7年目の本気

川上風花

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大学にて  

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「―― ちょっと、ちょっと和巴ぁ。断ったんだって?
 嵯峨野書房からのお誘い」


 教職員室から「失礼しましたぁ」と、出て来た私に
 利沙が話しかけてきた。


「うん、昨日断った」


 私の言葉に利沙は笑った。


「このご時世に、会社の方から内定取り付けてくれる
 なんて稀な事よ、就職しないの?」

「するよ? 壬生食堂に」

「って、実家の会社じゃん。手伝えって言われ
 てんの?」

「ううん、姉ちゃんはやりたい事すれば良いって言って
 くれるけど、今のところ私のやりたい事がうちの
 会社を大きくする事だから」
 
 
 缶コーヒーを飲みながら、おやつ代わりの
 菓子パンをパクつく。


「教授が、勿体無いって嘆いてた」

「そう?」


 利沙は頷きながらタバコを吸い始める。
  

「入学以来学年3位の成績ずっと維持してるのに!
 就職は家業ってどーよ」

「試験なんて授業を真面目に受ければ、意外と点数は
 取れるもんよ?」


 私は利沙にニヤリと笑う。


「それはいやみ?」


 歯をわざと食いしばりながら言う利沙に笑う。


「うんにゃ、経験者」

「たくもぉぉっ!」

「そうゆう利沙かて、家継ぐんでしょ~?」


 ”昭和の外食王”と名を轟かせた、国枝庄之助は
 利沙の祖父で。
 その事業を一気に拡張し、
 世界屈指のレストランチェーンに成長させたのが、
 利沙の母・みさえさんだ。

  
「ん~、まぁね」

「なんだかなぁ~、その締りのない答えは」

「母さんが言うには、少しでも私に上昇志向がある
 なら、まずは地道に下積みから始めて、自力で
 トップに登りつめなさいって」
 
「相変わらず凄いスパルタ……」

「もう、こうなったら、カウントダウンは思いっきり
 楽しもうね? お互い社会に出たら遊んでるヒマ
 なんか当分の間ありそうにないから」
 
「了解!」 
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