17 / 41
成長編
何故、私が……?
しおりを挟むぼんやり意識を取り戻した私が真っ先に思い浮かべた事は ――
" あ~あ、これでナツさんからの雷確定" だった。
いつこの状況から解放されるか? 分からないけど、ナツさんのマンションの掃除だけはちゃんとしておかないと後で何を言われるか分かったもんじゃない。
けど、意識がだんだんはっきりしていくにつれ、事態は”ナツさんの雷がどうとか・マンションの掃除がどうとか” そんな呑気な事を言っていられる場合なんかじゃない、と分かってきた。
何なんだろう、この状況は……?
一体、何故?
何故、私は……こんな事になってるんだろ?
西島さんと一緒に歩いていた時、妙な男達に襲われた、ところまでは覚えている。
今、私は埃っぽくて薄暗い倉庫の片隅にいる。
手足が頑丈なロープで縛られているので、逃げる事は出来ないし。
見張り番らしい数人の男達が反対側の隅っこでテーブルを囲み賭け麻雀をしている。
壁にかかっている時計が午後9時を知らせた頃、シャッター脇の小さな出入り口から入って来た男が、私の前にコンビニのビニール袋を置いた。
その薄い袋から見えたのはおにぎりやサンドイッチそれにペットボトルのお茶と缶ジュース。
多分、それが私の夕食だとでも言うのか?
けど、手足が縛られたままでは何にも出来ない。
すると、その男が賭け麻雀に興じている男達へ言ってくれた ――、
「あ、兄貴、この女にメシ食わすんで、拘束解いてやってかまいませんか?」
「おぉ、好きにしろや。でも、食い終わったらちゃんと縛っておけよ」
「はい」
男は私を縛っているロープを四苦八苦しながら解き、小声で囁いた。
「トイレに行きたいと言って」
「え ―― ?」
「さぁ、トイレに行きたいと」
「は、い……あ、あの ――」
最初の声掛けは見事、スルーされた。
さっきの声よりもう少し大きく声をかける。
「あのーっ!」
「なんだよっ! うっせぇな」
返ってきたのは超不機嫌な声。
「トイレに、行きたいんや、けど……」
「あぁっ?? 構わねぇから。そこいらの隅っこで座りションしろや」
「大きい方、でもですか?」
「チッ ―― めんどくせぇーなぁ、おい、てめぇ行ってこいや」
「ええっ、おらぁ、やだよぉ」
「じゃ、次郎、お前が行け」
「俺だって嫌っすよぉ。ここの便所 ”出る”って噂あるの知ってるでしょ」
どうやら、私の監視でトイレについて行く役を皆んなで押し付けあっているよう。
と、さっき私のロープを解いてくれた男が名乗り出た。
「あ、兄貴、よかったら俺、行って来ましょうか?」
『あぁ、それがいい それがいい』と、3人の男が同調し、一同のリーダー格らしい男がゴーサインを出した。
「んじゃぁ、頼むわ。小娘だと思って、抜かるんじゃねぇぞ」
「はい、わかりました」
男と一緒にトイレへ向かう道すがら、その男が襟元に口を寄せ、小声で喋りかける ――。
『智ちゃんで~す。ターゲット無事確保しましたぁ。連中のお仕置き宜しくっす』
「!! あ、あの ―― あなたは……」
「僕は西島と同じグループのもんです」
「じゃ、西島さんは ――」
「彼なら大丈夫。頭かち割られようが、ダンプに跳ね飛ばされようが、そう簡単に死にゃあしません」
「そう、ですか……よかった」
「あ、僕鬼束 智希って言います」
「私は成瀬絢音です」
その後、私はその智希さんと一緒にトイレへ行き、そこの小窓から智希さんのお仲間に救出された。
その時、倉庫の中では随分と派手な音と男達の悲鳴に呻き声が聞こえて来ていたけど、それは智希さんの言っていた”お仕置き”の為なんだろうと思い、余計な詮索は止めにしておいた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる