると家族の顔が浮かんでくる。
男「みんな…待っていてくれ…」
ぎゅっと地面を握り自分を鼓舞する。
もう少し歩こうと、か細い足で頼りなく立ち上がった。
すると
カラン…キィ…
後ろから物音がする。
男「な、なんだ?」
カラン…カラ…
咄嗟に振り向くとまた後ろから音がした。
まるでいつのまにか後ろへ回られているようだ。
静かな森に、金属を擦るような乾いた音が鳴り響く。
今度こそと振り向くと、
暗い森の中、立ち並ぶ木々に一人の人影がぼうっと大きく浮かび上がる。
どうやらランプのようなものを持っているらしい。
男「灯りだ…人がいるのか…?」
キィ。カラン…
返事をするかのようにランプの軋む音が響く。
妖しい灯りを操る不思議な影は、目深にフードを被っているようで男か女かも分からない。
灯りの主は木々の間から見え隠れしながら森の奥へ進んでいく。
暗闇にゆらゆらと浮かぶ橙色の灯りは、まるでこちらを誘っているかのようだ。
どこか暖かく優しい光に、思わずついて行きたくなる。
声を掛けようとおぼつかない足取りで歩き出すが、はたと足を止める。
男(いやいや、しかし自分はどうせ…)
立ちほうけてもやもやと考えていると、
そこへまたも
カラン…キィ。
耳につくランプの乾いた音。
橙色の灯りが誘ってくる。
灯りをじっと見つめると引き込まれるようだ。
男は少し考えたが、一歩、また一歩ゆっくりと、灯りのあとをついて行った。
その後、男を見たものは居なかった。
カラン。
朝が近づき空が白々してきた。
小鳥が起き出し、賑やかな時間を迎える頃。
灯りの主が一人森の中を歩いている。
立ち止まり、
フードを取るとそこには、
大人の男でも女でもなく、
ましてや人間でもない、
大きな角にヤギの耳を持ち、
十字の目をした
特異な見た目の
年端も行かない少年が立っていた。
つづく。
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