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東京編
オオカミと仔羊
しおりを挟む2021年12月27日(月)
今日は年内(2学期)最後の登校日。
授業はなくて、ホームルーム中に通信簿を貰い、
ホームルーム終了後班ごとに決められた場所を
掃除してから帰途につく。
「あー、あや。これから何か予定ある?」
「ううん、今日はないけど」
「じゃ嵐山茶房付き合ってよ。例の新作スイーツ
今日からお披露目だって」
「オッケー。いいよ行こ」
麻布十番商店街にある『嵐山茶房』は、
京都は宇治産の良質なお抹茶をふんだんに使った
甘味が評判の和スウィーツのお店。
カウンター席の他にテーブル席も結構あるけど、
試験後や長期休暇に入る前などお店はほとんど
満席状態になる。
「あー良かった。今日はどっちも空いてるよ」
「いらっしゃい。絢ちゃんに利沙ちゃん」
って、声をかけてくれたのはこのお店のご主人・
鷹司 忍さん。
「ラッキー! マスターもいるよ。
なら当然カウンター席じゃん」
このお店、本店は六本木にあるので店主の忍さんは
そちらにいる事の方が多い。
マスター贔屓の利沙はそそくさとカウンター席に
座った。
『なぁ忍ー、生クリームの配分こんなもんで
いいかぁ?』
と、カウンターの後方にある厨房の暖簾から
顔を出したのは各務さん。
まさかこんな所でまで顔を合わせるとは
思ってなかった利沙と私は素っ頓狂な声を出した
「「 あー、センセがどうしてここに、しかも
厨房にいるの??」」
「おー、2人揃ってお出ましか」
忍さんは各務さんが手にしてるボールの中の
抹茶クリームをひと舐めして、
「んー、こんなもんでいいと思うよ」
「了解。じゃ、仕上げに取り掛かるから」
と、各務さんはまた厨房に戻って行った。
「あー、そっか。2人とも知らなかったんだね」
「「??」」
「あいつ ―― 竜二とぼくは幼なじみで、あいつ
あれでもパティシエの資格持ってるから、時々
店の手伝いして貰ってるんだ」
「へぇぇ~ ―― 人は見かけによらないって
言うけど」
「本当だったんですねぇ……」
利沙がマスターに恋してるのと同じく、
私も……彼 ―― 各務さんの事が
好き、なのかも知れない。
自分の中で彼の存在がどんどん大きくなって
ゆく……。
「う~ん……美味しい! 最高!」
各務さんが私達の為に用意してくれたのは
2種のロールケーキ。
ひとつはこのお店の看板商品である
”手作り粒あんの抹茶ロールケーキ”
そしてもうひとつが新作スイーツ
”3種の苺のフレッシュロールケーキ”
どちらも甲乙つけがたい美味しさだった。
利沙はさっさと食べ終わると、
テーブルに自分の代金を置き立ち上がった。
「えっ ―― 何よ」
利沙は小声で、
「邪魔者は消えるよ。2人でごゆっくりどうぞ」
「利沙ちゃんも帰るの? 送って行こうか?
車で来てるから」
「ラッキー。じゃあ、お願いします」
利沙と忍さんは出ていってしまい、
店内には他のお客さんとか店員さんはいるけど、
カウンター席には各務さんと私だけ。
何となく気まずい……。
「―― で、俺は何番目なわけ?」
「えっ?」
「人からのお誘いメールはシカトかますくせして
さぁ、合コンする時間はあった訳だ」
「!! そ、それを言うなら各務さんだって ――」
私の脳裏には学校の屋上で見た
彼と神宮寺さんの姿がちらついている。
「あー?? 俺がどうしたよ」
「神宮寺さんからあんなにモーションかけられてる
のに、適当にあしらい過ぎだと思います」
「あれ~ ―― ひょっとして、ヤキモチ焼いて
くれてるぅ?」
「なっ ―― どうして私がヤキモチなんてっ」
すると各務さんはレジに立っている店員さん・
この麻布十番店のマネージャーに声をかけた。
「―― あぁ、北見さん。チェックお願いします」
「畏まりました」
「えっ、私まだ来たばかりなんだけど」
「甘いもんなら何時でも食わしてやる。けど、
嫉妬するほど惚れた男とヤる事は
もっと他にあるだろ」
「他って……」
「それを今、俺に言わせる気?」
「……」
う、うわぁぁ……各務さんってば、
いつになく攻めムード半端ないんだけど。
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