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アクターズギルド 国際映画祭 授賞式
しおりを挟む『Σ(゚∀゚ノ)ノキャー、和せんせ~いらっしゃぁい!』と
16才の女子高生らしい元気さで、
ゲスト達の輪から外れてやって来たのは、
今をときめくトップアイドル・酒井姫子ちゃん。
前々からパワフルさには圧倒だったけど、
今はさらに磨きもかかって、
文字通りキラキラ光り輝いている。
「ホントに来てくれるだなんて姫子感激!」
「だって、ずっと前からの約束だったじゃない」
(と、いっても忘れかけていたが)
「今日はう~んと楽しんでいってね。
ご贔屓のスターさんとかいたら生サインでも、
生写真でも何でももらってあげるから」
「うん、どうもありがとう」
今夜、ここインターコンチネンタル・洛中の
特設パーティー会場できらびやかに
催されているのは、
今年で60回を迎えた中央新聞社主催・
アクターズギルド国際映画祭の授賞式。
姫子ちゃんは昨年の最優秀新人賞受賞者として
プレゼンテーターを務める。
『―― 姫ちゃん、ちょっとお願い』
「は~い ―― ごめんね、
ちょっと行ってくる」
姫子ちゃんがマネージャーさんに呼ばれて行って
しまうと、早くも私は手持ち無沙汰になって、
とりあえず超絢爛豪華な料理が並ぶ
ブッフェコーナーへと向かった。
でも、その私の姿をゲスト達の輪の方から
見ていた人がいたなんて、
私はちっとも気付いていなかった。
結論から言えば、匡煌さんのマンションから
出てくるとき、
”まさか、同じパーティーじゃないよねぇ”
と、言っていた事が的中したんだ。
「―― おい、あそこにいるの姫じゃね?」
と、傍らにいる匡煌の注意を促したのは日向。
匡煌はブッフェコーナーにいる和巴を見て、
思わず飲みかけのウイスキーを噴き出しかけた。
「ぶっ ――
あ、あいつ、何でここにいるんだ?!」
「お前が呼んだんじゃねぇんか?」
「んな訳ねぇだろ。まだ彼女を奴の目に晒すのは
早過ぎる」
「甘いな」
「あ?」
「抜け目ない広嗣さんの事だ、お前と神宮寺との
縁談が持ち上がった時点で彼女の身辺調査
くらいはしてるさ」
「とにかく、あいつをさっさと帰さななきゃ」
「今は動くな、場所が悪過ぎる。
マスコミに格好のスキャンダルをくれてやる
ようなもんだぞ」
「くそ ―― っ」
匡煌は悔しそうに歯ぎしりをする。
そこへ、ダークスーツをきっちり着こなした
青年がやって来て、匡煌へ声をかける。
「宇佐見様。御前がお呼びでございます」
「……分かった」
***** ***** *****
前菜からメインディッシュ、デザートまで、
高級ホテルの絶品料理を心ゆくまで堪能し、
食後酒をのみながら、
ぼんやりゲスト達の顔ぶれを眺めていたら ――
匡煌さんの姿が視界に飛び込んで来た。
えっ、うそ、本当に同じパーティーだった……
彼の傍らには70才位の紳士と
振り袖姿の可愛らしい女の子がいて。
どうやら彼は紳士からその女の子を
紹介されているようだ。
紳士の方にも、女の子の方にも見覚えがあった。
女の子は、姫子ちゃんと同じ芸能事務所に
所属する人気女優・如月藍子
紳士の方は、恐らく大抵の日本人なら名前くらいは
聞いた事があるだろう。
戦前から生糸市場で一財を成し、
一時期は裏で一国の元首おも操っている
といわれていた、日本政財界の超大物・
神宮寺剣造。
如月藍子は神宮寺剣造の溺愛する孫娘だ。
何故、匡煌さんと彼女が一緒にいるのか?
そりゃあ、気になるけど。
それを彼に尋ねたりすれば ――
”妬いてるのか?”
なんて、茶化されるに決まってる!
だから、聞かない。
私に関係する事なら、きっと彼の方から
教えてくれるハズだから。
そんな事をうだうだ考えていたら ――
『あ~ら、和ちゃ~ん』
背後から随分と馴れ馴れしく声をかけられた。
少々ムッとして振り向けば、それは、
珍しくフォーマルに着飾った国枝静流さん。
「しずる、先輩……」
「楽しんでるぅ~?」
彼女は利沙・あつし姉弟のお姉さん。
総合商社『各務』本社の人事部勤務。
女の子らしくお洒落してる先輩を見るのも、
こんな公の場でここまで酔ってる先輩を見るのも、
久しぶりだ、
「あー、そうだぁ。ゴールデンウィークの旅行で
買ってきてあげたキムチと韓国海苔、食べたー?」
って、それ、何ヶ月前のハナシですか?
「あ、えぇ、頂きました。美味しかったです」
「でしょ、でしょ~う?
この静流さんが買ってきたんだもの
美味しいに決まってるじゃない」
「あ、ところで先輩……かなり酔ってます?」
「へへへ~、ちょーっとね」
何処がちょっとよ?
大トラになる一歩手前じゃんか。
「潰れる前に帰った方がいいですよ?」
「だーいじょーぶー、今日はナイトも一緒なの」
なんて、笑っていると ――
『―― 静流』
と、彼女を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、40代前半位の男性がやって来る。
どことなく、匡煌さんや大吾先生に似てる……
「あー、紹介するわ。私のフィアンセ・各務広嗣って
いうの。ヒロくん? 彼女が可愛い後輩・
小鳥遊和巴よ」
各務だって?! 似てるハズよっ。
匡煌さんのお兄さん。
(匡煌さんのご両親も離婚していて、
匡煌さんはお母さんへ引き取られ
現在・宇佐見姓なんだ)
株式会社・各務の次期社長。
うわぁ~……なんか、威圧感が半端ないな。
先輩がいつの間にか婚約してたって事にも
驚かされたけど。
まさか、その相手が各務家の長男だったとは
2重の驚きだ。
「―― キミの事は静流から色々聞いていました。
真面目で勤勉な上にとても優秀な学生だとか」
「いえ、買い被りです……」
「来年には弟もいよいよ家庭を持ち、
何かと忙しくなるだろうから、
支えてやって欲しい」
え? 弟も、家庭を ―― って、
大吾先生はもう**さんと海斗くんがいるから。
じゃあ……?
「あら、ヒロくんったら何も今言わなくたって……」
それ、どーゆう意味?
「何故だ? おめでたい事なのだから何も不都合はない
だろう?」
と、彼は私に視線を移した。
「なぁ? 小鳥遊くん」
「え、ええ……」
私はもう、頭の中が真っ白になりかけで、
そう応えるのが精一杯だった。
「早く結婚をして落ち着いてくれた方が、
部下達にとってもいい事なんだ。小鳥遊くん、
キミもそう思うだろ?}
にこやかに、ほほ笑みを絶やさず、
私へ語りかける広嗣さんは ――
恐らく、いや、ほぼ100%匡煌さんと
私の関係を知っている。
「……おっしゃる通りだと思います」
それから後、この広嗣さんと別れるまで
何を話したか? そして、このホテルから
自宅へ帰るまでまるで、覚えていない。
結婚 ―― 匡煌さんが結婚。
ただその言葉だけが、脳裏にこびり付いて
離れなかった。
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