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飛ばされて
しおりを挟むところ変わって、ここは21世紀の東京・新宿。
不夜城と呼ばれるこの街には、
様々な人種が生息している。
おそらく東京で最も多種多様な人種が巣食う
場所だろう。
堅気の人間から極道、ノーマルな日常を送る者、
風俗で身を売る者、
ヘテロセクシャルからトランスジェンダー。
戸籍のない者、外国からの密航者、不法滞在者達。
成功者とホームレスが共存する街
大手デパートや家電量販店が立ち並ぶ一角もあれば
少し西に足を伸ばすと都庁や高級ホテルなどの
高層ビルが林立する副都心に繋がる。
日本一の歓楽街でもある歌舞伎町を抱くこの街は、
その名の通り24時間眠ることがない。
そして、知る人ぞ知る、
ホストクラブのいち大激戦区でもある。
『あ、ちょっとそこ行くお嬢さん』
『お嬢さん』
『あ、あれっ ―― 聞こえないのかなぁ』
『お嬢さんってば』と、
私の肩をポンと誰かが叩いた。
振り返るとやたら軽薄そうな男がニヤけた笑みを
浮かべている。
気持ち悪くて早足で過ぎ去ろうとしたが、
この男なかなかしつこい!
「待ってってばぁ! 何も無視する事ないじゃん」
”あ、そう言えば ――”と、足を止め、
その男に訊ねる。
「お前、何ともないのか」
「は?」
「だから、何ともないのか? と聞いておる」
男は物凄く訝(いぶか)った表情で
”ん、まぁ、何ともないよ”と答えたので
再び歩を進める。
「そんなに急いでどこ行くのー?」
「知らぬ」
「へぇ~……(アタマ足らんのかな? この女)
じゃあ俺の店に来ない? サービスするよぉ。
イケメンくんがよりどりみどり。――
初回のお客様には、基本の90分8000円で
焼酎飲み放題と、何人かホスト付けるしぃ。
もしこの中で気に入った子いたら、優先的に
付けるけど、どう?」
また、足が止まった。
路地で町のチーマー数人が寄ってたかって
たった1人の男を、袋叩きにしているとこに
出くわしてしまった。
私の近くをゆき交う民達も、もちろんあの光景に
気付いているハズなのに誰1人として助けようとも、
目明しを呼びに行こうとする人もおらんかった。
そう言えば町の小料理屋の小母さんは
都会の人間は冷とうていかん、言うておった。
――って、感慨に耽ってる場合やのうて、
アレ、何とかせな……って考えてるうち、あの
連中はボコるのに飽きたらしく、ぞろぞろと
退散し始めた。
”姫にはトラブルを引き寄せる磁力みたいな
もんがあるんかぁ”
って、利沙や千明に呆れられるほど
トラブル引き寄せ体質な私。
その事に全く自覚がないって事実が一番厄介だ
と、耳にタコが出来るくらい言われてきたけど、
困った人は捨て置けない性分なのだから仕方ない。
私はそちらの方へ足を進めた。
「ちょっと待ってよ、何する気?」
「放ってはおけぬ」
例のしつこい男は途中まで就いてきたが
『あーもうっ。付き合いきれねぇーや』と
引き返しどこかへ行ってしまった。
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