7年目の本気

川上風花

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第2章 東京編

楓からのS・O・S

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 R R R R R R R R ――――――

 呼び出し音は虚しく鳴り続ける……

 
 自宅とアパートの固定電話にも、留守電メーセージ
 を入れ。

 時間をみつけてはこうして携帯電話へもコール
 しているが、世良楓からの反応は全くない。

 仕事も1*日以降はずっと休んでいるらしい。

 恐らく、マスコミ対策で何処かに雲隠れしているの
 だろうが、和巴は楓が久しぶりにかけてきた
 あの電話がずっと気になっていた。


 和巴はタクシーのシートに深く座りながら
 ふと窓の外に目をやった。

 ん……?

 和巴は思わずメガネをズラして目を擦り、も1度
 メガネをかけ直してから窓の外を凝視した。

 運転手がギアチェンジをして方向転換。


「あ、ごめんなさい ―― ここでいいわ」


 運転手は如何にも不機嫌な顔をした。

 そりゃそうだ。
 まだ乗ってほんの数分しか経っていない。

 和巴は野口英世を出した。


「お釣りは結構です」


 運転手は当たり前だ、と言う感じで
 『ありがとうございましたぁ』
 おざなりの挨拶をした。

 やっぱりお釣り貰っときゃ良かったか……

 キャップを目深にかぶり直しタクシーから降りて
 さっきタクシーが方向転換をした地点へと戻り
 小走りに歩き出した。


 1~2分程で目的の地点へは着いたが、
 その周辺をかなりしつこく見回しても、
 和巴が求めたモノは見当たらなかった。


「やっぱ私の見間違い、だったのかなぁ……」


 和巴は、さっきまで乗っていたあのタクシーが
 方向転換をした瞬間、この交差点付近で
 楓の姿を見かけた。

 あの同窓会が世良との久しぶりの再会だった
 よう。
 楓とも、この6~7年は会っていない。
 だから、あの時見たのが楓だと何故分かったのか、
 自分でも良く分からない……。

 もしかしたら、他人の空似 ――
 ただの見間違いだったのかも知れない。

 いずれかもはっきりしないモノを探すのは諦め、
 歩き出して……ふと、足が止まる。

 昔、お祖母ちゃんが言ってた言葉を思い出した。


 ”そうかい、和ちゃんにも視えるんだねぇ……
  けど、実体がないからって、怖いモノばっかり
  じゃないのよ。人には自分がどうしても身動き
  取れない時、自分の身代わりが誰かに自分の
  状況を教えてくれる事があるの”


「自分の、身代わり……身動きがとれない……」


 ハッとした和巴は、路肩へ飛び出しタクシーの
 空車に手を上げた。


 何事も”ない” なら ”ない”でいい。

 何より今は、この胸の中でざわめく嫌な胸騒ぎを
 鎮め、1分1秒でも早く楓の無事を確かめたい。
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