続・7年目の本気~岐路

川上風花

文字の大きさ
上 下
22 / 26

悪あがきだと分かっちゃいるが

しおりを挟む

 京都の各務グループ本社・地下パーキング。
 
 送迎車の後部座席へ匡煌はいつものように
 深く腰掛け 専属ドライバー鈴木へ”出して”と告げた。
 
 そのドライバーがエンジンをかけたと同時に
 反対側のドアから静流が乗り込んできた。
 
 
 
「なんだ、フラワーアレンジメントの教室に
 行ったんじゃなかったのか」
 
 
 と、問いかけながら手は忙しなくスマホを操作し
 何処かへリダイヤルし続けている。
 
 そんな匡煌を見て、静流は呆れ。
 
 
「ったく、往生際が悪いというか、未練たらしい、
 というか……あの和巴だって前を見て進み出したん
 だから、あなたもそろそろ腹をくくったらどう?」
 
「だから、親父や兄貴の指示通り結婚はすると
 言っただろ。他の事で外野にどうこう言われる
 筋合いはない」
 
 
 そして、匡煌はなかなか通話に応答しない
 相手(和巴)に業を煮やし。
 
 
「京都駅に向かってくれ」

「だめよ」

「だから ――」

「和巴に直接会う気でしょ」

「ニュース見ただろ。渋谷区松濤在住の
 中3女子がヤクザを庇って重症。**に聞いたが
 あれは和巴の従姉妹らしい」
 
「だから? あなたが行って何になるのよ。
 むしろ和巴に余計な心労与えるだけだわ」    

「……俺に知られちゃマズい事でも東京にあるのか?」

「や、やぁね、そんなのあるハズないじゃない」 

「そうか、ならいい」


 と、一応納得した素振りは見せたが、
 付き合いが長い分、言葉や仕草に現れる微かな
 動揺は見抜けるようになる。
 
 匡煌は和巴へのリダイヤルは止めて、
 飛行機の座席予約をした。
 行き先はもちろん、東京だ。
 
 この後、大阪の関空から北海道・札幌へ移動。
 各務の畜産部で管理運営してる牧場と直営
 レストランを視察。
 そこで現地の名士数名と会食の予定だが、
 それは適当にはしょって。
 東京へ飛ぶつもりだった。
 
 静流は自分の仕事に加え結婚式の下準備で例年の倍は
 忙しい。
 匡煌の監視役、どころではないハズなのだ。
 
 
「鈴木さん、私は適当な最寄り駅で降りるわ」

「畏まりました」   


 静流は和巴の事でまだ何か、自分に隠している。
 
 今のチャンスを逃したら、もう2度と和巴には
 会えなくなるような気がして……匡煌は焦っていた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...