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後日談 サミュエル編 奥手な2人の誘惑大作戦!!

9  穏やかな時間

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「……ん?」

「お目覚めですか?」

 意識が戻ると、全身に心地よいあたたかさと人肌を感じた。

(気持ちいい~~)

 寝ぼけた頭で私は、すりすりとその温もりを撫でながら頬をすり寄せた。

「ふふふ。まだ寝ぼけているのですか?
 ですが、そのように…身体を………ん……。
 ベルナデット様……その……あまり、すり寄られては……。
 ベルナデット様の身体の負担になりますから……。また夜に……んん……」

(……サミュエル先生の声?)

 私が眠りから覚醒して、声のした方を見上げると、サミュエル先生の蕩けそうな甘い顔が見えた。

(そうだ……昨日、サミュエル先生が戻られて……戻られて?!)

 気が付くと、私はサミュエル先生を抱きしめて、胸に顔を擦り寄せていた。

「あ、あ、あ、あの!!」

 私が飛び上がって離れようとすると、サミュエル先生に抱きしめられた。

「そんなに慌てると危ないですよ?
 おはようございます。身体は大丈夫ですか?
 すみません。ベルナデット様は初めてだというのに……余裕がなくて」

 私は昨日のことを思い出して顔を真っ赤にしてしまった。

「い……いえ……そんな……」

 サミュエル先生が私の髪に口付けをしながら優しく撫でながら言った。

「今日は……ゆっくりとしますので……」

「ええ~~?! いえ……充分気持ちよく……私何を?!」

 自分で自分の言葉に驚いていると、サミュエル先生の心臓も早くなった。
 
「ああ~~。早く夜が来ればいいのにと願ってしまいますね」

「サミュエル先生……」

 私が呟くと、サミュエル先生が困った顔で笑った。

「ベルナデット様。そ・れ? 昨日はちゃんと言えたのに……また『先生』がついていますよ」

 そうなのだ。
 私は昨日、身体を重ねながら今後は『サミュエル』と呼ぶことを約束した。


「それをおっしゃるなら、サ、サミュエルだって、『様』がついてます」

 するとサミュエルが「ああ」と言って私にキスをした。

「すみません。ベルナデット」

 サミュエルの名前呼びの効果は絶大だ。
 私は耳まで真っ赤になっているだろう。

「本当に身体は大丈夫ですか?」

 サミュエルが心配してくれたので、私は笑顔で答えた。

「はい。今日はいい天気ですから、のんびりと散歩でもしませんか?」

「ふふふ。はい。では、支度して来ますね。朝食をご一緒しませんか?」

「はい」

 こうして着替えのためにサミュエルは、一度部屋に戻られたので、私も支度を整えた。
 しばらくして戻られたサミュエルが、どこかほっとした顔をしていて、私は不思議に思ったが、とても穏やかな顔だったので、無理に聞くことは止めておいた。


 そして、朝食を済ませると私たちはのんびりと庭を散歩することにしたのだった。


+++


「ふ~~。いつも窓から見ていましたが、庭の奥にはこんなに素敵な場所があったのですね」

 私たちはいつも見ている場所から少し離れ、木々が生い茂る庭の外れを2人でのんびりと歩いていた。
 ここは自然を生かした庭造りのためか、小川が流れていたり、草木も最低限、整える程度の手入れがされていた。

「本当に……」

 私はサミュエルの腕に自分の腕をかめて、時折笑い声をあげながら話をしていた。
 ただ一緒に庭を歩くだけで、とても心が満たされていた。

 小川の近くに来ると、ふと、サミュエルが立ち止まって、私をじっと見た。


「人というのは怖いですね」

「え?」

 サミュエルの口から『怖い』なんて言葉で出たことに私は驚いた。

「出会った頃は、ひたむきなあなたが、眩しかったのです。
 あなたは王子殿下の婚約者だったから、何度も何度もあなたをことをあきらめようと思ったんです。
 遠くから見れるだけでも幸せだと、そう思うことにしていました。
 ですが、あなたと共に歩めるとなると、あなたからの愛がほしくなりました。
 離れていた時は、顔が見れるだけでもいいと思っていたのに……今はあなたに触れたくてたまらない。私はどんどん貪欲になっています」

 私はサミュエルの腕に自分の頭をくっつけながら言った。


――……私の怖いこと、それは……。


「サミュエル……私もです。これほど自分が欲張りとは知りませんでした。
 ねぇ、サミュエル。お願いがあります」

「なんでしょうか?」

 サミュエルが不思議そうな顔で私を見ていた。

「私が、間違ったら甘やかさずに止めて下さいね。
 きっと女王になった私を止められるのは、サミュエルだけです」

 間違うことはそれ程怖いことではない。
 だが、間違いを誰にも止めてもらえず、幼い頃に読んだ『裸の王様』のように間違った方向に突き進んでいくのはとても怖い。

 するとサミュエルが私の頬に手を置くと、深く口付けた。

「ふふふ。ああ、そんなことを言えてしまうあなたは、狂おしい程に美しい。
 甘やかして、私に溺れさせたいと思ってしまいます。
 ですが、わかりました。
 それが、ベルナデットの望みでしたら叶えます。
 では、あなたも、私が間違っていたら止めて下さいね」

「サミュエルが間違うところが想像できません!!」

 私が目を丸くすると、サミュエルが困ったように言った。

「そうですか? 今回、コンラッドがいなかったら本当に無理だったと思うほどでしたよ」

「ふふふ。少し妬いてしまうくらいお2人の絆は深まったようですよね。
 王配のサミュエルと宰相のコンラッド君の仲がいいのは頼もしいですわ」

「そうですね。あなたを取られないためにも精進します」

 私たちは笑いあうと、また散歩を続けたのだった。




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