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第2章 東京編
生命の重さ
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世良の被疑者勾留が決定した事を手嶌から聞き、
世良家から楓の着替えを持って病室を訪れた
和巴に楓が、一番最初かけた言葉は「ゴメン」
だった。
「うん……自分で自分の命を絶とうとしたのは
凄く悪い事だね……でも、そうするしかない
くらい、楓は辛かったんだよね」
楓の小さな顔が布団の中に隠れた。
鼻を啜る音がするから、泣いてるのだとわかる。
こんな精神的に弱っている妹に兄の事を
正直に告げて良いものか?
和巴は迷っていた。
でも、この世良関連の話題は今一番タイムリーな
ニュースなので、黙っていてもいずれ楓にだって
知れてしまう。
楓は法曹家志望でこの手の事柄には和巴より
ずっと詳しいし敏感なのだ。
やがて布団の中に隠れた楓のすすり泣く声も
止んで、楓が照れくさそうに顔を出した。
「少しは落ち着いた?」
「うん……」
「実はね京都にいる姉があなたにこっちへ来て
みないか? って言ってるんだけど」
忍・楓、2人の両親は5年前離婚。
楓は東京に住む母親に引き取られ現在に至った
のだが、保護者である母・美鈴は行方知れず
なのだ。
千早が世良を心配して電話してきたので、
和巴は楓の一時保護を頼んだ。
「こっちって、京都に?」
「うん。食堂とユースホステルやってるから
年中せかせかしてるし、自分の家族の事こんな風に
言うのも何なんだけど、皆んなのんびりした
穏やかな人らだよ」
「……」
「おそらく、あっちへ行ってもマスコミとかには
追われると思うけど、姉や義理の兄も甥も
皆んなが楓を守るから。それだけは安心して」
「……わたし、なんかがお世話になったら、皆さんに
迷惑だよ」
『迷惑なんだったら誘ったりしないよ』
その声は廊下から聞こえた。
楓は何事? と、キョトンとしているが。
和巴は ――
「もうっ、千早姉、気が早すぎ。お店は大丈夫なのー」
「心配で、気が気じゃなくってね」
と、千早が入ってきた。
「!……」
「こんにちは。はじめまして。和巴の姉で千早
って言います」
「あ ―― ども、かえで、です……」
「宜しい。ちゃんと自己紹介できたじゃん」
(って、幼稚園児じゃないんだから……)
「で、退院はいつ出来るの?」
この3日後、楓は無事退院。
千早に連れられ京都へ旅発った。
世良の事に関しては手嶌先生の頑張りに
賭けるしかないのだが。
今のところ明るいニュースはあんまり入ってこない。
接見禁止処分も相変わらず続行中なので、
顔すら見る事も出来ず。
イライラは日毎に積もってくばかりで。
新聞の一面とか、ニュースでいつ世良の処分が
報道されるか?
不安で堪らない。
いずれにせよ、結果が出される被疑者勾留の
リミットまであと2週間弱……。
世良家から楓の着替えを持って病室を訪れた
和巴に楓が、一番最初かけた言葉は「ゴメン」
だった。
「うん……自分で自分の命を絶とうとしたのは
凄く悪い事だね……でも、そうするしかない
くらい、楓は辛かったんだよね」
楓の小さな顔が布団の中に隠れた。
鼻を啜る音がするから、泣いてるのだとわかる。
こんな精神的に弱っている妹に兄の事を
正直に告げて良いものか?
和巴は迷っていた。
でも、この世良関連の話題は今一番タイムリーな
ニュースなので、黙っていてもいずれ楓にだって
知れてしまう。
楓は法曹家志望でこの手の事柄には和巴より
ずっと詳しいし敏感なのだ。
やがて布団の中に隠れた楓のすすり泣く声も
止んで、楓が照れくさそうに顔を出した。
「少しは落ち着いた?」
「うん……」
「実はね京都にいる姉があなたにこっちへ来て
みないか? って言ってるんだけど」
忍・楓、2人の両親は5年前離婚。
楓は東京に住む母親に引き取られ現在に至った
のだが、保護者である母・美鈴は行方知れず
なのだ。
千早が世良を心配して電話してきたので、
和巴は楓の一時保護を頼んだ。
「こっちって、京都に?」
「うん。食堂とユースホステルやってるから
年中せかせかしてるし、自分の家族の事こんな風に
言うのも何なんだけど、皆んなのんびりした
穏やかな人らだよ」
「……」
「おそらく、あっちへ行ってもマスコミとかには
追われると思うけど、姉や義理の兄も甥も
皆んなが楓を守るから。それだけは安心して」
「……わたし、なんかがお世話になったら、皆さんに
迷惑だよ」
『迷惑なんだったら誘ったりしないよ』
その声は廊下から聞こえた。
楓は何事? と、キョトンとしているが。
和巴は ――
「もうっ、千早姉、気が早すぎ。お店は大丈夫なのー」
「心配で、気が気じゃなくってね」
と、千早が入ってきた。
「!……」
「こんにちは。はじめまして。和巴の姉で千早
って言います」
「あ ―― ども、かえで、です……」
「宜しい。ちゃんと自己紹介できたじゃん」
(って、幼稚園児じゃないんだから……)
「で、退院はいつ出来るの?」
この3日後、楓は無事退院。
千早に連れられ京都へ旅発った。
世良の事に関しては手嶌先生の頑張りに
賭けるしかないのだが。
今のところ明るいニュースはあんまり入ってこない。
接見禁止処分も相変わらず続行中なので、
顔すら見る事も出来ず。
イライラは日毎に積もってくばかりで。
新聞の一面とか、ニュースでいつ世良の処分が
報道されるか?
不安で堪らない。
いずれにせよ、結果が出される被疑者勾留の
リミットまであと2週間弱……。
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