113 / 145
後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!
6 レアリテ国宮殿にて(1)
しおりを挟む私たちは馬車に乗ると、女王陛下の住む宮殿に案内された。
宮殿に到着するとすぐに、私とクリス様は謁見の間に向かった。
「はぁ~緊張します」
「私もだ。
実は、私もまだレアリテ国の女王陛下にはお会いしたことがないんだ」
私はクリス様にエスコートされながら道案内をしてくれる騎士の後ろについて宮殿内を歩いていた。
この国の宮殿は、我が国のような大きなお城ではなく、小学校の校舎くらいの建物とグラウンドがついたような規模の建物だった。
外装と内装はとても豪華なのだが……。
「イリュジオン国王子殿下並びに、王太子妃殿下のご入場!!」
扉が開かれ、私たちは女王陛下の御前に向かった。
そこで私はとても信じられない光景を目にした。
(ど、ど、ど、どうして、実父が女王陛下の隣にいるの~~~~???)
もしかして、実父は女王陛下の側近か何かなのだろうか?
それとも、来客????
それにしては距離が近すぎる気がする。
通常であれば、例え側近と言えども、女王陛下のすぐ隣には立たない。
(不敬じゃない? 私の身内が不敬すぎる件とか言って投稿できそうなレベルじゃない???
ちょっと~~~~何してるの~~~~~???)
私は青い顔で、実父を見てオロオロしていた。
今すぐにでも、父を担いで女王陛下から引き離し、土下座してお詫びしたい気分だ。
私たちが女王陛下の目の前について立ち止まると、女王陛下がゆっくりと口を開いた。
「2人とも、長旅ご苦労様でした。
クリストフ殿下。
娘をとても大切にして下さっていると聞き及んでおります。
心より感謝いたしますわ」
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・?
今、なにか不可解なセリフを聞いたような……?
――……娘?
娘って言った?
誰が?
誰の?
え?
何これ?
どういうこと???
私の頭の中に疑問符が乱れ飛び、とても思考のできる状況ではなかった。
すると、隣でクリス様がゴクリと息を飲んで口を開いた。
「陛下。失礼を承知でお伺い致します。
先程陛下の仰っていた『娘』とは、ベルナデットのことでしょうか?」
女王陛下が美しく微笑んだ。
「ええ。ベルナデットは正真正銘わたくしの娘ですわ」
ええええええ~~~~~~~?!
女王陛下の娘?!
私が?!
嘘でしょ?!
この時……。
私の混乱した頭はとても多くのことを考えていた。
母に会えて嬉しいとか……。
母は女王陛下だったの?? とか……。
どうして誰も教えてくれなかったの? とか……。
だが、私に頭の中を一番に占めていたことはこれだった。
――……実父が不敬罪じゃなくてよかった☆
女王陛下が私の母ということなら、きっと実父は女王陛下の配偶者だと考えられる。
それなら、陛下の隣にあんなにくっつい立っていても不敬罪にはならないだろう。
私は少しだけほっとしたのだった。
+++
全く冷静さ無くしていた私に対して、クリス様が驚いた顔をしたのは一瞬で、すぐにいつもの顔に戻っていた。
「大変失礼致しました。女王陛下。この度は結婚のご報告が遅くなってしまったことイリュジオン国王子としても、ベルナデットの夫としてもお詫び申し仕上げます。」
「事情は知っていますし、結婚式が終わってやるべきことが終わってゆっくりとこちらに遊びに来てほしいとイリュジオン国の陛下とお妃様にお願いしたのはこちらですので、謝罪の必要ありませんわ。
ふふふ。本当にクリストフ殿下は聡明ですね」
女王陛下とクリス様の話を横でじっと聞いていると、実父が声を上げた。
「2人とも、長旅疲れでしょう?
部屋を用意しています。
今日はそちらに泊まって、我々と一緒に夕食をどうでしょうか?」
私とクリス様は目を合わせて微笑んだ。
そして、クリス様が口を開いた。
「ぜひ!!
また、陛下にイリュジオン国の王妃より書状を預かっております。お納めください」
私はゆっくりと陛下に近づくとクリス様のお母様であるイリュジオン国の王妃様から預かった手紙を渡した。
「ありがとう」
陛下は嬉しそうに笑いと、小声で囁いた。
「一緒に食事をするのが楽しみだわ」
私はなんだか恥ずかしいやら照れくさいやら、どうしたらいいのかわからなくて「コクリ」と頷いた。陛下は「ふふふ」と笑った。
実父はずっと微笑ましそうにその光景を見ていたが、こちらを見てもう一度微笑んだ。
「では、2人とも、また夕食でね」
「はい」
そうして私たちは謁見の間を後にした。
謁見の間を出て、案内されて部屋に入るとクリス様が私を抱き寄せた。
「び、び、びっくりしたぁ~~~~~~。
ベルって、レアリテ国の女王陛下の娘なの???
ったく、どうしてこんな大事なことを、父上は私に知らせてくれなかったんだ?」
どうやらクリス様も全く知らなかったらしい。
「本当ですね」
するとクリス様が私の首元に顔をうずめながら囁くように言った。
「ベルって、陛下にそっくりだね。
特に目元が」
「そうですか?」
私は緊張して、母の顔を見れなかった。
「うん」
クリス様は私の頬にキスをしたかと思うと、おでこにキスをして気が付けば顔中にキスの雨を降らせた。
「ふふふ。クリス様ったら突然どうされたのですか?」
私がクリス様を見つめると、クリス様がチュッ♡ と唇にキスをした。
「よし!! まさかベルのご両親にごあいさつも兼ねた旅行だったなんて!!
ベルの両親に気に入られるように頑張るから!!」
私としては、母だと言われても恐れ多くて全く実感がわかないし、実父はクリス様のラジュル国との外交手腕を褒めちぎっていたので、クリス様が気にすることはないとは思う。
だが、私のためだということが痛いほどわかって嬉しくなった。
チュッ♡
私は自分からクリス様の唇にキスをした。
するとクリス様が真っ赤になった。
「え? ベル?」
「ふふふ。ありがとうございます」
クリス様は真っ赤になって首を押さえながら小声で呟いた。
「~~~~~~夜は覚悟してね?」
私は赤くなった顔を隠すようにクリス様に抱きついて小さな声で「はい」と答えたのだった。
12
お気に入りに追加
1,568
あなたにおすすめの小説
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました
雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた
スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ
この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった...
その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!?
たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく
ここが...
乙女ゲームの世界だと
これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる