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 透明なほどに、綺麗な肌をしていて、それでもってキセルを悠々とくゆらして、女郎は、客の目を見つめた。茶が出る。客の人差し指は、ヤニで少し黄色くなっていた。
「ここんとこ、いまいちなニュースしか聞かないね」
「そうね、その通りだわ」
 男は、ふっと疲れて肩をすくめた。昨夜のことが思い出される。
「ぼくは君を何とか助けてやりたい」
「それには金が必要だわ」
「どれぐらい必要なんだ」
「うん千万ほど。あまり気にしないで」
「そんな莫大な金は出せないな。気持ちだけ、君を救いたい思いで、老いてくよ」男は札束が入った封筒を、そっと置いた。
 女郎は中身を見た。百は入ってる。
「こんなに?」
「まあ、気持ちだと思ってくれ」男はポケットから煙草を取り出す。
 女郎は綺麗な指で、それをそっと開く。彼女はふと、男の優しさに下心はないのかしら、と疑う。そんな邪推が、あった。
「世の中はなんで、お金なんでしょう。わたしが言うのもなんだけど」
「それはお金が便利な社会だから。いいんだ。あまり気にしないでくれ」
 そう言って、男は部屋から出ていった。
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