胸騒ぎの恋人

川上風花

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第1章 邂逅編

ブランニューデイ

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 そして、翌朝 ――
 
   
 勇人はカバンを掴んでダイニングを出ようと
 さっさと先に歩く。
 すると「待てよぉ」とあずさが勇人の腕を掴んだ。
 

「(な)んだよ、離せって」

「僕、学校の場所知らないんやけど」

「……」


 (……そうでした)
 

 ガクッ↓と頭を垂れる勇人。


「―― って事で着替えて来るから待っててね」

「急げよ」


 (ったく、面倒っちいな)


 ―― 数分後


「はい、お待たせ」


 しばらくするとあずさが制服を着て現れ、
 勇人はそのあずさを見てギョッとした。


「ちょ、ちょっと待て。まさか、
 その格好で行く気じゃあねぇだろーな」
  

 あずさが着てきたのはブレザータイプの制服。
 これから通う嵯峨野西高校”通称・西高”は
 学ランタイプとこのブレザータイプ、二種類から
 どちらか選べる。
 
 あずさは高2男子の平均体型よりやや小柄で
 華奢な為、制服の仕立てはちょっと時間がかかる
 と、言われていたのだが手嶌が無理を言って急がせ
 今日の転校初日に間に合ったのだ。


「あ、ちょっと待ってろ、俺が中坊ん時着てたやつが
 あっから」
 
 
 と言い、離れへ行って、飛んで戻ってきた
 その手にはしっかり学ランが握られていたのだ。
 
 
「そんなウザダサの着せられっかっての。
 どーゆう訳かお前が来るの分かってて
 皆んな手ぐすね引いて待ってんだ」
 
 
 ”僕が来るの?”
 ”手ぐすね引いて??”
 どーゆう事なんかな……
 
 
「今すぐこれに着替えろ。時間がねぇからとりあえず
 今は上だけな」 


 ……マジで?
 勇人から手渡されたソレを見たあずさは
 目がテンになり、表情も固まった。



*****  *****  *****


「ねーぇ、待ってよー!!」


 勇人は大股歩きでどんどん先へ歩いて行く。


「とろとろ歩いてんじゃねぇー。遅刻すっだろ」


 そう言いつつも、勇人は少しスピードを緩め
 あずさの歩く速さに合わせた。
 

「せっかく縁あって兄弟になったのにぃ、
 仲良くしよーよ。ね? お兄ちゃん」
 
「なっ ―― バカっ離せって」


 ふざけて後ろからあずさが抱きついてきた。

 すぐそこ学校なのに。


「はや……と?」

「は(ひ)?」


 あずさの頭を押さえつけながら
 勇人が振り返るとそこには、
 1人のさわやかな青年が立っている。


「おはよう。朝から賑やかだねぇ」

「あ ―― 優か、おはー」


 勇人はあずさを自分から引きはがし挨拶をした。

 にっこり微笑むその青年は特進クラスS組、
 西園寺 優光(さいおんじ まさみつ)。
 
 身長は勇人と同じ位で容姿端麗。
 知的な物言いの彼は誰からも好かれ、
 一目(いちもく)置かれている幼なじみ。
 因みに西高の現・生徒会会長。
  

「ところでこの前聞いた事、真面目に考えてくれたか」

「え……? 俺、何かお前に聞かれてた事あったか」

「ったく……生徒会の次期副会長の件だ」

「あぁ ―― アレね。なら考えるまでもねぇ。
 俺、なる気もやる気もねぇから。あ、そうそう、
 その代わりと言っちゃあなんだが、こいつ推薦する」
 
 
 と、勇人はあずさを示した。
 
 
「へ? な、何さ??」

「あー、もしかして彼が噂の弟くん?」

「……」


 (な、何か僕、ガン見されてる?)
 
 
「あ、失礼。俺、この勇人とは小学校の時から
 一緒なんだ。西園寺 優光。よろしく」
 
「ぼ、僕は手嶌あずさです。よろしく」  __ 
 

 優光に見つめられ何故かあずさは顔を赤らめる。


「職員室寄らなきゃいけないから、
 先に行きますね……」
 
 
 あずさは2人より先に歩き出した。
 
 その後姿を見送る優光の視線はとても熱い。
 
 
「おい」

「……」

「おい、優光」


 優光はハッとして
 
 
「あぁ、呼んだ?」

「お前……奴にはぜってー手ぇ出すなよ。あいつ
 キズモノにでもした日にゃあ俺はおふくろと
 姉貴に袋叩きだ」
   
「ふふふ……善処してみるよ」
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