迷いオオカミの愛し方

川上風花

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本章

雨の日の出逢い ―― 3

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カチャ……パタン…………

 彼が風呂から上がったらしい。

 次に、LDKの内扉も開いたが ――
 
 
 ”ぶっっ!!”
 
 俺は料理の合間に飲んでいた缶ビールを盛大に
 噴き出した。
 
 
「お、お前、その格好……」


 少年Aは一糸まとわぬ素っ裸で出て来たのだ。
 
 
「洗濯機の上にバスローブ置いてあったろ?」


 少年Aは俺の言ってる事が理解出来ていないのか?
 
 きょとんとした表情で突っ立ったまま。
 
 俺はそれ以上の追質問は諦め、
 脱衣所に行ってこいつの為に用意したバスローブを
 取って戻った。
 
 
「オラ。とりあえずコレを羽織っとけ」


 って、俺の手からバスローブを受け取ったものの
 ただ手に持ってるだけだ。
 
 
「ったく……1人で服も着られないのか?」


 仕方ないのでバスローブを着せてやり、
 『今メシ作ってるからそこら辺で座ってろ』と
 言い調理に戻る。
 
 

 大人しく椅子に座って、ジッと待つ辺り………
 ホント、躾のいい室内犬だな。


「コレ、おっさんが全部作ったの?
 施設ではコックさんが作ってた……」

「見てただろうが……ってか、お前、どこかの
 養護施設にいたのか?」

「よーごしせつ、って?」


 首をかしげてる。
 
 難しい日本語は理解不能か……。
 
 
「ま、いい。食え。好き嫌いしやがったら、
 口に突っ込むぞ」 

「き、嫌いなモノは……多分、ここには無いから、
 へーき…゙…」


 口に突っ込むと聞いて、なにやら誤魔化す彼に

 ―― じゃあ、何だったら食べれないんだ?

 と、カマを掛けてやる。


「……セロリとニンジン……」

「あぁ、ふたつとも今日のメニューには入ってねえな、
 安心して食え」


 余程その二品は苦手なのだろう。

 自分に好き嫌いが有ることを白状した事に、
 気付いているのか?
 どうか……怪しいもんだ。

 入っていないと解ると、安心しきった顔で
 「いただきます」と、言って食べ出した。


  (今度ネットで検索してみっか? 
   セロリとニンジン使ったレシピ)


 食べられない=嫌いだ、と聞けば、
 意地でも食べさせたくなるモノだ。


「それ食ったら、寝室でひと休みしてていいからな。
 時間になったら起こしてやる」

「……ん、わかった。あ、あの……おっさ ―― 
 じゃなくて……」

「俺はキヨ。柊 清貴だ」

「……キヨさん」

「んー?」

「……めいわく、かけて、ごめんなさい……」

「なんちゃあないよ」 

「……」 

   
 それからその少年Aと2人で夜食をとり、
 出勤の時間まで仮眠をとって ――、
   
   
「―― ちゃんと家に帰るんだぞ」

「……」

   
 マンションから出た所で別れたが……
 
 
「あ ――」


 翌朝、宿直明けで帰れば、
 奴はまた、ゴミに埋もれて眠っていた……。
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