7年目の本気

川上風花

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第2章 東京編

追憶

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 マンションの自室へ戻ると和巴はベッド脇の床へ
 直にペタンと座り込んだ。 

 ベラはLDKにも1階の共有ルームにもいなかった 
 ところをみると、まだ外出先から 帰ってはいない
 ようだ。 

 今彼女と顔を合わせたらきっとみっともない醜態を
 晒してしまいそうだったので、
 居てくれなくて助かった。 

 和巴は自分1人だけの部屋でしばらく放心したよう 
 ぼんやりとして、ふと、自分の机の下に押し込んで
 ある 段ボール箱に目を止めた。 

 それを引っ張り出してきて蓋を開けた。 

 大した物も、量も入ってはいない。 
 ふるびたアルバム1冊とブリキで出来たオモチャが
 2~3コ、そして、バンダナサイズのハンカチが
 1枚。 


 ☓☓☓  ☓☓☓  ☓☓☓ 


「ほ、ほんとはよー、もっとすげぇやつプレゼント
 しようと思ってたんだぜ。けど、高価なアクセも
 洋服もお前にゃ何となく似合わない、ような
 気がしてさ……」 


「ううん、私すっごく嬉しい! ずっと大切にするね、 
 ありがと匡煌さん」 


 と、”同棲記念”にって匡煌から貰った 
 真新しいハンカチを握りしめ 
 嬉しそうに涙ぐむ和巴。 


「ハンカチよか、バスタオルの方が 
 良かったかな」 

「えっ、どーして?」 

「マジ、和巴ってば泣き虫なんだもんよ。 
 ハンカチ程度じゃお前の涙拭くには足らないじゃん」 

「もうっ ―― 私はそんな泣き虫じゃないもん」 


 ☓☓☓  ☓☓☓  ☓☓☓ 


 遠い昔を懐かしむよう思い出し、 
 薄く微笑む和巴の瞳に涙が潤む。 

 その時、ガチャ――、玄関先でドアが開く音、
 ベラが帰ってきた。 

 和巴は素早く涙を拭い、
 段ボール箱を閉じてまた机の下へ戻し。
 
 『お帰り、ベラ』とLDKへ出て行った。 
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