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第2章 東京編
薫さんの底力
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いつも思う事だけど、ごく平均的な一般人の顔を
人気女優の顔へと変えていくアーティスト青山さんの
メイク技術はホント神だ。
「んー、じゃあ目ぇ閉じてねー」
「はい」
全てを委ねるように瞼を閉じる。
「ふふっ、この表情ってさ、まるでキスを待ってる
みたいよねぇ……してもいい?」
「ダメに決まってんでしょ。この唇はダーリンだけの
モノなの」
「まぁ ―― ノロケてくれちゃってぇ。
ごちそうさま」
会話の内容は置いといて、
青山さんはこんな風にメイクされてる人を
退屈にさせない。
ホントすごい人だ。尊敬する。
……ちょっとチャラいところさえなければ。
ささやかだった二重がくっきりおメメの
綺麗な二重になり、アイシャドウがのって、
目の淵にラインが引かれる。
口は派手すぎないリップで薄っすら色づけ、
グロスでぷっくりツヤツヤに。
次々と手際よく施され、
ものの数分でメイク終了~。
「はーい、メイク完成。お疲れさま」
「ありがと」
「それじゃ、ウィッグも付けるねー」
ピョンピョン跳ねまくっている薫さんの髪を
ネットの中にしまい込み―― 、
上からロングの黒髪ストレートなウィッグを
被せられる。
取れないようピンでしっかり固定して、
少し整えてからカチューシャを乗っければ、
女優・浅霧薫の完成。
「今日は”可愛い女シリーズ”で~す。今回の役柄に
合わせてピュアピュアな村娘をイメージして
みましたぁー。うん完璧」
今日は薫さんの次回出演作『ジゼル』のPRポスターと
スチール撮影。
―― ガチャッ
「準備できたか」
丁度いいタイミングでチーフマネージャーの
羽柴さんが戻ってきた。
「お帰りなさぁい」と、皆んなで振り返れば
一瞬間が空き、素っ気ない返事が返ってくるだけ。
ん? と、思ってすぐ隣に立つ青山さんに
視線を送ると含み笑いをされた。
「やぁだぁ~、仁ってば何赤くなってんのー?
このむっつりめー。
薫ちゃん今日も可愛いでしょ」
「うっせー黙れ。でも、ま、いつも通り上出来だ」
羽柴さんと青山さんは高校・大学時代の同期
だという。
「お褒めに預かり光栄です」
うやうやしくお辞儀をする青山さんは顔を上げ
ニシシ ―― ッと笑いかけてくるから私も
一緒になって笑った。
「じゃ、行けるな? 薫」
トータルコーディネート完了後の
薫さんを上から下まで最終確認すると、
羽柴さんのその言葉を合図に立ち上がった。
楽屋から出るこの瞬間は、
何回経験しても緊張する。
「はい、大丈夫です」
「よし、行こうか」
羽柴さんが押さえてくれているドアから
薫さんを先頭に4人順番で出ていく。
人気女優の顔へと変えていくアーティスト青山さんの
メイク技術はホント神だ。
「んー、じゃあ目ぇ閉じてねー」
「はい」
全てを委ねるように瞼を閉じる。
「ふふっ、この表情ってさ、まるでキスを待ってる
みたいよねぇ……してもいい?」
「ダメに決まってんでしょ。この唇はダーリンだけの
モノなの」
「まぁ ―― ノロケてくれちゃってぇ。
ごちそうさま」
会話の内容は置いといて、
青山さんはこんな風にメイクされてる人を
退屈にさせない。
ホントすごい人だ。尊敬する。
……ちょっとチャラいところさえなければ。
ささやかだった二重がくっきりおメメの
綺麗な二重になり、アイシャドウがのって、
目の淵にラインが引かれる。
口は派手すぎないリップで薄っすら色づけ、
グロスでぷっくりツヤツヤに。
次々と手際よく施され、
ものの数分でメイク終了~。
「はーい、メイク完成。お疲れさま」
「ありがと」
「それじゃ、ウィッグも付けるねー」
ピョンピョン跳ねまくっている薫さんの髪を
ネットの中にしまい込み―― 、
上からロングの黒髪ストレートなウィッグを
被せられる。
取れないようピンでしっかり固定して、
少し整えてからカチューシャを乗っければ、
女優・浅霧薫の完成。
「今日は”可愛い女シリーズ”で~す。今回の役柄に
合わせてピュアピュアな村娘をイメージして
みましたぁー。うん完璧」
今日は薫さんの次回出演作『ジゼル』のPRポスターと
スチール撮影。
―― ガチャッ
「準備できたか」
丁度いいタイミングでチーフマネージャーの
羽柴さんが戻ってきた。
「お帰りなさぁい」と、皆んなで振り返れば
一瞬間が空き、素っ気ない返事が返ってくるだけ。
ん? と、思ってすぐ隣に立つ青山さんに
視線を送ると含み笑いをされた。
「やぁだぁ~、仁ってば何赤くなってんのー?
このむっつりめー。
薫ちゃん今日も可愛いでしょ」
「うっせー黙れ。でも、ま、いつも通り上出来だ」
羽柴さんと青山さんは高校・大学時代の同期
だという。
「お褒めに預かり光栄です」
うやうやしくお辞儀をする青山さんは顔を上げ
ニシシ ―― ッと笑いかけてくるから私も
一緒になって笑った。
「じゃ、行けるな? 薫」
トータルコーディネート完了後の
薫さんを上から下まで最終確認すると、
羽柴さんのその言葉を合図に立ち上がった。
楽屋から出るこの瞬間は、
何回経験しても緊張する。
「はい、大丈夫です」
「よし、行こうか」
羽柴さんが押さえてくれているドアから
薫さんを先頭に4人順番で出ていく。
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