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プロローグ
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22世紀初頭 ――
首都圏の中でも人口の超過密状態になっている、
関東地方南部の東京都・埼玉・千葉・神奈川の
1都3県の『東京圏』にある歓楽街エリアは
売春と博徒が合法化され、それらについて人々に
「罪悪」であるという意識はなくなった。
80年ほど前までのここいら一帯はひどく治安の悪い
――あらゆる不法、暴虐、略奪などがまかりとおる、
東京圏いち危険な歓楽エリアだった。
『警察』という組織はあっても名前と形ばかりの
ハリボテ集団で、全く機能しておらず。
街を守るいくつかの自警団はあったものの、
その自警団そのものが裏で半グレやマフィアと
繋がっており。
観光客が安全に歩けるような場所ではとてもなかった。
事実、地方公共団体の各組織が担当する有名観光地の
収支報告は右肩下がりが止まらず、どの組織の長も
管理職達も事態の早期打開に日々頭を悩ませていた。
性風俗店で働くド底辺の人々に最低限でもまともな
人権など与えられるはずもなく。
彼らは無知と貧しさゆえに肉体を差し出して、
わずかな金をもらいうけ。
商品として使い物にならなくなると手足を切断され、
異常な性癖をもつ者たちのところへ売られたり、
臓器売買の献体として売り飛ばされたりといった事を
されていた。
そうした歴史背景を踏まえれば、
長らく暗礁に乗り上げていた
”売春・博徒等の合法化決議案”が正式に可決され
それによって各都市の繁華街が現在のような形に
造り変えられ、
都市全体が活性化した事は、新法案の成立後
新しい街へ職を求め・住居を求めて大挙して
押し寄せた超氷河期世代の若者大多数にとって
歓迎されるべき事でもあったのだ。
かつては”社会のゴミ””人間のクズ””死神”
などと、好き放題の暴言や陰口をぶつけられ、
一般庶民の最も嫌悪する対象でしかなかった
マフィアとヤクザ達は、いち早くその時代の
新しい波に乗って様々なマーケット(市場)を構築し、
拡大していった。
元々あちこちに点在していたカジノ、競艇競馬場、
劇場、遊戯場などの遊興施設をひとつのエリアに
まとめ一大高級会員制クラブを造り上げ、
それら経営権を賭け世界の大富豪達が競り合うよう
仕向けたのである。
かくして、7人の大富豪オーナーによる共有資産
という位置づけの巨大歓楽都市が
東京都23区の中心 ―― 中央区・千代田区・港区
渋谷区・新宿区・文京区・台東区、に建築され。
それらの7区画はまとめて特別行政特区
”ネオ・ユニバーサル・シティー”(N・U・C)
に生まれ変わった
尚、日本古来の”象徴天皇制”は永続している。
各オーナー達はこぞってN・U・Cに投資し、
またそれによって莫大な利益を得るようになった。
その恩恵を受けたN・U・Cも見る間に
”東京圏いち危険なエリア”から
”誰もが1度は訪れたい人気観光地”と
変貌を遂げていったのだ。
総合未来都市ナンバーワンの名をほしいままにする
N・U・Cは整備された美しい高級住宅街や、
アメリカのラスベガス並みに多種多様な
カジノホテルがある事で一躍有名になったが、
東日本随一の花街としても世に聞こえており、
そちらの方も高い需要を誇っていた。
21**年、市街地は無限に拡大を続け……。
大雑把に言って、
シティと呼ばれる新市街地を中心に、
西側のウェストエンド地区が富裕層。
東側のイーストエンド地区が貧民層。
というように色分けされ、
イーストエンドのスラム街は
貧困労働者と現役犯罪者と刑務所帰りの人間
(元犯罪者)と浮浪児で膨張し ――、
ピラミッド型社会の頂点に君臨しこの街の治安と
秩序と風紀を守っているのが、
元々この地に根付いていた広域指定暴力団
煌竜会だ。
”毒を以て毒を制す”の諺通り、
ここ、イーストエンド少年院は、検察当局から
煌竜会が委託を受け統治・運営・管理しており、
収容されている子供達は皆、収容された直後から
何らかの仕事を半強制的にやらされていた。
商店の下働き(使いっ走り)・路上での靴磨き・
子守・性奴隷・スリ・物乞い 等など……
こういった施設の共通した大きな特徴は
”収容児童の入れ替わりがかなり頻繁
である” という事。
収容児童の年齢のボーダーは満15才まで、
で、誕生日の翌日には如何なる理由があろうと、
成人男子として扱われ郊外*ヶ所にある刑務所へ
問答無用で追い立てられる。
そんな慣例に従って問答無用で刑務所へ押送
されようとする15才の誕生日1日前に、幸運にも
満期退院を迎えた1人の少女が玄関の戸口に
立った。
見送りはもちろん出迎えの大人など1人もいない。
少女は孤児なのだ。
荷物といえば小さなショルダーバッグひとつと
小柄なその少女には身に余る大きさの
ギターケース。
満期退院に先立ち施設長から贈られた言葉も
素っ気ないものだった ――
『いいか、48時間以内に矯正局へ出頭するん
だぞ。違反した場合は即刻、逮捕され女子刑務所
送りだ』
少女は”どうせ、行くあてなどないのだから”
刑務所暮らしもいいか、と、思ったが、
とりあえず今夜の寝倉を確保するため、
