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第2章 東京編
藍子お嬢様、来る。
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数日後の覇王エンタテインメント・
10階 営業課フロアー ――
この日の社内はこの10階フロアーといわず
各階でほとんどの従業員が浮足立って、
異様なくらいの興奮状態に包まれていた。
「来た 来た」
窓辺で階下を見下ろしていた数人の社員が
そう声をあげると。
他の社員達もドッと窓辺へ殺到した。
”一体何事?”と私もジャンプ背伸びで
覗こうと思ったけど、人だかりがあり過ぎで。
最前列・窓辺のすぐ横にいたノンが強引に
引っ張ってくれてやっと覗く事ができた。
階下・正面玄関前に2台のセダンが横付けで
停められている。
玄関の中からぞろぞろと出てきたスーツ軍団 ――
恐らくは覇王の幹部さん達 ――が先頭・1台目の
横へズラリと並んで立ち止まり。
その中の1人が後部座席のドアを開けた。
さすがにこの高さからなので、
その車内から出てきたのが誰だったのか?
までは見えなかったが。
隣に立ってた先輩が、惚けたようなため息と共に
漏らした
「はぁ~~やっぱ可愛いなぁ、如月藍子……テレビ
よか数倍いいよ」
そんな呟きで、改めて階下の車へ目を凝らした。
き、如月 藍子……
でも、なんで彼女がうちの社に ――??
それから間もなく、このフロアーのエレベーターから
降り立った、如月藍子と宗方監督を先頭にした
幹部社員達の一団が廊下を通過し奥の会議室へ
入って行った。
そしてその日のお昼には
”如月藍子、ジゼル役ダブルキャストに決定”の
ビッグニュースが拡散して、社内に広まった。
「あぁ、小鳥遊、ちょっと来てくれ」
「はい」
羽柴専務に呼ばれ、彼の執務室へ。
「何でしょう」
「もう知ってると思うが、満場一致でジゼルの
ダブルキャストは如月藍子に決まった」
「はい」
「この企画から外れたいなら今のうちに言って欲しい」
「外れたい? なんでですか?」
「なんで? って、やりにくかぁねぇのか?
言うなれば如月藍子はお前の ――」
「仕事に私情は持ち込みません。でも、お気遣い
どうもありがとうございます」
「じゃ、本当に大丈夫なんだな」
「はい」
「なら、早速、記者会見の段取り頼むぞ」
「はい」
後で知った事だけど、如月藍子はこの『ジゼル』
公演を最後に芸能活動はしばらく休止して、
匡煌さんと結婚した後は主婦業に専念するそう。
定時終業後、資料室に1人こもって如月藍子さんに
関するデータベースを調べる。
彼女がまだキッズモデルをしてた頃の月刊誌の
バックナンバー数冊とティーンモデルになってからの
インタビュー記事や特集ページをチェックして。
多彩な趣味の中で一番熱中したという
”クラシックバレエ”のバーレッスンから
センターレッスン・男性舞踊手とのペアダンス等を
収録した動画も観た。
詳細なプロフィールを見れば、
パリオペラ座バレエ団の名エトワール・
シルヴィ・ギエムに憧れ3才の時からクラシックバレエを
習っていて。
15才の時、1年間スイスへバレエ留学していた
事もある。
資産家の家の次女として生まれ、大事に・大事に
育てられてきた純粋培養100%の箱入りお嬢様で
各務(宇佐見)匡煌との婚約が決まるまで1人で
電車に乗った事もない、世間知らず。
うわぁぁ……また、凄い人に決まったもんだ……。
専務に言われた通り、明日から会見の準備始め
なくちゃ。
10階 営業課フロアー ――
この日の社内はこの10階フロアーといわず
各階でほとんどの従業員が浮足立って、
異様なくらいの興奮状態に包まれていた。
「来た 来た」
窓辺で階下を見下ろしていた数人の社員が
そう声をあげると。
他の社員達もドッと窓辺へ殺到した。
”一体何事?”と私もジャンプ背伸びで
覗こうと思ったけど、人だかりがあり過ぎで。
最前列・窓辺のすぐ横にいたノンが強引に
引っ張ってくれてやっと覗く事ができた。
階下・正面玄関前に2台のセダンが横付けで
停められている。
玄関の中からぞろぞろと出てきたスーツ軍団 ――
恐らくは覇王の幹部さん達 ――が先頭・1台目の
横へズラリと並んで立ち止まり。
その中の1人が後部座席のドアを開けた。
さすがにこの高さからなので、
その車内から出てきたのが誰だったのか?
までは見えなかったが。
隣に立ってた先輩が、惚けたようなため息と共に
漏らした
「はぁ~~やっぱ可愛いなぁ、如月藍子……テレビ
よか数倍いいよ」
そんな呟きで、改めて階下の車へ目を凝らした。
き、如月 藍子……
でも、なんで彼女がうちの社に ――??
それから間もなく、このフロアーのエレベーターから
降り立った、如月藍子と宗方監督を先頭にした
幹部社員達の一団が廊下を通過し奥の会議室へ
入って行った。
そしてその日のお昼には
”如月藍子、ジゼル役ダブルキャストに決定”の
ビッグニュースが拡散して、社内に広まった。
「あぁ、小鳥遊、ちょっと来てくれ」
「はい」
羽柴専務に呼ばれ、彼の執務室へ。
「何でしょう」
「もう知ってると思うが、満場一致でジゼルの
ダブルキャストは如月藍子に決まった」
「はい」
「この企画から外れたいなら今のうちに言って欲しい」
「外れたい? なんでですか?」
「なんで? って、やりにくかぁねぇのか?
言うなれば如月藍子はお前の ――」
「仕事に私情は持ち込みません。でも、お気遣い
どうもありがとうございます」
「じゃ、本当に大丈夫なんだな」
「はい」
「なら、早速、記者会見の段取り頼むぞ」
「はい」
後で知った事だけど、如月藍子はこの『ジゼル』
公演を最後に芸能活動はしばらく休止して、
匡煌さんと結婚した後は主婦業に専念するそう。
定時終業後、資料室に1人こもって如月藍子さんに
関するデータベースを調べる。
彼女がまだキッズモデルをしてた頃の月刊誌の
バックナンバー数冊とティーンモデルになってからの
インタビュー記事や特集ページをチェックして。
多彩な趣味の中で一番熱中したという
”クラシックバレエ”のバーレッスンから
センターレッスン・男性舞踊手とのペアダンス等を
収録した動画も観た。
詳細なプロフィールを見れば、
パリオペラ座バレエ団の名エトワール・
シルヴィ・ギエムに憧れ3才の時からクラシックバレエを
習っていて。
15才の時、1年間スイスへバレエ留学していた
事もある。
資産家の家の次女として生まれ、大事に・大事に
育てられてきた純粋培養100%の箱入りお嬢様で
各務(宇佐見)匡煌との婚約が決まるまで1人で
電車に乗った事もない、世間知らず。
うわぁぁ……また、凄い人に決まったもんだ……。
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なくちゃ。
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