我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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後日談 エリック編 お兄様、全年齢ですよ?!元兄の愛に溺れそうです!!

1  元兄の秘密(1)

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「ベル。朝からずっと座りっぱなしだろう?
 それでは身体に良くない。
 庭園を散歩しようか?」

 私は、永遠に終わりは来ないのでないかという書類を見上げながら、溜息をついた。
 今日は……。

 いや!!

 ここは、と言うべきだろう。


 私は最近、女王になるための儀礼の作法の勉強が終わり、座って行う勉強と実務に切り替わっていた。
 来る日も、来る日もペンを持ち続け、そして、ヴァイオリンを弾く。

 そんな日々を繰り返していた。

 ただ救いだったのは……。

 私は、隣で優しい顔で私を見ている元兄。エリックとずっと一緒にいれることだった。


「そうですね……全く終わりが見えませんし……。
 ペンを持つのにも疲れました……散歩に行きます」

 お兄様、改めエリックは、常に私のそばにいてこうして私を気遣ってくれていた。
 少し過保護すぎるのではないかという程の気遣いっぷりだ。

「ベル。手を」

「え? 大丈夫ですよ?」

「そうか?」

 私が手を取るのを断ると、エリックは目に見えて落ち込んだので、私はエリックの腕に自分の腕を絡めた。

「こういう時は、腕を絡めると、教えてくれたのはエリックですよ?」

 するとエリックは嬉しそうに微笑んだ。

「ふっ。そうだったな。えらいなベル」

 エリックはまるで小さな子供を褒めるように私の頭を撫でながら褒めてくれた。
 私はこうして、子供のように頭を撫でられるのが好きだったので、喜んで受け入れた。

「ふふふ。そうでしょ? もっと褒めて下さい♡」

「ああ」

 エリックは優し気に微笑むと、私が満足するまで頭を撫でてくれた。
 最近の私はするべきことが多すぎるので、こんな風にエリックに褒められることが、モチベーションになっていた。
 
 エリックと2人で庭を歩いていると、白衣の男性に声をかけられた。

「おや? エリック様ではありませんか?!
 こちらにいらっしゃっていると伺っていたので、てっきり私の部屋に運ばれて来ると思い待っていましたが……。
 ふむ……今日は、顔色がよろしいですな?」

 私は思わずエリックを見上げた。
 するとエリックもどこか視線を泳がせて私から視線を逸らせた。

 怪しすぎる。
 これでも私はエリックの元妹だ。
 この後、この男性と別れた後にエリックに問いかけてもきっと、答えてはくれない。
 それならば……。

 私はにっこりと微笑むと男性に話しかけた。

「こんにちは。はじめまして、ベルナデットと申します」

 すると男性が驚いた顔をした。

「ベ、ベルナデット王女殿下?!
 では……。エリック様の想い人とは……王女殿下のことだったのですか?」

 男性は「なるほど」と納得したような顔をした後に、チラリとエリックを見た。
 エリックはなんとも言えない顔で、頭を掻いていた。

「それで、エリックとはどのようなご関係ですの?
 よろしければ、教えて頂けませんか?」

 私は最近習得したお母様直伝の『秘技! 女王スマイル』を浮かべた。
 すると男性は姿勢を正すと、男性は口を開いた。

「私は、アベルと申します。
 この城の医師です。私は外傷以外を担当しています」

 イリュジオン国の医師は、内科も、外科も、耳鼻科も、整形外科も、眼科も、皮膚科も、とにかく全てのことをすべて1人の医師が兼任していた。
 私が異世界に来た当初、ケガも見て、風邪も見て、薬まで調合し、全てを1人の医師が担当していることに驚いたが、どうやらレアリテ国は、医師の職務も別れているらしい。

 だがそれならば、なお一層疑問が湧き上がった。

(エリックは、騎士団で戦闘訓練にも参加していたから、ケガはよくしていたみたいだけど……)

 ケガをしていたのは知っていたが、それならばお世話になるのは外傷を見てくれる医師のはずだ。
 外傷以外というところに疑問を持って、私は、アベル医師に尋ねた。

「エリックはどうしてアベル先生のところに?」

「はい。よく倒れて運ばてきていましたが……今は顔色が良いようで安心しました」


――……倒れた?

 エリックが?!
 
 しかも!!

 よく?!

 私がエリックの顔をチラリと見ると、エリックが顔を片手で覆い俯いていたのだった。




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