「―― さぁ~て、どこに行こうかなぁ」
誰に言うともなく呟いて、雑踏の中へ足を進めた。
首都圏の中でも人口の超過密状態になっている、
関東地方南部の東京都・埼玉・千葉・神奈川の
1都3県の『東京圏』にある歓楽街エリアは
売春と博徒が合法化され、それらについて人々に
「罪悪」であるという意識はなくなった。
80年ほど前までのここいら一帯はひどく治安の悪い
――あらゆる不法、暴虐、略奪などがまかりとおる、
東京圏いち危険な歓楽エリアだった。
『警察』という組織はあっても名前と形ばかりの
ハリボテ集団で、全く機能しておらず。
街を守るいくつかの自警団はあったものの、
その自警団そのものが裏で半グレやマフィアと
繋がっており。
観光客が安全に歩けるような場所ではとてもなかった。
事実、地方公共団体の各組織が担当する有名観光地の
収支報告は右肩下がりが止まらず、どの組織の長も
管理職達も事態の早期打開に日々頭を悩ませていた。
性風俗店で働くド底辺の人々に最低限でもまともな
人権など与えられるはずもなく。
彼らは無知と貧しさゆえに肉体を差し出して、
わずかな金をもらいうけ。
商品として使い物にならなくなると手足を切断され、
異常な性癖をもつ者たちのところへ売られたり、
臓器売買の献体として売り飛ばされたりといった事を
されていた。
そうした歴史背景を踏まえれば、
長らく暗礁に乗り上げていた
”売春・博徒等の合法化決議案”が正式に可決され
それによって各都市の繁華街が現在のような形に
造り変えられ、
都市全体が活性化した事は、新法案の成立後
新しい街へ職を求め・住居を求めて大挙して
押し寄せた超氷河期世代の若者大多数にとって
歓迎されるべき事でもあったのだ。
かつては”社会のゴミ””人間のクズ””死神”
などと、好き放題の暴言や陰口をぶつけられ、
一般庶民の最も嫌悪する対象でしかなかった
マフィアとヤクザ達は、いち早くその時代の
新しい波に乗って様々なマーケット(市場)を構築し、
拡大していった。
元々あちこちに点在していたカジノ、競艇競馬場、
劇場、遊戯場などの遊興施設をひとつのエリアに
まとめ一大高級会員制クラブを造り上げ、
それら経営権を賭け世界の大富豪達が競り合うよう
仕向けたのである。
かくして、7人の大富豪オーナーによる共有資産
という位置づけの巨大歓楽都市が
東京都23区の中心 ―― 中央区・千代田区・港区
渋谷区・新宿区・文京区・台東区、に建築され。
それらの7区画はまとめて特別行政特区
”ネオ・ユニバーサル・シティー”(N・U・C)
に生まれ変わった
尚、日本古来の”象徴天皇制”は永続している。
各オーナー達はこぞってN・U・Cに投資し、
またそれによって莫大な利益を得るようになった。
その恩恵を受けたN・U・Cも見る間に
”東京圏いち危険なエリア”から
”誰もが1度は訪れたい人気観光地”と
変貌を遂げていったのだ。
総合未来都市ナンバーワンの名をほしいままにする
N・U・Cは整備された美しい高級住宅街や、
アメリカのラスベガス並みに多種多様な
カジノホテルがある事で一躍有名になったが、
東日本随一の花街としても世に聞こえており、
そちらの方も高い需要を誇っていた。
21**年、市街地は無限に拡大を続け……。
大雑把に言って、
シティと呼ばれる新市街地を中心に、
西側のウェストエンド地区が富裕層。
東側のイーストエンド地区が貧民層。
というように色分けされ、
イーストエンドのスラム街は
貧困労働者と現役犯罪者と刑務所帰りの人間
(元犯罪者)と浮浪児で膨張し ――、
ピラミッド型社会の頂点に君臨しこの街の治安と
秩序と風紀を守っているのが、
元々この地に根付いていた広域指定暴力団
煌竜会だ。
”毒を以て毒を制す”の諺通り、
ここ、イーストエンド少年院は、検察当局から
煌竜会が委託を受け統治・運営・管理しており、
収容されている子供達は皆、収容された直後から
何らかの仕事を半強制的にやらされていた。
商店の下働き(使いっ走り)・路上での靴磨き・
子守・性奴隷・スリ・物乞い 等など……
こういった施設の共通した大きな特徴は
”収容児童の入れ替わりがかなり頻繁
である” という事。
収容児童の年齢のボーダーは満15才まで、
で、誕生日の翌日には如何なる理由があろうと、
成人男子として扱われ郊外*ヶ所にある刑務所へ
問答無用で追い立てられる。
そんな慣例に従って問答無用で刑務所へ押送
されようとする15才の誕生日1日前に、幸運にも
満期退院を迎えた1人の少女が玄関の戸口に
立った。
見送りはもちろん出迎えの大人など1人もいない。
少女は孤児なのだ。
荷物といえば小さなショルダーバッグひとつと
小柄なその少女には身に余る大きさの
ギターケース。
満期退院に先立ち施設長から贈られた言葉も
素っ気ないものだった ――
『いいか、48時間以内に矯正局へ出頭するん
だぞ。違反した場合は即刻、逮捕され女子刑務所
送りだ』
少女は”どうせ、行くあてなどないのだから”
刑務所暮らしもいいか、と、思ったが、
とりあえず今夜の寝倉を確保するため、
「―― さぁ~て、どこに行こうかなぁ」
誰に言うともなく呟いて、雑踏の中へ足を進めた。
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