我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
上 下
135 / 145
後日談 エリック編 お兄様、全年齢ですよ?!元兄の愛に溺れそうです!!

8  ぬくもりはベットの横に

しおりを挟む


「うう~~。エリック……ごめんなさい……」

 私はベットの中からチラリと顔を覗かせてあやまった。
 朝には熱が下がるかとも思ったが、下がらなかったのだ。
 以前エリックがお世話になったアベル先生の話によれば、『疲れが出た』のそうだ。
 アベル先生の「お2人とも、ご無理をされませんように……」との言葉が胸に刺さった。

 私が申し訳なくてエリックの顔を見るとエリックは優しく微笑んだ。

「なぜあやまる? こうして私が横に居られる時に寝込んでくれて私はほっとしている。
 休みなら、ずっとそばにいて何かあってもすぐに手を貸せるからな」

 そしてエリックは少し冷たい指を私のおでこを何度か撫でた後に頬や耳を撫でた。
 私はその手が気持ちよくて、思わずエリックの手に頬を寄せた。

「でも退屈ではありませんか?」

「退屈ではない。むしろ幸せだ」

 エリックが嬉しそうに目を細めるので、私はエリックの頬や耳を撫でる手が離れないように手を添えた。

「幸せですか? こんなことが?」

 するとエリックが今度は両手で私の耳や髪を撫でながら言った。

「なぁ、ベル……お前がまた、ヴァイオリンと出会っていない頃。
 こうして2人で話していた事を覚えているか?」

 それはきっと私がこの世界に来たばかりの頃の話だろうか?
 確かに毎日毎日、エリックと少し気まずい思いをしながらお茶を飲んでいたことを思い出した。

「ふふふ。貴族の心得などを教えられた時ですね。
 覚えてますよ」

 するとエリックが目を細めたかと思うを両手で私の頭を抱き込んでおでこにキスをした。

「実は私は最近まであの日々が人生で一番幸せだったと思っていたんだ」

「え?」

 あの時のエリックはいつも不機嫌そうに眉を寄せてとてもじゃないが、幸せそうには見えなかった。
 むしろ、苦痛だと思っていたような気がする。

「そうは見えませんでしたよ? エリックはいつも楽しくなさそうでした」

 するとエリックが「ふっ」と笑うと寝ている私の耳元に唇を寄せてきた。

「ああでもして、自分を押さえなければ、私は身分をはく奪されていたかもしれない」

 私は思わず怪訝な顔をしてエリックを見た。

「どういう意味ですか?」

「ああ、同意なくベルに手を出した場合は『廃嫡』これが父と母から出せれた条件だったんだ」

「はいちゃく……? 廃嫡??? えええ??」

「当然だ。ベルはこの国の王女だぞ? そんな相手にもし合意なく手を出せば国際問題だ。
 しかも表向きにベルは王太子の婚約者だぞ?
 『廃嫡』でもぬるいくらいだ。
 まぁ、家族のスキンシップは認められていたからな。
 それで我慢したが……」

 廃嫡なんて聞いたことはあるが全く現実感のない単語がエリックの口から飛び出して私は慌ててしまった。

「そうだったのですか?」

 驚いていると、エリックが困った顔をして私の瞼にキスをした。

「悪い……話過ぎたな。もう少し寝たらいい。ずっとここにいるから」

「約束ですよ?」

 私はじっとエリックの顔を見つめた。

「ああ。約束だ」

 こうして私は目を閉じたのだった。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

処理中です...