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後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!
1 結婚式が終わって
しおりを挟む結婚式が無事に終わり、私とクリス様はラブラブの蜜月を過ごしていると思いきや……?
「ああ~~。も、もう限界だわ~~~~」
結婚式を終えた私は連日お客様に結婚のあいさつを続けていた。
基本的に日の出ている時間はクリス様と一緒に謁見の間で、お客様に結婚のご挨拶か、私だけでご挨拶。
このご挨拶という言葉に中には『顔見せのためのお茶会』も含まれているし、『顔見せのための演奏会』も含まれている。
一日中、あいさつをしていると私はそれだけで一日の終わりにはフラフラになっているが、クリス様はそれからさらにさらに執務があるのだ!!
体力の限界の私は先に寝る支度を整えて、ベットの中で執務の終わるクリス様を待っていた。
というのも、一度寝ないようにソファーで待っていたこともあるが、眠ってしまって疲れているクリス様にベットに運んでもらうという失態をおかしてしまったので、それ以来クリス様を待つのはベットの中だ。
「う……今日こそは……今日こそはクリス様に『おやすみなさい』って言うんだから……」
うとうとしながら眠気と闘い。
ひたすら寝室のドアが開くのを待つ。
(……はっ、今……寝て? ダメよ……寝ちゃダメ……寝ちゃダメ…………)
「寝ちゃ……ダ……メ……く――――」
そうして私はいつの間にか意識を手放していた。
+++
ベルナデットが寝入って数時間後……。
執務を終えて、クリスが急いで寝室に入って来た。
そして足音を立てないように灯りのついたベットに向かう。
(……やっぱり寝てたか……)
クリスは困ったように笑うと、寝支度をするために一度寝室を出た。
普段なら寝る支度を整えて寝室に入るが、今日はいつもより早く執務が終わったので、もしかしたら起きているベルナデットと話が出来るかもしれないと思ったのだ。
(もうずっと、ベルとのんびり過ごせていないな……)
クリスは溜息をつくと、湯浴みに向かった。
結局、結婚式が終わって一度も2人っきりでゆっくりと話をすることもできない。
謁見の間の控室で話せるが、多くの文官や護衛騎士や側近も同席しているし、謁見相手の確認をしなければならないので、とてもゆっくり話を出来る空気ではなかった。
寝支度を整えて寝室に戻ると、クリスはベルナデットの寝顔を見ながら微笑んだ。
(ふふふ。寝顔……可愛いな~。でも、寝顔以外の顔もみたいな~~。
ああ~~もう!!
ふぅ~~。同じベットで寝れるだけでもいいと思うか……
それとも同じベットで寝ているのに……と悲しんでもいいのか……
考えても仕方ない)
そうして、灯りを消すとベットに入った。
ベルナデットの体温でベットの中はとてもあたたかった。
(ああ~幸せだな……でも、そろそろベルとゆっくり過ごしたい……あいさつが落ち着いたらすぐに休みを申請しよう)
「おやすみ、ベル」
チュッ!!
クリスは寝ているベルナデットの唇にキスをすると自身も疲れた身体を休めるために目を閉じた。
+++
「ん~~?」
朝の光で目を覚ますと、私は急いで隣を見た。
「ああ~~~!! また先に寝ちゃった!!」
私はがっかりと肩を落とした。
ベットにはすでにクリス様の姿はなかった。
ここ最近毎日、クリス様の姿を寝室で見ていない。
「クリス様……こちらで休まれているのかしら?」
ずっと寝室でのお姿を見ていないので、私は少しだけ不安になった。
(まさか、クリス様……別の部屋で寝てるとか?
これって……まさか!! 倦怠期???
蜜月も来ていないのにいきなり倦怠期?!
私……寝てばかりいたからクリス様に飽きられた?)
実は私たちはまだ子供が出来るようなふれあいはまだだったのだ。
クリス様と直接のふれあいは結婚してからにしようと約束したのだ。
私は準備を手伝ってくれる侍女に何気なく聞いてみた。
「クリス様は、こちらで休まれているの……よね?」
「ええ」
侍女は笑顔で答えてくれた。
(よかったぁ~~~~。倦怠期じゃなかった!!
お忙しいだけなのね……。
よし!! 今日こそ!! クリス様を待つわ!!)
そう決意して、疲れすぎて待てずに寝てしまう日が続いて1ヵ月程たった頃……。
控え室でクリス様と、次の予定を確認しているとクリス様の護衛騎士の1人が急ぎ足で入って来た。
「失礼致します!! クリストフ殿下、陛下より言伝を申しつかってまいりました。
本日のあいさつを終えたら、国王陛下の執務室にベルナデット様とお2人で来られるようにとのことです」
「そうか!!! わかった、と伝えてくれ」
「はっ!!」
クリス様はとても嬉しそうな顔をしたが、私は理由がわからなかったので微笑みながら頷いた。
どうされたのかクリス様に聞いてみたかったが、ここは控えの間で多くの文官や騎士も控えている。
だから何も言わずに待つことにした。
+++
今日の全てのあいさつを終えると、クリス様が耳元で囁いた。
「今から、父上の執務室に行こう」
「はい」
私はクリス様にエスコートされながら、陛下の執務室に向かった。
国王陛下の執務室に行くと王妃様もいらっしゃった。
「ふふふ。待っていたわ。2人共」
王妃様が私たちの顔を見ると、嬉しそうに笑った。
「父上、母上。ごきげんよう。それで、父上。話とは?」
クリス様が待ちきれないといった様子で声を上げた。
「せっかちじゃな……」
陛下は溜息をついた後、「ゴホン」と咳払いをした。
「そなたら2人には隣国のレアリテ国の女王陛下に結婚の報告に行ってもらいたい」
「……」
国王陛下はとてもニコニコしているが、クリス様はとても不機嫌そうだった。
「レアリテ国への報告ですか? すぐにですか?」
「ああ、そうじゃ……すぐにじゃ!!」
国王陛下の言葉に、クリス様は溜息をついた。
「お言葉ですが、父上……。主要な方々へのあいさつは済みましたのでそろそろ休暇を頂きたいのですが?」
すると王妃様が楽しそうに笑った。
「ふふふ。クリスったら……話は最後まで聞いて?」
「…………?」
クリス様が、探るような顔を国王陛下に向けた。
「そなたらはこの国に居ては休めぬだろ?
レアリテ国の女王陛下が結婚の祝いに2人にレアリテ国でのバカンスを提案してくれたのだ」
「え?!」
(え?!)
クリスが驚いた顔をして、国王陛下を見た。
「確かに隣国とは協力関係にありますが、そこまでして頂くのは……」
クリス様の言葉に王妃様は「くすくす」と笑った。
「大丈夫。行けばわかるわ。存分に楽しんでいらっしゃい!!」
すると国王陛下が私を見て穏やかに笑った。
「ああ。たくさん楽しんで、笑顔を見せておいで」
「は……い」
私は陛下の言葉に頷くしかなかったのだった。
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