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【エリック】(真相ルート)

16  様々な再会

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船を降りると、見覚えのある人物が立っていた。

「エリック様、ベルナデット様、長旅お疲れ様でした」

「ああ。ロランも色々と報告感謝する」

「いえ……」

 背筋を伸ばし颯爽と立つ男性は兄の側近のロランだった。

「お兄様……なぜここにお兄様の側近のロランが?」

「実は、ロランには数年前よりここでトリスタン殿の補佐の1人として働いて貰っていたのだ」

(そういえば、ずっと姿が見えないと思った!!)

 ロランは数年前から全く姿を見なくなっていた。
 お兄様がロランの代わりの側近を側に置くこともなかったので、てっきりお兄様は側近を持たないのかと思っていたのだが、まさかレアリテ国にいたとは思わずに私は驚愕した。



「お久しぶりです。ベルナデット様。本当に美しくなられましたね」

「ええ。久しぶりね。でもどうしてここに?」

 私の問いかけにロランは誇らしそうに笑った。

「エリック様が王配になられる時に、側近が何も知らなくては、主をお支えすることなどできませんから。エリック様の音楽学院の入学が決まってから、私だけ先にレアリテ国に入り、トリスタン殿下の側近のゴードン様について王配補佐の仕事を学んでおりました」

「そんな前から……?」

 私はお兄様を見た。

「まさかお兄様が時々家をあけていたのは、こちらに来られていたからですか?」

「そうだ。ベルの王配になるために、表向きは学校のことを相談するという名目でな。私も王配教育を受けているぞ」

 目を大きく見開いて兄を見た。

「え? 初耳ですけど?」

(待って……音楽学院に入学した時って……私まだ、クリス様の婚約者じゃなかった?!
 そんな前から王配の勉強って……)

 私が信じられない思いで尋ねると、兄は素っ気なく言った。

「今、言ったからな」

「あの……どうしてそんな前から王配の勉強を?」

 兄に恐る恐る尋ねると、兄は当たり前だいうように答えた。

「ベルのことを愛していたからに決まっているだろう?」

「え?」

(愛してって……だって、音楽学院の勉強だって大変だのに……それなのに……王配の勉強って)

 そんな前から?

 私のために?

 決まってもいないのに?

 兄のことが愛おしくて愛おしくてたまらなかった。

「そんな……無駄になるかもしれないのに……」

「無駄にならないかもしれない。いざという時に備えていない方が後悔するだろ?」

 私は音楽学院時代の兄を思い出した。
 いつもどこか疲れた顔をしていて、よほどチェロ科は厳しいのかと思っていた。

「音楽学院だって、大変だったのに……」

 私の王妃教育は音楽学院に入学する頃にはだいぶ少なくなっていた。
 だから私は学院時代は、ヴァイオリンに集中していたのだ。

(私が主席などおかしいと思った……兄はクリス様の側近としての仕事と、王配教育と、音楽学院と3つも掛け持ちしていたのだ)

 私は思わず兄に抱きついていた。

「無茶しすぎです」

「無茶もするさ……ベルとの将来のためだ」

「お兄様……」

 思わず抱きしめる手に力を入れると、兄も私をきつく抱きしめ返してくれた。

「うっ……うっ……ずずず~~」

 すると横からすすり泣くような声が聞こえた。
 ふと泣き声の方を見ると、ロランがハンカチで顔を押さえながら大粒の涙を流していた。
 私たちは、抱き合うのをやめ、ロランの方を見た。

「エリック様!! 
 よかったですね!! 
 やっと、やっと報われたのですね!! 
 本当によかったですね!! 
 ああ~~~~~~~~よかった!!」

 するとさっきまで普通の顔をしていたお兄様がみるみるうちに赤くなっていった。

「ロラン……その、それ以上はやめてくれないか」

 兄は顔に片手にを当てて照れていたが、興奮状態のロランは止まらない。

「いえ!! こんなにめでたいことはありません。
 私はこの日のことをそれはそれは、長いこと願っておりました!!
 よかった!! エリック様の想いが報われてよかった!!」

 なんだか私まで恥ずかしくなってきて、隣で頭を掻いている兄と目が合うとなんだかくすぐったいような感覚があったが、小さく笑いあった。

 それから私たちは馬車に乗り、私の母であり、この国の女王陛下の待つ宮殿へと馬車を走らせたのだった。


+++


 宮殿に着くと、私たちは女王陛下の執務室に案内された。

 ロランが扉をトントントントンとノックした。

「どうぞ」

 すると女性の声が聞こえた。
 扉が開かれて、私たちは部屋の中に入った。

(この方がお母様……)

 部屋には実父と、凛とした美しい女性が立っていた。

「待っていたわ。長旅ご苦労様。
 初めまして……かしら? 
 私は幼い頃に何度か会いに行っているのだけど」

 私には残念ながら全く記憶はなかった。

「申し訳ございません」

「ふふふ。あやまらないで。ベル。
 私はブリジット、あなたの母よ。
 散々離れて今更こんなことをいうのもはばかれるけれど……あなたさえよければ、母と呼んではくれないかしら?」

 私は戸惑いながらも「お母様」と呟くように言った。
 離れていたのは確かに淋しかったかもしれない。

 だが暗殺の可能性があると言われて、守るために離れたと言われたら、納得するしかない。
 私も自分の子供が暗殺されると思えば、同じ選択をするだろう。

「ベルナデット!!」

 私は次の瞬間、母に力いっぱい抱きしめられていた。

「会いたかったわ!! 大きくなったわね!! 会いたかった!!
 もうあなたに笑いかけてもらることがないかもしれないと……」

 震える母を今度は私が抱きしめた。

「お母様」

 私はなんと言えばいいのかわからずに、ただ静かに母を抱きしめていた。




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