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本章
予期せぬ再会 ―― 2
しおりを挟む『―― もうギブアップか? シリアル№A99』
『あぁっ?!』
自分の事を”シリアル№A99”
と呼んだその声は……?
ユーリについて来た足音の主が
ゆっくり余裕の笑みでその隣へ立った。
もう、ヘロヘロで足元もおぼつかない様子の
ユーリに対し、その男・ロイは息さえ乱れていない。
「ロイ・チャールズッ!! お、お前、
生きてたのか」
「フッ ―― 地獄の底から這い上がって来たのさ
……なぁんてな」
「……ボクに何の用」
と、聞いてからハっとして、
「まさか ―― お前がチェイサー、なのか?」
ユーリがいた研究所にはユーリのように脱走した
収容獣人を捕まえる役目の ”チェイサー”と
呼ばれる特殊捜索員がいるのだ。
「一昨日まではな」
「一昨日?」
「その様子だと、まだ何も知らねぇみたいだな」
「もったいぶらずに教えろよ」
「教えろよ? 人から教えを乞う立場だってのに
随分と偉そうだ」
「その気がないならいい。自分で調べる」
と、先を急ぐ。
「研究所は閉鎖された」
ユーリはその言葉を聞いてピタッと歩みを止めた。
「正確には内閣府の天下り団体に売却されたんだ。
国の財政赤字を少しでも削減する為にな」
「……その、天下り団体って」
「医療法人・誠和会」
「!!」
「管理母体が変わったってだけで、施設内部で
行われてた行為は継続されてるんだろう。
また、脱走者がぼちぼち出始めてるらしい」
「……」
「君子危うきに近寄らずだ。せっかく助かった生命、
粗末にするな」
と、ロイ・チャールズはそのまま足早に歩き去った。
「待って、ロイっ!!」
『ユーリ!』と声がして、進行方向から
小走りにやって来たのは名付け親・清貴。
「キヨさん……どうしたの?」
「どうしたの? じゃねぇよ。俺よか先に出たのに
まだ戻ってないから心配した」
「あ、ごめんなさい」
「今、一緒だった奴は友達?」
「あ ―― う、うん、そんなとこ」
清貴にはまだ何も話してはいなかった。
自分が遺伝子操作で造り出された化物だって事も、
求められれば誰にでも股を開く淫乱男だって事も、
そして、親にまで捨てられた卑しい存在
だって事も……
清貴が自分の秘密を知ってしまえば、
捨てられるかも、って恐れが強かったから。
怖くて言えなかった。
「さ、帰ろうか」
「うん……」
たとえこれが束の間の休息でもいい、
もうしばらくは幸せな気分に浸っていたかった。
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