迷いオオカミの愛し方

川上風花

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本章

悪夢

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 どうしたんだろう……、
 凄く明るいところにいる自分。

 眩しい光に目が開けられないほどだ。

 キヨさんのマンションにいるハズのボク。
 どうしてこんなところに……

 そして、見慣れているが絶対に見たくない
 会いたくない顔がボクを見下ろしている。

 何故ここにあいつら(院長達)がいるのか? 

 そして、あいつにへつらっていた取り巻きの
 自称・地元の名士達がボクをじわりじわり取り囲む。
 

「さ~ぁチョコちゃんや、楽しもうじゃないか。
 服を脱いでごらん」

「そうだよチョコちゃん。また、私達を気持ちよく
 してくれるんだろ? 早くおいで」

「まず手始めに私のをおしゃぶりしてくれるかい?
 もう我慢ができない」


 口々に声を掛ける。


「いやだ! 絶対にいやだ! もう放っといて。
 お願いだから触らないで! 来ないで!」


 どこかに逃げる隙がないかと探す。

 差し出されてくる手を払いながら、
 じりじりと後ろへ下がった。

 いきなり後ろから羽交い絞めにされる。


「いやだ~! お願い、許して!」


 その時、『ユーリ』、と愛しい声が
 ボクを呼んでくれた。

 この声!
 この声に助けてもらいたい、助けて!


「ユーリ! どうした、大丈夫か? 目を覚ませ!
 ユーリっ!」


 薄っすらと目をあけた時、清貴の顔が目に入った。


「……キヨ、さん?」

「あぁ俺だ。どうした? 
 また、おっかねー夢でも見たのか?」


 あ ―― そう言えば、研究所にいた時は
 怖い夢でうなされた時ロイがいっつも
 こんな風に起こしてくれたっけ……


「夢……夢だったの……?」

「ったく、マジびっくりしたぜ。
 寿命が数年は縮んだ……」

「ごめん、なさい ―― でも、夢でよかった……」


 それは本心から出た言葉だった。


「嫌な夢だったんだな。話して楽になるなら聞くぞ」

「ん、も、大丈夫。疲れてるのに嫌な気分にさせたく
 ないから」

「ったく。そんなこと気にするな、話してみろ」

「ホントにごめん」

「そっか? わかった。でも、その気になったら
 話してくれな? 心の傷は隠すとひどくなる。
 だから心から放り出した方がいいんだ」


 あ、それ、ベネットも良く言ってた。

 これまでボクはその言葉で何度も救われてきた。
 
 ”―― 放り出した方がいい”か……
 そうかもしれない、心の傷を1人ぽっちで
 抱えているのはとても辛く苦しい事だから。

 いっそ全て放り出した方が楽かもしれない。


「ありがとキヨさん。も、ダイジョウブ」
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