49 / 124
和巴と匡煌 そのⅡ
しおりを挟むこれからデートだという2人を見送って、
部屋へ戻った私はベランダへ出た。
都会の街は周りのビルや家々から漏れる電気で
結構深夜まで明るい。
それに加えこのシェアハウスの建物は高台に
建っているので、かなり遠くまで見渡す事が出来た。
見える訳はないのに ――
思わずマンションの方向へ目を向けた。
2度と会わないって決めたのは自分。
だから今は、まだ同じこの町に一緒にいられるって
事だけで良しとしよう。
これから私は、
もっと強くならなきゃダメなんだ。
もし、何年か後、
彼と偶然何処かで再会しても、笑顔で話しが出来る
ように……。
私は強くなる。
―― コン コン
「はーい?」
開いたドアから顔を見せたのは、
向かいに住む華人系アメリカンのジェフ。
「ハ~イ・マイハニー、おじゃまですかぁ?」
「ううん、そんな事ないよー、どうぞ入って」
と、言うと「では、おじゃまします~」と
ジェフを筆頭にこのハウスの住人さん達が
ゾロゾロと入って来た。
皆、手に酒と肴、それにスナック菓子を
持っている。
どうやらこれから、夜通しの飲み会になりそうだ。
***** ***** *****
和巴は俺を待っていてくれる、
そう信じていた。
スピード全開でマンションへ急行し、
パーキングへ車を停める。
エレベーターを降り、
部屋のドアにカードキーを認識させようとするが、
元々この作業は苦手で手間取り、
認識したピーッという電子音と同時に
ドアを蹴破る勢いで開け、室内へ。
「かずっ!」
名前を叫びながら各室を探し回る。
あいつの私室にとあてがった一室 ――
至る所に積み重なっていた経済書の類は
綺麗さっぱり消えてなくなり。
クローゼットの俺が買った服とアクセ等は
そのまま残されていた。
そして、とどめは、
テーブルの上に
メモと一緒に置かれていたプラチナのリング。
”匡煌さん、嘘ついてごめんなさい。
あなたは自分の道を奥様と歩いて下さい”
何が奥様だよ……
俺のパートナーは和巴、お前だけなのにっ。
俺はリングを握りしめ、その場にへたり込んだ。
「かず? 俺を1人置いて行っちまったのか?
本当にもう帰って来ないのか?
……お願いだから、嘘だと言ってくれ……」
本当のお袋が死んだ時以来、初めて泣いた。
世間体なんて下らないもん、
とうの昔に捨てていた、
各務とも縁を切る覚悟でいたのに……っ。
「戻って来い、和巴……愛してる」
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる