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第2章 東京編
★ もう、あなただけしか見えない
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社会的地位は、匡煌の方が上でも
今夜の彼はいち招待客にすぎない。
それに対し和巴は、急場しのぎの代役といえど、
主役を演じたダンサーなのだ。
主役抜きでパーティーは成り立たない。
パーティー会場に戻り、次々と群がってくる人々を
懸命にこなし取り急ぎの挨拶だけ残した和巴は、
約束の駐車場で匡煌と落ち合いホテルを後に
していた。
車内は無音で、ラジオや音楽どころか会話もない。
それでも、車窓を流れゆく夜に浮かぶライトを
見ていると周囲の事など考えられなくなっていく。
何故自分は今ここにいるのか。
何故匡煌はあそこにいたのか。
1人で考えても答えなど出ない疑問が
頭の中で堂々巡りとなる。
解るわけなどない。
今までも匡煌との関係や行動について
明確な答えなど出せた事がないのだ。
なんとも無駄な事をしていると、
窓に映る己の影に向け苦笑が漏れる。
そうしているうちに連れてこられたのは、
パーティー会場であったホテルから
歩いてでも行ける距離にある高級ホテルであった。
既にチェックイン済みだったらしく、
フロントはスルーしてそのままエレベーターへ。
「今日の公演を地方から観劇しに来た客でスウィートは
満室だった。すまん」
ワンルームにベッドとソファーセットのある
ダブルルームは意外と広々している。
「どうしてあなたが謝るの? スウィートなんかじゃ
なくたってヤる事は出来るよ」
「ハハハ ――ッ、そりゃそうだ」
ぼんやりと匡煌の後に続き彼がスーツのジャケットを
脱ぐのをただ見ていると、
ようやく和巴を振り返った彼は唇の端をつり上げて
見せた。
「どうした?
めかし込んでるから脱がして欲しいのか?」
「べ、べつに。そういう訳じゃ……。
脱ぎます(脱げばいいんでしょ)」
からかうような匡煌の言葉にカッと
顔が熱くなるのを感じる。
和巴自身このような格好をするのが
久しぶりであれば、匡煌の前でそうあるのは
おそらく初めてだ。
彼が言うように『めかし込んでいる』というのが
今更照れくさくなり、咄嗟に背を向けた。
どうせやる事はひとつで、それに衣類は必要ない。
結局は脱ぐのだからさっさとそうしてしまえば良い。
ジャケットのボタンを外し、飾りも取る。
それをテーブルに置いて背中のファスナーに
手を掛けた時、不意に和巴は背中に熱を感じた。
「続きは俺が ――」
「匡煌……」
前に回り込んだ匡煌に軽く抱き締められ、
包み込まれるようファスナーに触れられる。
匡煌の熱い吐息が耳元にかかるとそれだけで
身体の芯に熱が灯り、
余計な事など一切考えられなくなる。
ツ ツ ツ ツ ツ ツゥ ――――
ファスナーの下ろされる音がいやに大きく聞こえる
匡煌は肩口からはだけたドレスを床へ落とすと、
自分の熱い唇を和巴の肩口へ這わせながら
スリップの肩紐もゆっくり外した。
匡煌の腕。
その腕の逞しさと、体中で感じる彼の鼓動。
耳元で響く優しい彼の声。
この腕や胸に抱かれ、この声で甘く囁かれる。
それがもう自分1人の男じゃないとしても、
他人(ひと)の婚約者、でも、
一度火のついた欲情は止められない。
「匡煌」
その面もちをじっと見つめ、
和巴は彼の後頭部に腕を伸ばして引き寄せながら、
背伸びをしその唇を奪った。
やりたかったからだと匡煌が言うなら、
早くやれば良い。
和巴もまたやりたかったのだから、
まどろっこしく脱衣などしていられない。
「お、おまえ……」
「あ ――、や……んっ」
薄い匡煌の唇を啄み、
舌先で彼の口内へ進入する。
荒くなる呼吸を繰り返しながら舌を絡めようと
すると、しかし匡煌は容易にそれを許しては
くれなかった。
「ぁ……」
「積極的なのも良いが、自分で蒔いた種だってぇのを
忘れるな」
「え ―― っ……あ」
匡煌の両手が和巴の腰に巻き付き、
さらにグイっと引き寄せられ、
匡煌が和巴の唇を奪った。
和巴のキスとはまるで違う荒々しいそれは、
けれど決して奪われているばかりだとは思わない。
奪われ、そして与えられている。
和巴の口内を蹂躙されれば、
瞼を持ち上げている事も、
唾液を飲み込む事も出来なくなっていた。
「っふ……ん ――」
無意識のうちに匡煌の背に回っていた
和巴の腕に力がこもる。
抱きつくよりもしがみつくと表したいそれは、
彼に捕まっていなければ立っていられないからだ。
匡煌のキスは大好きだ。
それだけで十分、
身体の中心へと熱が集まってゆくとはっきりと解る。
もう、和巴が身に着けているのは、
ピンクのブラだけ。
その薄い布地の下では痛いほどに尖った乳*が
疼いている。
辛い。
ただキスを繰り返すだけでは、
立っているのも身体に溜まった欲望も
辛くて仕方がない。
「んっ ―― 匡煌、もう」
「どうした? キスだけでいっちまうってか?」
