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vs 広嗣
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翌日になっても『交換留学』が頭から離れる事は
なかった。
何をしていても頭の中にチラついて
まったく勉強に集中出来なかった。
今日は定時より少し早く帰って1人でゆっくり
考えてみる事にする。
3年、という期間は短いようで長くも感じる。
パーティーで広嗣さんから、あんな牽制球を
ぶつけられてる今。
これは自分にとっての大きな転機にもなるような
気がしていた。
情に流されてるだけじゃ駄目だ。
きちんと考えなきゃ。
『―― 小鳥遊さん?』
正門から出て、しばらく歩いたところで
声をかけられた。
この声は ――
振り返ると ――
案の定、広嗣さんが立っていた。
「今日は早退?
何処か体の具合でも悪いのかな?」
「いえ、そんなんじゃありません。
お気遣いありがとうございます」
「そ、なら良かった……じゃあ、
ちょっとその辺でお茶でもしようか。
キミに話しがある」
私は彼に促されるまま、駅前のカフェに入った。
わざわざ目上の彼がセルフサービスのカウンターで
私の分まで飲み物を買ってきてくれた。
(こういった時の気遣いはホント、
兄弟そっくりだ)
私が恐縮しきりでその代金を払おうとすると。
「これ位は奢らせてくれ、年上の見栄だから」
と、言われた。
「ごちそうになります……で、お話しというのは、
何でしょう」
「……先日のパーティーで匡煌の結婚が近い
といったが、あいつの見合い相手は神宮寺剣造氏の
ご令嬢なんだ」
やっぱりか。
だから、あのパーティーでも一緒だったんだ。
「私はもちろん、
両親や親族一同も大いに乗り気でね……」
私はひざ上の手をギュッと握りしめた。
「こんな話しをわざわざキミにする理由が分かるか?」
心臓が大きく脈を打った。
「……この良縁を成立させる為には、平民の小娘に
現を抜かしている場合ではないし、余計な問題を
増やしたくない、という事ですね?」
広嗣さんは満足気に微笑んだ。
「その通りだよ」
私はこれ以上、匡煌さんに深入りするべきでは
ないと思った。
「しかし、肝心の匡煌は全く無関心でな、
結婚が命令だと言うなら従うが、子作りをする気も、
入籍後同居する気ないと言うんだ。だが、
あいつも各務家の人間である以上そんなわがまま
許す訳にはいかん。それは理解してくれるか?」
「はい……」
「キミが物分りのいい人で助かったよ」
「……あの、もう、失礼してよろしいですか?」
「あぁ、引き止めて悪かったね」
席を立ち、広嗣さんに一礼して、
足早に店から出た。
何処でもいい、とにかくここから
なるべく遠くに行きたくて。
私は闇雲に歩いた。
あてもなく、彷徨い歩いて ――
最後に辿り着いたのは、
匡煌さんに初めて大告白された公園。
奇しくも今日はあの夜と同じ満月だ。
まだ、夕暮れ前の空に薄っすら見える満月は
半透明で、どことなく儚げに見える。
今日の広嗣さん、私と2人だったからか。
ど直球で、私に身を引けと、
匡煌さんから離れろと、言ってきた。
別れを切り出すのか?
切り出せるのか?
せっかく2人の生活は軌道に乗り始めたばかり
なのに。
そんな事、私に出来る?
匡煌さんに別れを告げる、だなんて……。
私は陰々とした気持ちのまま、
マンションへ向かった。
なかった。
何をしていても頭の中にチラついて
まったく勉強に集中出来なかった。
今日は定時より少し早く帰って1人でゆっくり
考えてみる事にする。
3年、という期間は短いようで長くも感じる。
パーティーで広嗣さんから、あんな牽制球を
ぶつけられてる今。
これは自分にとっての大きな転機にもなるような
気がしていた。
情に流されてるだけじゃ駄目だ。
きちんと考えなきゃ。
『―― 小鳥遊さん?』
正門から出て、しばらく歩いたところで
声をかけられた。
この声は ――
振り返ると ――
案の定、広嗣さんが立っていた。
「今日は早退?
何処か体の具合でも悪いのかな?」
「いえ、そんなんじゃありません。
お気遣いありがとうございます」
「そ、なら良かった……じゃあ、
ちょっとその辺でお茶でもしようか。
キミに話しがある」
私は彼に促されるまま、駅前のカフェに入った。
わざわざ目上の彼がセルフサービスのカウンターで
私の分まで飲み物を買ってきてくれた。
(こういった時の気遣いはホント、
兄弟そっくりだ)
私が恐縮しきりでその代金を払おうとすると。
「これ位は奢らせてくれ、年上の見栄だから」
と、言われた。
「ごちそうになります……で、お話しというのは、
何でしょう」
「……先日のパーティーで匡煌の結婚が近い
といったが、あいつの見合い相手は神宮寺剣造氏の
ご令嬢なんだ」
やっぱりか。
だから、あのパーティーでも一緒だったんだ。
「私はもちろん、
両親や親族一同も大いに乗り気でね……」
私はひざ上の手をギュッと握りしめた。
「こんな話しをわざわざキミにする理由が分かるか?」
心臓が大きく脈を打った。
「……この良縁を成立させる為には、平民の小娘に
現を抜かしている場合ではないし、余計な問題を
増やしたくない、という事ですね?」
広嗣さんは満足気に微笑んだ。
「その通りだよ」
私はこれ以上、匡煌さんに深入りするべきでは
ないと思った。
「しかし、肝心の匡煌は全く無関心でな、
結婚が命令だと言うなら従うが、子作りをする気も、
入籍後同居する気ないと言うんだ。だが、
あいつも各務家の人間である以上そんなわがまま
許す訳にはいかん。それは理解してくれるか?」
「はい……」
「キミが物分りのいい人で助かったよ」
「……あの、もう、失礼してよろしいですか?」
「あぁ、引き止めて悪かったね」
席を立ち、広嗣さんに一礼して、
足早に店から出た。
何処でもいい、とにかくここから
なるべく遠くに行きたくて。
私は闇雲に歩いた。
あてもなく、彷徨い歩いて ――
最後に辿り着いたのは、
匡煌さんに初めて大告白された公園。
奇しくも今日はあの夜と同じ満月だ。
まだ、夕暮れ前の空に薄っすら見える満月は
半透明で、どことなく儚げに見える。
今日の広嗣さん、私と2人だったからか。
ど直球で、私に身を引けと、
匡煌さんから離れろと、言ってきた。
別れを切り出すのか?
切り出せるのか?
せっかく2人の生活は軌道に乗り始めたばかり
なのに。
そんな事、私に出来る?
匡煌さんに別れを告げる、だなんて……。
私は陰々とした気持ちのまま、
マンションへ向かった。
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