「もうっ ―― いけず」
「和巴、もう、どうなっても文句は言わせねぇからな」
「……」
今夜の彼はいち招待客にすぎない。
それに対し和巴は、急場しのぎの代役といえど、
主役を演じたダンサーなのだ。
主役抜きでパーティーは成り立たない。
パーティー会場に戻り、次々と群がってくる人々を
懸命にこなし取り急ぎの挨拶だけ残した和巴は、
約束の駐車場で匡煌と落ち合いホテルを後に
していた。
車内は無音で、ラジオや音楽どころか会話もない。
それでも、車窓を流れゆく夜に浮かぶライトを
見ていると周囲の事など考えられなくなっていく。
何故自分は今ここにいるのか。
何故匡煌はあそこにいたのか。
1人で考えても答えなど出ない疑問が
頭の中で堂々巡りとなる。
解るわけなどない。
今までも匡煌との関係や行動について
明確な答えなど出せた事がないのだ。
なんとも無駄な事をしていると、
窓に映る己の影に向け苦笑が漏れる。
そうしているうちに連れてこられたのは、
パーティー会場であったホテルから
歩いてでも行ける距離にある高級ホテルであった。
既にチェックイン済みだったらしく、
フロントはスルーしてそのままエレベーターへ。
「今日の公演を地方から観劇しに来た客でスウィートは
満室だった。すまん」
ワンルームにベッドとソファーセットのある
ダブルルームは意外と広々している。
「どうしてあなたが謝るの? スウィートなんかじゃ
なくたってヤる事は出来るよ」
「ハハハ ――ッ、そりゃそうだ」
ぼんやりと匡煌の後に続き彼がスーツのジャケットを
脱ぐのをただ見ていると、
ようやく和巴を振り返った彼は唇の端をつり上げて
見せた。
「どうした?
めかし込んでるから脱がして欲しいのか?」
「べ、べつに。そういう訳じゃ……。
脱ぎます(脱げばいいんでしょ)」
からかうような匡煌の言葉にカッと
顔が熱くなるのを感じる。
和巴自身このような格好をするのが
久しぶりであれば、匡煌の前でそうあるのは
おそらく初めてだ。
彼が言うように『めかし込んでいる』というのが
今更照れくさくなり、咄嗟に背を向けた。
どうせやる事はひとつで、それに衣類は必要ない。
結局は脱ぐのだからさっさとそうしてしまえば良い。
ジャケットのボタンを外し、飾りも取る。
それをテーブルに置いて背中のファスナーに
手を掛けた時、不意に和巴は背中に熱を感じた。
「続きは俺が ――」
「匡煌……」
前に回り込んだ匡煌に軽く抱き締められ、
包み込まれるようファスナーに触れられる。
匡煌の熱い吐息が耳元にかかるとそれだけで
身体の芯に熱が灯り、
余計な事など一切考えられなくなる。
ツ ツ ツ ツ ツ ツゥ ――――
ファスナーの下ろされる音がいやに大きく聞こえる
匡煌は肩口からはだけたドレスを床へ落とすと、
自分の熱い唇を和巴の肩口へ這わせながら
スリップの肩紐もゆっくり外した。
匡煌の腕。
その腕の逞しさと、体中で感じる彼の鼓動。
耳元で響く優しい彼の声。
この腕や胸に抱かれ、この声で甘く囁かれる。
それがもう自分1人の男じゃないとしても、
他人(ひと)の婚約者、でも、
一度火のついた欲情は止められない。
「匡煌」
その面もちをじっと見つめ、
和巴は彼の後頭部に腕を伸ばして引き寄せながら、
背伸びをしその唇を奪った。
やりたかったからだと匡煌が言うなら、
早くやれば良い。
和巴もまたやりたかったのだから、
まどろっこしく脱衣などしていられない。
「お、おまえ……」
「あ ――、や……んっ」
薄い匡煌の唇を啄み、
舌先で彼の口内へ進入する。
荒くなる呼吸を繰り返しながら舌を絡めようと
すると、しかし匡煌は容易にそれを許しては
くれなかった。
「ぁ……」
「積極的なのも良いが、自分で蒔いた種だってぇのを
忘れるな」
「え ―― っ……あ」
匡煌の両手が和巴の腰に巻き付き、
さらにグイっと引き寄せられ、
匡煌が和巴の唇を奪った。
和巴のキスとはまるで違う荒々しいそれは、
けれど決して奪われているばかりだとは思わない。
奪われ、そして与えられている。
和巴の口内を蹂躙されれば、
瞼を持ち上げている事も、
唾液を飲み込む事も出来なくなっていた。
「っふ……ん ――」
無意識のうちに匡煌の背に回っていた
和巴の腕に力がこもる。
抱きつくよりもしがみつくと表したいそれは、
彼に捕まっていなければ立っていられないからだ。
匡煌のキスは大好きだ。
それだけで十分、
身体の中心へと熱が集まってゆくとはっきりと解る。
もう、和巴が身に着けているのは、
ピンクのブラだけ。
その薄い布地の下では痛いほどに尖った乳*が
疼いている。
辛い。
ただキスを繰り返すだけでは、
立っているのも身体に溜まった欲望も
辛くて仕方がない。
「んっ ―― 匡煌、もう」
「どうした? キスだけでいっちまうってか?」
「もうっ ―― いけず」
「和巴、もう、どうなっても文句は言わせねぇからな」
「……」
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